少女への『声かけ写真展』という非道を許して良いのか?

2016年5月4日から5月8日までの4日間開催された「声かけ写真展」がネット上で波紋を呼んでいます。

東京都世田谷区の『IID 世田谷ものづくり学校』にて、2016年5月4日から5月8日までの4日間開催された「声かけ写真展」がネット上で波紋を呼んでいます。

この写真展は、市井の少女を撮影した写真ばかりを展示したもので、中には水着や性的な視線が激しいことから廃止されたブルマの写真もありました。つまり、「ロリコン」や「ペドフィリア」と言われる小児性愛者向けの写真展だったというわけです。しかも一部それを販売していたとのこと。

事実かどうかは分かりませんが、主催側によると、昔は「声かけ写真」という行為が存在しており、それは「公園や学校などで少女に声をかけて了解をもらい、写真を撮影するというもの」と説明がされています。

現在ではそのようなことをしたら当然警察によって「声かけ事案(=18歳以下の者に対して、犯罪行為には至らないが、声をかける等の行為で、略取・誘拐や性的犯罪等の重大な犯罪の前兆として捉えられる事案)」として扱われます。それゆえ、問題とはならなかった時代に撮影された写真を集めて、ノスタルジーにふける目的で開催したというのです。

◆己の暴力性に無自覚な者ほど安易に「合意」を口にする

これに対して、当然のごとくインターネット上では様々な批判が起こりました。確かにこの写真が声かけ事案が問題とはなっていなかった時代に撮影されたものならば、「法の不遡及」の原則のもと、声をかけたこと自体を罪には問えません。

ですが、それを公開することや販売することには、肖像権などの問題から疑問が残りますし、そもそも現在では警察沙汰になるような行為をここまで大っぴらにできるその神経が信じられません。

また、主催者側は当時了承を得て撮ったものだと言っておりますが、もちろん行為能力無き幼い少女との間には合意が成立するはずがありません。

実際、本当は怖くて気持ち悪かったけれども、それがどのような悪意があるものか当時は理解できていなかったから渋々受諾したという書き込みをしている人もいました。力のある大人に求められたら断りにくいのは当然です。トラウマになった人もたくさんいることでしょう。

仮に快諾する少女がいたとしても、このようにして後世に渡って性的消費のために使用されるということを理解した上で許諾した人はどれだけいるのでしょうか? 使用目的も明示しないものを合意と呼べるはずがありません。

にもかかわらず、力関係などの状況を無視して「了承」と言ってしまうことは、己の暴力性や力関係の差に無自覚であることの表れであり、本当に憤りを覚えます。

◆古き悪しき時代を歪曲するな

さらに、ガジェット通信というネットメディアが「古きよき時代の少女」というタイトルをつけて、主催者側のインタビューを載せてこの写真展を紹介しました。声かけが一般的に問題視されていなかった時代を「撮る側も撮られる側も、そこに警戒心など感じなかった、おおらかな時代の文化であったと言えよう」と賛美しています。

ですが、小児性愛に対する問題意識もまだ一般には広がっておらず、その悪質性が認知されていない時代だったのですから、警戒心を素直に表明することすらできなかった人も多いわけです。声を殺していたのを勝手に「警戒心が無かった」と解釈しているに過ぎません。

そのような状況を「古き良き」と表現するのはありえません。「古き悪しき」の間違いではないでしょうか?「おおらかな時代」という表現も、「性暴力加害におおらかな時代」の間違いです。

これらの写真は、決して素晴らしいものなどではなく、むしろ決して繰り返してはならない過去そのものだと思います。そして今後もさらに彼らが「おおらかではない」と感じる社会にしていかなければなりません。

◆小児性愛者の暴走を抑止する必要がある

なお、このガジェット通信の記事には他にも様々な加害者メンタルがよく散見されます。たとえば、「少女というのは、神聖で、はかなくて、不可侵な存在」と表現していますが、そんなものは小児性愛者の勝手な妄想に過ぎません。彼らは大人の女性は穢れていると捉える傾向にありますが、穢れているのは少女にそのような勝手な妄想を抱く自分のほうでしょう。

「今、同様の写真を撮ろうとすれば、警察に通報されかねない」と書いてあるところにも呆れさせられます。つまり、少女にとって暴力になる可能性が潜んでいるから声をかけてはいけないのではなくて、あくまで警察に通報されるから声をかけてはいけないという程度の理解しか無いのです。

このような事例を見ていると「声かけ事案」が問題視されたことは本当に良かったですし、ブルマ等が廃止されたのもせめてもの救いと言えます。

ですが、小児性愛者は増加傾向にあるとも言われており、対策はまだまだ足りません。着エロやJKビジネスなど、問題は山積しています。ポルノへの一層の規制強化も踏まえた抜本的な対策や、(とりわけ男子に対して)教育過程におけるの適切なリテラシー育成等が絶対に不可欠ではないでしょうか?

また、以前、朝日新聞社WEBRONZAの記事でも書きましたが、今後は犯罪が絶えない制服等に関しても何らかの対策が検討されるべきだと思います。

◆アートという名の人権侵害に警戒を強めるべき

今年1月には、京都市立芸術大学のギャラリーで「現代アート展示会場にデリヘル嬢を呼ぶ」という企画が提案されて批判が巻き起こりました。近年、公共の施設でもこのような人権被害が相次いでいるのは大変由々しき問題です。

『IID 世田谷ものづくり学校』は世田谷区が事業主体ではないようですが、場所を貸している立場として是非この写真展を行ったことに対して、由々しき事態だと捉えて欲しいものです。まずは貸している事業者に対して警告をして、今後絶対に再発をしないように努めるべきでしょう。そして是非他の自治体や公的機関も目を光らせて、このような「アートの暴走」の防止に努めてもらいたいものです。

(2016年5月10日「勝部元気のラブフェミ論」より転載)

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