国勢調査のネット回答にアクセシビリティの問題が

オンライン化には、障害者が情報をやり取りするのが簡単になるというメリットがあるが、非対応のサイトではそのメリットが得られない。

今回から、国勢調査にインターネットで回答できるようになった。調査員に情報が漏れるのではないかと国民は心配しなくて済むし、調査員の側も、在宅時刻が不規則な国民から調査票を回収する手間を減らせる。

早速、オンライン回答を試みたが、うまく進めない。問い合わせ窓口への通話は180秒について8.5円が課金されるのだが、「問い合わせが殺到しているので、少し待つように」というアナウンスが流れていた。しばらくして係員が出たので事情を話すと、こんな回答が戻ってきた。「パソコンからのアクセスはうまくいかないことがある。スマートフォンから回答してほしい。」

そこで、スマートフォンを用いたところ、スムーズに回答を送信できた。

なぜ、パソコンからではうまくいかないのだろう。いろいろな環境・デバイスでの接続実験を、事前に、していなかったのだろうか。なぜ、問い合わせの通話料を国民の側が負担しなければならないのか。

そこに、障害者の情報通信利用に関する専門家から、「パソコンサイトはアクセシビリティへの対応が欠けている。」という話が伝わって来た。視覚障害を持つ友人に聞いたところ、「表への入力が求められたためパソコンはあきらめ、スマートフォンで回答した。」そうだ。

紙の書類に回答を記入するのは、視覚障害者にはむずかしい作業である。オンライン化されれば、音声読み上げで、自力で回答できるようになる。オンライン化には、このように、障害者が社会と情報をやり取りするのが簡単になるというメリットがあるのだが、非対応のサイトでは、そのメリットが得られない。発注側の総務省統計局も、受注業者も、アクセシビリティ対応を意識していたのだろうか。僕が遭遇した問題も合わせると、国民本位でサイトを構築する意識は希薄だったのかもしれない。

社会はますます情報化されていく。五年後の次回調査では、アクセシビリティ対応など、国民本位でのサイト構築に万全を期してほしい。今回は、紙に記載されたID・パスワードを入力すれば回答が開始できたが、次回は、マイナポータルを活用するなどして、紙を見なくても入力が開始できるようにして欲しい。視覚障害者は紙に記載された情報は読み取れないので、今回は他人の助けが必要だった。

電子行政には国民本位でシステムづくりが求められる。国政調査は、このことを再認識させる機会となった。

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