昨年6月に開かれた精神科病棟転換型居住施設の反対集会
精神科病棟をグループホームに転換することを特例で認め「地域移行支援型ホーム」とする厚生労働省の省令改正に関連し、特例を条例に位置づけることを見送った地方自治体が4割に上ることが11日、障害者団体の調査で分かった。2015年度中に同ホームの設置計画があるとした自治体はゼロだった。病院内で患者を囲い込むのは人権侵害だとする反発が広がった結果と言えそうだ。
調査は病棟転換型居住系施設について考える会(連絡先=長谷川利夫・杏林大教授)、全国精神障害者地域生活支援協議会「あみ」(伊澤雄一代表理事)が今年6月、都道府県、政令市、中核市計112自治体に実施。8割に当たる92自治体から回答があった。
それによると、条例に位置づけることを見送ったのは回答した自治体の4割に当たる37。残り6割は条例で容認する自治体だ。
見送った理由は「今後の実績を踏まえ判断が必要と考えられるため」(自治体数20)、「障害者関係団体から強い反対意見があるため」(同9)が多く、「検討中」(同8)、「必要・要望がない」(同6)が続いた。
特例に反対してきた長谷川教授は「この特例はまずいという共感が広がったことの表れだ。地方自治体が自ら考えて4割も見送りを決めた点は異例であり、良い前例ができたとも言える」としている。
調査結果は自治体ごとの回答も含めて「あみ」のホームページなどで公開される予定。
厚労省は2013年7月から長期入院精神障害者の地域移行策を検討。精神病床を削減し、不要になった病棟を居住の場として活用する案を含む報告書を14年7月にまとめた。特例による「地域移行支援型ホーム」はこれを踏まえたものだ。
厚労省は、「あくまでも選択肢の一つ。プライバシー確保など厳しい条件付きだ」と説明するが、障害者団体は「人権侵害だ」などとして14年6月、都内で大規模な反対集会を開催。厚労省の検討会も議論が紛糾した。
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