生前退位について、現段階の私の考えをまとめて述べておきたい。
8月8日の陛下のお言葉を聞き、国民は生前退位に賛意を示している。問題はどのようにして実現するかだが、総理はしばしば「公務の負担の軽減」という言葉を使い、生前退位を正面から議論することを避けているように見える。負担軽減を行ったところで、陛下の健康状態が深刻になられた場合の社会の停滞は避けられず、陛下のご懸念も払しょくされない。
憲法2条は「皇位は、世襲によるものであって、国会の議決した皇室典範の定めるところにより、これを継承する」と定めている。ちなみに、憲法の中で法律名が明記されているのは皇室典範のみである。こうした経緯を考えれば、皇室典範の改正による生前退位の実現を議論すべきだ。
先日の予算委員会の私の質問に対し、法政局長官は一代限りの生前退位について特別立法で定めることができると答弁したが、この方法は本筋ではない。ただし細心の注意が必要なのは、戦後の混乱期、昭和天皇のご退位を巡って大議論があったことを思い起こせば、いかなる状況にあっても、天皇の生前退位が政治的な思惑で判断されるようなことがあってはならないことだ。
皇室典範の改正は困難な課題だ。小泉政権当時の「皇室典範に関する有識者会議」では女性天皇、女系天皇についての議論が行われた。悠仁親王のご誕生によって議論が一旦収まるまで、私自身、どう判断すべきか、相当悩んだ記憶がある。
あれから10年以上が経過し、皇族の中に新しいお子様は誕生しておらず、秋篠宮親王の二人のお嬢様はすでに成人されている。天皇制の継続性と皇室の安定を考えるならば、女性宮家の議論も待ったなしだ。
安倍総理は有識者会議を立ち上げた。有識者の意見を聞くのは良いが、私は生前退位の問題を会議に丸投げするわけにはいかないと思っている。憲法は、天皇の地位は国民の総意に基づくと定めている(1条)。
有識者は国民を代表しておらず、全国民を代表する議員(43条)の責任は重い。本来、与野党で争う課題ではないのだが、どうも与党の腰は引けているように見える。我々は、民進党の皇位検討委員会で慎重に議論し、しかるべき時期に考え方を国民に提示したいと思っている。