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2018年07月11日 11時48分 JST | 更新 2018年09月14日 15時06分 JST

上司に黙って、1年間旅しながら仕事してみた。

気づいたこと:自由に働くことは、リスクではなく投資です

VIA HAILEY HERDLINGER AND MITCH TURCK
ヘイリーとミッチ。ニューハンプシャー州のホワイト・マウンテンの頂上で撮影。

アメリカのビジネス界では、「許可をもらうより、やってしまって謝った方がいい」とよく言われる。もしそれが経営的に効果があるのであれば、我々が生きていく上でも効果的なはずだ。

私たち、ヘイリーとミッチはともにフルタイムの仕事をしている。しかし次第に、働き方に不満を持つようになっていた。

ヘイリーは、NYで毎日地下鉄で通勤することにうんざりしていた。1日12時間働いた上に、無駄な仕事もしなければいけない。ミッチは、チームの士気を下げる無能な上司と仕事することに、嫌気がさしていた。

二人とも、こんな生き方から抜け出したかった。とはいえ、会社を愛していないわけではない。ちょっとばかり嫌な面があるからといって辞めてしまうのも何か違う。

そこで私たちは、ライフスタイルを変えることにした。選んだのは放浪の旅に出ること。住んでいたアパートを引き払い、車で生活することにした。会社には言わずに。

それは私たちにとって"ちょっとした実験"だった。そして実験を通して、私たちは雇用主に証明したかった。リモートワークでも仕事はできる。「従業員に自由を与えるのは、リスクではなくて投資だ」と。

同時にアメリカの労働者たちに思い出して欲しかった。「健全な精神状態で働き、自分の時間を持つことは、お願いして与えられるものではなく当然手にするべき権利なのだ」と。

私たちは実験を「放浪の旅」と名付けた。

証明するためには、許可をもらわずに旅に出るより良い方法なんてない。私たちは数日かけて、旅の予定を立てた。国立公園を巡り、離れて住む家族や友人を訪ねることにした。それに、行ってみたいアイスクリームショップもたくさん旅程に組み込んだ。何しろ、ミッチはアイスクリームなしでは生きていけないのだ。ミッチ曰く、これはもう病気だ。

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ヘイリーとミッチの旅マップ

もちろん、リモートで仕事可能ということを証明するのを忘れてはいけない(特に、テック系の仕事で)。

ミッチの仕事はプロダクトマーケティング。彼は仕事を始めたときから、リモートワークできるよう会社と交渉していた。一方、チーフスタッフであるヘイリーの仕事は、リモートワークに向いているとは言い難い。しかし彼女は会社と交渉して仕事の内容を変えてもらい、リモートで働けるようにしていた。

2016年11月、私たちはそれぞれの会社に「フロリダに引っ越す」と告げた。理由は、フロリダには親しい家族や友人が住んでいて、中には健康状態が良くない人がいるためと伝えた。

それは嘘ではない。ただ伝えなかったことがある。フロリダに行った後に、その他の45州を巡る予定だということだ。

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ジョージア州アルトの廃棄物置場で、スクルーバスの横に座るヘイリー

ニューヨークで働いていた時、ヘイリーは毎日約2時間(片道1時間)かけて通勤していた。ざっと計算したら驚くべきことがわかった。1日時速75マイルで運転した方が、オフィスに通うよりも、時間に余裕ができる。言い換えると、通勤する人の多くが、1年でアメリカを1周するくらいの距離を旅しているのだ。ただ、アメリカを旅する代わりに、同じ場所を何度も何度も行き来しているのだが。

実験前、私たちはちゃんと会議に出られるか心配していた。しかし、インターネット・ワイルド・ウェストは、思っていたより私たちに寛大だった。

無制限のデータプランを使えば、自分の電話をホットスポットにできた。Wifiスポットがみつけるアプリも役に立った。アプリを使って図書館や公園、モールやカフェなどWifiスポットを見つけた。私たちは二人ともコーヒーを飲まないが、150軒以上のカフェに行き、味気のないマフィンを頼んだ。

