クラウドファンディングは信用できるか

金融機関は起業家に対して冷淡で、起業資金を貸し付ける際には不動産を担保にとるのが普通だった。これに対して、金融機関がクラウドファンディングを仲介するようになれば、自らの資金を貸し付ける必要はなくなる。
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最近、クラウドファンディングがよく話題になる。フジテレビとセガネットワークスが始めるのは、ゲームに特化したクラウドファンディングである。クリエイターのアイデアに共感したファンが小口で資金を投資すると、見返りとして、出来上がったゲームやグッズ・限定アイテムなどを受けられるそうだ。産経新聞の特派員が韓国で裁判にかけられるが、この暴挙に憤る多くの市民からクラウドファンディングで裁判費用を集めてはどうかと、新田哲史氏は提案している。

クラウドファンディングとは、事業家が掲げた計画に賛同した多くの支援者がそれぞれ少額の資金を提供して、事業を推進するものである。起業家・NPO・研究者・芸術家と事業家の種類は様々で、推進される事業も地域振興から研究開発や映画製作までいろいろな種類がある。志を共有する仲間が余剰金を拠出し事業を推進するという点で、クラウドファンディングはシェアエコノミーの一形態である。

本当に事業が推進されるかわからないというのが、クラウドファンディングに付随する最大の問題である。事業にはリスクが付き物だから、努力して失敗する場合もあるだろう。しかし、資金だけ集めて逃げてしまう悪人が出る恐れもある。クラウドファンディング運営会社は「運営会社は事業家が提示・推進する各事業に対してなんら責任を負いません。」といった利用規約を掲げている場合が多く、責任を取らない。提供した資金は少額だから、訴訟で返金を求めるのも効率が悪すぎる。

一方で、米国のクラウドファンディング運営会社Kickstarterは、事業推進には責任を負わないとしたうえで、支援者保護のために、事業が失敗したときの支援者に対する誠実な説明と、資金の使途に関する情報開示には責任を負うように利用規約を改定したと報道されている。

金融機関が事業家の信用を保証するといった仕組みが生まれる可能性は考えられないか。金融機関は起業家に対して冷淡で、起業資金を貸し付ける際には不動産を担保にとるのが普通だった。これに対して、金融機関がクラウドファンディングを仲介するようになれば、自らの資金を貸し付ける必要はなくなる。つまり、事業家と支援者の間の直接金融を仲介するだけだが、金融機関は運営会社よりも信用調査能力が高い(はずだ)。このような仲介事業を金融機関がスタートさせれば、支援者の不安は解消され、クラウドファンディングはもっと普及するかもしれない。

情報通信政策フォーラム(ICPF)では、シェアエコノミーについて連続してセミナーを開催している。Airbnbとスペースマーケットを取り上げた第1回は幸い大好評で、その様子はすでにネットにアップした。10月29日には、クラウドファンディングを題材に、運営会社と金融機関を呼んで第2回を開催する。どうぞ、皆様ご参加ください。

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