往年の名投手の記録にも迫る田中将大のずば抜けた安定感 「これまでの仕事ぶりは首尾一貫してエクセレント」

17日(日本時間18日)のブルージェイズ戦で両リーグ最多の11勝目を挙げたヤンキースの田中将大投手の“隠れた大記録”について地元メディアが特集している。

17日(日本時間18日)のブルージェイズ戦で両リーグ最多の11勝目を挙げたヤンキースの田中将大投手の“隠れた大記録”について地元メディアが特集している。

photo Getty Images

■田中のスプリット攻略は何度対戦しても困難

17日(日本時間18日)のブルージェイズ戦で両リーグ最多の11勝目を挙げたヤンキースの田中将大投手の“隠れた大記録”について地元メディアが特集している。地元テレビ局「CBSスポーツ」の電子版が「驚くべきマサヒロ タナカの一貫性」という見出しで特集している。

田中は17日のブルージェイズ戦勝利で今季11勝1敗。防御率1・99もリーグトップの数字だ。記事では「これらは感銘的な数字である。タナカはア・リーグでルーキー史上初となるサイ・ヤング賞に輝く最大のチャンスを手にしている」と報じている。MLBの歴史でルーキーでサイ・ヤング賞に輝いたのは1981年、ドジャースのワールドシリーズ制覇に貢献したメキシコ人の名投手フェルナンド・バレンズエラのみだが、同選手はナ・リーグだった。ア・リーグでは未だかつて存在しない。

特集では偉業達成が現実味を帯びてきた田中の最大の武器についても分析している。「スプリッターは前評判以上に圧倒的な支配力」とし、田中のスプリットに対して打者が約3分の1の確率で空振りしていると指摘。スプリットに対する打率が1割8分8厘であることにも触れ、「我々がテーマとしている投手は絶対に打ち取れる決め球を持つ以外に、他4つの球種を使い分けるのだ。つまり、彼がここまであまりに例外的な活躍をしているのも驚きではない」と伝えている。

田中と2度目の対戦となったア・リーグ東地区首位のブルージェイズも田中のスプリットを攻略できなかった。ブルージェイズのジョン・ギボンズ監督も試合後、「田中のスプリットを以前打席で見たなら、打てるようになるか?」という地元メディアの質問に「そのボールが素晴らしければ、結局素晴らしい」とし、宝刀スプリットの攻略は何度対戦しても困難であるという見解を示していた。

■誇大広告と思われた前評判を完全に凌駕

特集では田中が継続する“大記録”にも注目している。田中は今季メジャーデビュー以降、全14試合でクオリティスタート(QS=6回以上を自責3以内)を続けており、QS率は100%。これは今季メジャー唯一だ。“キング”の異名をとるフェリックス・ヘルナンデス(マリナーズ)も16試合中14試合で追随するが、田中には及ばない。

今季、田中がこのまま絶対的な安定感を示し続ければ、1994年のブレーブス在籍時に名投手グレッグ・マダックス(レンジャーズGM補佐)が記録した25試合中24試合、QS率96%というメジャー史上最高の数字をも凌ぐことになるという。

そして、田中の眼前に迫るのがスティーブ・ロジャース(エクスポズ)が1973年に残したメジャーデビューからの記録だ。ロジャーズはメジャー13年間で393試合に先発し、158勝152敗、防御率3・17の成績を収めた投手。オールスターにも5回出場している。その右腕はデビュー登板となった1973年7月18日アストロズ戦の8回2失点から、同9月25日のメッツ戦の6回2失点まで16試合連続でQSを続けた。メジャーデビューから14試合連続の田中はあと2試合というところまできている。

これらのデータを踏まえて、特集は田中が持つ打者を抑える能力と完璧主義者の一面、またヤンキースに高確率で勝利をもたらしている貢献度を高く評価。「誇大広告と思われた前評判を完全に凌駕するケースは実に珍しい。田中のこれまでの仕事ぶりは首尾一貫してエクセレントだ」と締めくくっている。

ヤンキース加入当初は、7年総額1億5500万ドルという金額面がクローズアップされることも多かったが、最近の地元メディアの論調では「お買い得物件」という認識で一致している。

同僚の信頼も高まる一方だ。ニューヨーク・デイリーニューズ紙によると、ブレッド・ガードナー外野手は「この前の試合後、彼に『ダッグアウトにグローブを置いたまま守備位置に着こうと思った』と伝えたんだ。彼に2、3点の援護ができれば、我々は勝てるんだ」と話している。田中が投げれば、外野手はグローブいらず。そんな言葉も出るほど、田中に対するチーム内の評価も高まっている。

このままどこまでの高みに上っていくのか。田中株は全米で高騰するばかりだ。

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(2014年6月19日「フルカウント」より転載)

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