安倍内閣とGPIF、二重の無責任体制――リスクにさらされる年金

年金運用の株式比率を高めるという決定は、ハイリスクな資産に国民の財産を預けるということに他ならない。仮に、大きな損失を被った場合、一体誰が責任をとるのだろうか。
時事通信社

10月31日に引き続き、今日も株価が上がっている。GPIFによる年金資金の株式投入と、日銀の異次元緩和とが相まって、株式市場は異様な熱気を帯びている。GPIFの理事長は日銀出身であり、完全な偶然とも思えない。

年金運用の株式比率を高めるという決定は、ハイリスクな資産に国民の財産を預けるということに他ならない。仮に、大きな損失を被った場合、一体誰が責任をとるのだろうか。

現在、二重の意味での無責任体制が、年金資金をリスクに晒している。

一つは、GPIFの責任体制である。塩崎厚生労働大臣は、先週の予算委員会で「運用改革とガバナンス改革は、全く一体の話であって車の両輪」と述べた。しかしながら、塩崎大臣自身が指摘しているようなGPIFのガバナンス改革は全く進んでいない。厚労省の審議会がようやくでき、議論がはじまったという段階だ。塩崎大臣は、自分自身が主張した責任体制の明確化もせず、年金資金をリスクに晒したのである。

そして、さらに大きな問題は、安倍内閣の責任体制の欠如である。このタイミングでの年金運用の変更は、経済が失速してきたことに焦って、年金資金を活用したとしかみえない。

厚生労働大臣は、独立行政法人が提出する中期計画の認可権限を持つ。今回、GPIFが提出し、株式に大きな資金を投入しようという計画は、内閣が止めようと思えば止められたのだが、最終的に塩崎厚生労働大臣の手によって、認可された。

この大きな政治的判断が、国民の信認もなく、無責任な体制の下で行われたことに、強い危機感を覚える。安倍総理や塩崎大臣は、年金をリスクに晒して、大きな損失を被ったときに、責任をとれるのだろうか。

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