就活が「大学名」で有利・不利になる『学歴フィルター』は本当に存在するのか?

朝日新聞の一面トップにあった記事はまさに「就活」の話だったので興味深く読んだ。「学歴フィルター」という言葉が目にとまって何だろう?と思ったのだ。

大学で教員をしていると、学生からの相談ごとが一番多いのは「就活」に関することだ。

いきおい教員として「就活」に関する情報にはどうしても敏感になる。

そんななか、今朝(3月30日)の朝日新聞の一面トップにあった記事はまさに「就活」の話だったので興味深く読んだ。

●「学歴フィルター」という言葉が目にとまって何だろう?と思ったのだ。

以下、今朝の朝日新聞。

「これって、学歴フィルター?」 幅を利かす採用の現場

日本大学に通う女子学生(21)は昨年12月、いっしょに就職活動をしている友人と時報を聞いていた。午前11時00分00秒。志望企業が、採用説明会への参加申し込みをネットで受け付け始めた。名前や大学名は事前に登録済みだ。申し込みボタンを押そうとスマートフォンで採用ページを開いた瞬間、目を疑った。画面には、全日程が、「満席」「満席」「満席」......。

就職人気ランキングで常に上位の大手企業。そうした企業では受け付け開始後数分で満席になるのはよくあることだ。それでも今回は、いくらなんでも早すぎないか。 そう思った女子学生は、同じ説明会に申し込むと言っていた上智大の友人に電話。友人の「えっ、満席になってないよ」の言葉に、はっとした。「これって、『学歴フィルター』ってやつじゃないの?」

「学歴フィルター」は、説明会の参加などにあたって企業が大学によって差をつけることを指す。この企業の広報担当者は「うちの採用で大学名は全く関係ない。満席になったのはシステム上の問題では」と話すが、こうしたやり方は企業の間で広く行き渡っていると、関係者は指摘する。

就職活動に詳しい人材コンサルタントの常見陽平さんによると、手法はこんな風だ。説明会の定員100人に対し、80人を東大などのトップ校、残り20人を他の大学生に割り振る。大学によって座席の「在庫数」は異なり、応募したくても席がないことがある。 雇用ジャーナリストの海老原嗣生さんは「説明会応募の前にも、大学名によって説明会の案内をメールで知らせる時期に差をつけることや、そもそも案内しない場合がある」と話す。

出典:朝日新聞デジタル(2014年3月30日)

日頃、学生たちと話をするなかで、思い当たる節があった。

この記事に出てきたように、企業説明会のネット申し込みを解禁と同時に行った学生たちから以下のような話を聞いていたからだ。

「解禁されてすぐ申し込んだのに、あっという間に『満席』になっちゃって、けっきょく参加できなかった」。

満席で申し込みが出来なかった学生は、「学歴フィルター」という物差しで、大学名だけではねられていたのだ。

しかし、今どき、そんなものが実際に存在するという話なんて聞いていない。

ほとんどの企業は「大学名は問いません」と公式には言っているではないか。

私は教員として相当にウブなのかもしれない。

かつては就職活動にあたって大学の名前によって、露骨な差別が存在した時代があったことは事実だ。

1983年からTBS系列で放送されたドラマ「ふぞろいの林檎たち」(出演・時任三郎、中井貴一ら、脚本・山田太一)という人気ドラマでは、主人公の若者たちのように四流大学の学生と一流大学の学生とは企業が就職説明会を別々の部屋で行う場面が登場する。実際、それに近いことがかなりおおっぴらに行われていた。

超一流企業で、内定者の多くを東大や早慶などの「偏差値上位校」が占めるのは「選考の結果としてそうなる」のであって、「選考プロセスそのもので足切りなどない」と思っていた。

実際、企業側に聞いても、建前としては、大学名による足切りも差別などない、というのだろう。

さて、日本経済新聞が今回の就職活動解禁の直前、「学歴フィルター」について記事を書いていた。具体的な大学名とともにその実態が描写されている。

就活生に朗報? 「学歴フィルター」に異変あり

■書類選考で通すのは「日東駒専以上」

表向きは「学歴不問」をうたうが、ネットを通じた膨大な応募を効率的にさばくために実際は採用活動で学歴フィルターを導入している企業は少なくない。ある広告代理店は「最初の書類選考で通すのは日東駒専(日本、東洋、駒沢、専修)以上」と明言する。MARCH(明治、青山学院、立教、中央、法政)クラスの学生でさえ「ネット広告大手の説明会に慶応大生の友人と同時に申し込んだら自分だけ『満席』と表示された」(青山学院の4年生)と証言する。

