小学校入学時に、字が読めなくても大丈夫。それよりもっと大切なことがある

息子のサムは、小学校に入った時に字が読めなかった。でも……。
Kanagawa Prefecture, Honshu, Japan
MIXA via Getty Images
Kanagawa Prefecture, Honshu, Japan

息子のサムが幼稚園に通い始めたのは、6歳の時だった。10月生まれの彼は、クラスの中でも年長の方だったが、字が読めなかった。

小学校に入る時には、間もなく7歳になろうとしていたが、それでもまだ文字を読めなかった。彼にとって幸運だったのは、それが1999年だったこと、そして担任のガント先生とフロイド先生が、それを自然なこととして受け入れたことだった。ふたりは、大抵の子供たちが文字を読めるようになるのは、小学校1年からだと考えていた(でも、サムの弟ベンのように、幼稚園で文字を読めるようになった子供にも、それにあった教育をしてくれた)。

サムが今小学校に入学していたら、おそらく「発達の遅い子供」というレッテルを貼られていただろう。教育関係者たちに広く知られていることだが、多くの子供たちは、小学1年生になるまで字の読み方を習得する準備ができていない。また、質の高い早期教育でしられるフィンランドでは、幼稚園では勉強させるのではなく、遊ばせる方針をとっている。

それにも関わらず、近年早期教育が重視されてきた結果、幼稚園で字が読めるようになるべきだと考えられるようになった。そして、小学校に入った時に文字を読めないと「発達が遅れているのではないか」と教師や親、そして子供たちまでもが心配するようになってしまった。

でも、幼稚園で文字を読むことのできない子供は「発達が遅れている」わけではない。サムは、小学校1年生の終わりまでに、普通に文字を読めるようになった。小学校3年生の時には読むのが得意になり、高校では特待生に選ばれた。そして先週、トップの成績で大学を卒業した。

もし、サムのような子供にも、幼稚園で字の読み方を無理に学ばせたらどうなるだろう。ガント先生やフロイド先生も、子供は小学校までに文字を読めるようになるべき、と考えるべきなのだろうか?

教育者の多くは、それは逆効果だと述べている。そうなると、多くの子供たちは普通のクラスではなく、発育に応じた教える特別教室の方で、より良く学べるようになるだろう。

私は教師ではない。だから専門家としての意見は言えないけれど、サムの母親としてこう言いたい。子供が幼稚園で文字を読めなくても、パニックになる必要はない。幼稚園で文字の読めないのは、問題ではない。それよりもっと大きな問題がある。そのうち、この4つに気を付けなければいけない。

1. 創造力を使った遊びの時間が少ない

小さい子供たちは、遊びから学ぶ。穴を掘ったり、踊ったり、物を作ったり壊したりして学ぶのであって、問題用紙に答えを書きながら、学ぶわけではない。周りの子供たちと関わり合い、問題を解決し、協力しながら学ぶのであって、発音の練習をしながら学ぶわけではない。

ガント先生とフロイド先生は、家やトラック、ペットや海などから学べる、素晴らしい総合学習の時間をつくってくれた。そこで子供たちは、文字の読み方や算数を、遊びながら自然に学んだ。子供たちは遊んだり、何か作ったりするのに忙しいので、勉強をしていることに気が付かないのだ。

しかし今、こういった総合学習の時間は削減され、時には廃止されることもある。国の指導要領を満たすために、クリエイティブな学習に時間を割くことができないためだ。

2. 運動の時間が少ない

体を動かす時間や休憩時間を減らすのは、教育にとって逆効果だ。子供たちは、体を動かしている時により多くのことを学ぶ。ある研究によると、走り回って遊ぶ機会の多い子供の方が、思考スキルが高く、脳の活動も活発になる。

子供は活動的だから、自然に体を動かすと考える人もいるかもしれないが、実はそうではない。3〜4歳くらいの子供たちは活動的ではない、ということが研究で明らかになっている。それにも関わらず、多くの学校で運動の時間や休憩時間が減らされていて、その中には幼い子供たちも含まれる。

3. テスト重視の勉強をする

「子供たちに全国共通テストで高得点を取らせる」という大きなプレッシャーが、教師にはかかっている。そのため、教育が「子供に合わせた教え方」から「テストでの良い点の取る教え方」に変わってきた。あるベテランの先生は「教師は、子供たちの学習スタイルや、感情面でのニーズ、彼らの家族、興味、それに長所を重視していました。しかし今は、テストや評価、子供を点数で評価することが重視されています」と述べている

教師たちは、高い教育基準を満たすことに忙しく、人間は生涯を通して学ぶ、ということを子供たちに教える余裕が無くなっている。

4. ストレスと挫折感を感じる

子供たちは、先生や大人の期待にそえなかったとき、それを敏感に感じ取る。しかし、その期待が、あり得ないくらい高いレベルになっていることは知らない。そして、期待に応えられなかった時に、ストレスや挫折感を感じる。

経験学習を重視する保育園ではのびのびと学んでいた子が、勉強中心の幼稚園でストレスがたまって「学校嫌い」になってしまうことがある。また、30分間座って問題に取り組むのが苦手な子は、自分は先生たちを失望させていると感じる。しかし問題はその子たちではない。向いていない学習法をさせていることだ。

非現実的な教育システムにより、学習能力に問題のない子供たちがストレスを感じやすくなっている。そして、「発達が遅れている」というレッテルを張られている可能性がある。あるレポートは「多くの子供たちは、高い期待に応えようとする。しかし、その期待が適切でないと、学習能力や意欲が低下する」と報告している。


幼稚園や小学1年生の子供が字を読むことができなくても、焦らなくていい。医師に相談してみてもいいが、おそらくお子さんの発育は正常だろう。もし、お子さんが通っている幼稚園が、遊びを主体とする学習でなく、勉強を中心としているなら、先生と話してみよう。先生も、「子供たちにいい点数を取らせる」というプレッシャーでストレスがたまっているかもしれない。

幼稚園を変えるのが難しければ、幼稚園(もしくは小学1年生の早い段階)で文字が読めなくても、全く気にしていないと子供に伝えてあげよう。サムのような、幼稚園の時には文字が読めなかった人と話してみるのもいいだろう。

大切なのは、子供が好きな本を読んだり、ゲームをしたり、生活に役立つスキルを教えることだ。子供と一緒に外に出て学ぼう。

ハフポストUS版に掲載された記事を翻訳しました。

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