携帯料金を引き下げる、ホワイトスペースの活用

ホワイトスペースを活用すれば、利用できる電波の量が実際に増える分だけ、市場競争によい影響を与える。

2015年9月11日の経済財政諮問会議で、安倍総理大臣は「携帯料金などの家計負担の軽減は大きな課題だ」として、方策を検討するよう高市早苗総務相に指示したそうだ

料金の低減には、総務省が携帯三社に料金引き下げを強制する、権力的な方策も取り得るかもしれない。電波免許を取り上げると脅せば事業者も言うことを聞くだろうが、自由主義経済にはなじまない。市場競争の促進こそが、真っ当な方策である。

競争促進策には、通信設備を自ら用意する事業者(MNO:Mobile Network Operator)を新規に参入させる方法と、MNOから設備を借り受けて事業する事業者(MVNO:Mobile Virtual Network Operator)に加入者を誘導する方法とがある。

総務省の4月30日付報道発表によれば、MVNOの加入者数は昨年12月末時点で892万に上るが、このうち、独自の料金プランを採るSIMカード型は195万に過ぎない。「電気通信事業法等の一部を改正する法律」の2016年春の施行を前に、総務省は、MVNOが必要な部分だけを借りられる制度、MVNOが支払う接続料の算定制度等の整備を進めているという。一方で、産業競争力会議で提言された加入者管理機能のアンバンドル化について、総務省の動きは遅い。

MNOの新規参入策として各国で採用されているのが電波オークションで、わが国では、2011年頃に一度機運が盛り上がった。電波オークションの導入を含む「電波法の一部を改正する法律案」が閣議決定され国会に提出されたが、鳩山・菅両内閣を引き継いだ野田内閣に力はなく、廃案に追い込まれた。

ホワイトスペースの利用が、他のMNO参入策である。地上波テレビ放送は13から52までの40チャンネルを利用しているが、たとえば東京ではNHKと民放は21から27チャンネルまでを利用しており、他は空いている。この空きチャンネルのことをホワイトスペースと呼ぶ。ホワイトスペースに相当する40チャンネルよりも上(周波数では600メガヘルツ帯)を使う、新しいMNOが首都圏で実現可能である。MNOに混信防止を義務付ければ、テレビ放送に迷惑をかけることはない。

総理大臣の指示を実現する方策には、MVNOの一層の促進とホワイトスペースの活用がある。MVNOはMNOの電波の一部を再販売しているだけだから、競争への効果は限定的である。一方、ホワイトスペースを活用すれば、利用できる電波の量が実際に増える分だけ、市場競争によい影響を与える。総務大臣には、後者まで進んでほしいものだ。

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