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サンディエゴのクィンス・ストリート・ブリッジを渡るヘイリー

電話会議が雑然とした場であるという事実も、助けてくれた。空港から電話をかけてくる人もいれば、10分遅れで参加する人もいる。画面シェアをうまくできない人、ミュートにして昼寝する人......。そんなごちゃごちゃなバーチャル会議室では、私たちはむしろ、きちんと参加している方だった。

電話会議で一番の脅威は、雑音だ。「あー、それでは2番目の質問にうつります。私たちがやりたいのは...。ん?今オウムの声がした?」

ただこれも、「フロリダに引っ越す」と伝えたことで、乗り切れた。たとえ奇妙な音がしても、フロリダにいるということで、相手は納得してしまうのだ。熊の声でさえも。

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アリゾナ州セドナに近いアフリカ・ワイルドライフ・パークの外で撮影したミッチ

ただ一つ心苦しかったのは、同僚に嘘を言わなければいけないこと。例えば「そちらの天気はどう?」と聞かれたときには、Googleで調べて、気象予報士のようにフロリダの天気を答えなければいけなかった。

その一方で、特定の同僚や上司から距離を置けたのは素晴らしかった。

ミッチは、問題のある上司から「勤務態度が、大きく改善した」という評価を得た。それから何カ月かして、その上司は降格してしまったのだが。浮き輪に乗って動画のシナリオを書いている間に、世の中では多くのことが起きる。

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浮き輪に乗って、オレゴン州のデシュート川を川下りするミッチ

さて、我々は旅をしながら仕事を続けられたのか。

旅を始めてから数カ月後にヘイリーの職場では大量解雇があり、彼女も犠牲者の一人になった(秘密のリモートワークは、解雇に関係ない)。その時になって初めて、ヘイリーは同僚に旅をしている事実を伝えた。

しかし数カ月後、会社はヘイリーに連絡してきて「コンサルタントとして再雇用したい」と申し出た。さらに会社は、遊牧民的なライフスタイルは仕事をする妨げにはならないといい、旅を続けることを認めた。旅しながら働くという決断は間違っていなかったのだ。

ミッチは1年間、問題なく仕事を続けた。しかし2018年2月、彼も解雇の犠牲になった。ただテックの世界で解雇はよくあること。ヘイリーの場合と同じように、彼の上司や同僚はこの時になって初めて、ミッチの実験について聞くことになった。

私たちは、実験からいろいろな教訓を学んだ。

旅せずに従順な犬のように机にへばりついて仕事をしたとしても、私たちは解雇されていただろう。今は1968年ではない。ただ従順に働いていれば、仕事が保証されるものではない。解雇されるのではという恐怖心は、私たちを守ってはくれない。

もう一つ、改めて強く感じたのは、仕事はつまらないものである必要はなく、つまらない仕事だから成果をあげられるというわけではないということ。

旅の途中、私たちは一度も雇用主から仕事の成果について問われなかった。だから私たちは言いたい。リモートワークだと成果が出せないと考えて思いとどまっているのであれば、それは間違った思い込みだ。

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ユタ州を走るドライブルート12号線で仕事中のヘイリー

私たちのよう車上生活を好まない人もいるだろう。最低限の物で生活しなきゃいけないし、シャワーの水の出も悪い。しかし、車で生活する必要はない。どんな形であれリモートワークで自由に働くことは、通勤して街を汚し、多忙な1日でクタクタになるよりマシだ。

旅をして、私たちは自分の国についてたくさんのことを学んだ。この1年で、おそらく一生の間に会うより多くの遠くの友人や親戚に会った。3つの州でマルディグラ(謝肉祭の最終日)のパレードに9回参加した。

旅は私たちにたくさんのことを教えてくれた。クリエイティビティが周りの環境にどれほど影響されるかも学んだ。働く時間が減っても、自分のスケジュールにあわせて働いた方が、生産性は断然上がった。

それに何より、自由である方が、仕事の関係もプライベートの関係もうまくいく。実験の旅は、多くのことを私たちに教えてくれた。

ハフポストUS版のブログを翻訳しました。