あたらしい「新聞」のかたち:「東京五輪アーカイブPlus」学生作品公開

1964年、半世紀前の「東京五輪」から、2020年に開催予定の「東京オリンピック」へ。どう文脈を紡ぎ、どんなメッセージを届けるのか。

2015年3月、朝日新聞メディアラボにて、首都大学東京システムデザイン学部インダストリアルアートコースの3年生向け課題「東京五輪アーカイブPlus」の講評会が開催されました。

この課題は、首都大学東京・渡邉英徳研究室と朝日新聞社の共同研究「東京五輪アーカイブ 1964-2020」の一環として実施されたものです。1964年、半世紀前の「東京五輪」から、2020年に開催予定の「東京オリンピック」へ。どう文脈を紡ぎ、どんなメッセージを届けるのか。朝日新聞が所蔵する過去の写真と記事を活用し、多様な作品たちが生まれました。

講評会では、ゲストにITジャーナリストの林信行さん・Yahoo!ニュース編集者の苅田伸宏さんをお招きし、学生たちの提案をもとにした、活発な議論が展開されました。このたび、講評会で特に好評を得たふたつの作品を一般公開する運びとなりました。以下の作品で素材として用いられている写真と記事は、すべて朝日新聞社から提供されたものです。

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まず、菊池月子さん・東山琳々子さんによる「コシンブン」です。以下にコンセプト文を転載します。

過去の新聞に掲載されている写真たちはどれも、

当時の情景をありありと伝えてくるものばかりです。

そんな「むかしの写真」たちを楽しんでほしい。

そして「むかしの写真」をきっかけに、

当時のことを、よりくわしく記した新聞記事を読んでみてほしい。

そんな思いで企画・製作しました。

つまり、この「コシンブン」は、これまで「見出し志向」でつくられてきた新聞記事を「ビジュアル志向」「エクスペリエンス志向」で再デザインする試みです。五輪カラーで着彩された写真ステッカーで「ジャケ買い」する新聞記事。そして「読む」に加えて「貼る」ことができる、新しい新聞の「体験」の提案がなされています。

1964年、五輪で活気づく東京の写真を、五輪カラーで楽しめるステッカーです。ケースから外して広げると、当時の新聞記事が読めます。さらに、ステッカーを好きな場所に貼って楽しむこともできます。

1964年東京五輪の記憶を、たのしく呼びおこすシールブック。手に取りやすい大きさの正方形でつくられた、「読む」だけではなく「貼る」ことができる、新しい新聞の「体験」の提案です。

この2つの作品は、本日6月19日から有楽町で開催される交通記念館開館50周年企画展「写真でたどる有楽町の記憶 〜交通記念館が歩んだ50年〜」の朝日新聞フォトアーカイブ・ブースで展示されています。会期の後半には、サンプルの配布も計画されています。ぜひ足をお運びください。

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そしてウェブ上の作品も、本日より公開されました。小出慎之介君による「Focus Locus - 東京五輪アーカイブ 1964-2020」です。以下にコンセプトを記します。

"写真"ということばは、中国語における「眞を寫したもの」に由来する。さまざまな写真からさまざまな物語が生まれる。そしてその物語は、写真を眺める人が生きる時代の移り変わりにつれて、大きく変わっていく。2010年代を生きる私たちは、東京五輪にまつわる過去の写真から、どのような物語を読み取るだろうか。

米軍統治下にある沖縄の聖火台の上に翻る星条旗、五輪旗と日の丸。そして「幻のオリンピック」となった東京五輪1940年大会の看板。輝かしくみえる「五輪」が同時にまとっている「影」を、首都大野球部で活躍するスポーツマンの小出君ならではの視点で切りとろうとする作品です。さまざまな社会不安が囁かれるなか、2020年東京五輪を迎えることになる若者たちの、率直なメッセージが伝わればと思います。スマートフォンでも閲覧できます。お楽しみください。

東京五輪アーカイブ 1964-2020」プロジェクトでは、今後も、学生たちによる作品制作・ワークショップ開催を実施します。今秋は、首都大学東京 渡邉英徳研究室・宮城大学 中田千彦研究室・慶應義塾大学 石川初研究室による共同課題を検討中です。また、工学院大学附属中学高等学校、聖徳学園中学高等学校の生徒たちによる、1964年東京五輪関係者へのインタビューも予定されています。ご関心のあるかた、ぜひご連絡ください。

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