出典:日本経済新聞 Web刊 (2013年11月27日)

学生たちが応募する企業の数は以前より飛躍的に多くなった。近年の「マイナビ」「リクナビ」などの就職インターネットサイトの登場による影響が大きい。私の教え子も数十社、あるいは百社以上にエントリーシートを送ったという学生も珍しくない。逆に人気企業側からすれば応募者数が多すぎて、どうやって絞り込むかは悩みの種だろう、

冒頭の朝日新聞の記事では「学歴フィルター」は、こうした就活のインターネット化も背景にあると解説している。

企業が大学名を選考の材料にすることは、いまに始まったことではない。イメージの低下を恐れて公にしてこなかっただけだ。

1990年代後半から、「マイナビ」「リクナビ」などの就職情報サイトが登場したことで、学歴の使われ方が露骨になった。誰でもどんな企業にでも簡単に接触できるようになり、人気企業には万単位の学生が殺到する。そこで「選考の手間を省くため、企業は学歴フィルターを多用せざるを得なくなった」と、企業で採用担当経験のある就職コンサルタントの菅原秀樹さんは指摘する。

大量応募は大量の選考落ちも生む。「エントリーシートを真面目に書いた自分は落とされ、トップ校の友人は適当な内容でも通った」(立教大3年男子)。「同じ説明会やセミナーに参加した立教大の友人にはリクルーターが接触してきたのに、自分にはない」(学習院大3年女子)。ふるい落とされる側には、不満と劣等感が広がる。

出典:朝日新聞デジタル

「学歴フィルター」についてネットで探っていくと、「ダーゲット大学」「ターゲット校」という言葉に行き着いた。

●「ターゲット大学」とは、企業側がこの大学から重点的に採用したいと想定している大学のことだ。

就活の短期化や、大学生数の増加による母集団の拡大といった条件の下でいかに欲しい学生を採るか。企業はそこで、あらかじめ重点採用校を絞り込み、集中的に採用活動を行うようになってきている。これはターゲティング選考と呼ばれ、重点採用校はターゲット大学といわれる。何らかのターゲティングをしている企業は年々増え続け、14年卒採用ではついに過半数を超えた。

■恩恵を受けるのは一握りの上位校

重点採用校は一部の上位校に限られる。最もターゲットされているのが、GMARCH(学習院大、明治大、青山学院大、立教大、中央大、法政大)だ。学生数も多く、大企業からも中小企業からも人気が高い。

出典:東洋経済オンライン

「ターゲット大学」が存在し、企業が学生を「学歴フィルター」によって最初にふるいにかけるのは、こうした記事を読む限り、多かれ少なかれ事実のようだ。

大企業で人事の責任者をやっている知人に聞いても暗黙の了解としてあるのだという。

ただし、どの大学から重点的に採用するかという「ターゲット大学」は、業種や個々の企業によってもかなり差があるらしい。

さて、冒頭の朝日新聞の記事は「学歴フィルター」にも変化が見られるとしている。

人気企業に応募が集中するほど、幅を利かせる学歴フィルター。採用の効率を考えて重視する企業は少なくないが、学歴で測れない力に注目する動きも出てきている。

出典:朝日新聞デジタル

として、青年海外協力隊の経験者や何かの分野でナンバーワンになった学生の採用など、大学名だけで測れない人材を独自の方法で見いだす企業をいくつか紹介している。

一方、日本経済新聞は、景気回復の兆しが見えてきたことで「学歴フィルター」のハードルが下がっていることを「就活生にとっては朗報ではないのか」と歓迎している。

「三大メガバンクのひとつがインターン募集に来た。こんなことは初めて」(都内の中位校) 「これまでうちの卒業生を全く採用してくれなかった大手自動車メーカーから『学内説明会を開かせてほしい』と要望があった」(都内の私大)

複数の大学の就職課担当者から、驚きの声が聞こえてきた。これは就活生にとって朗報ではないのか......。

大学教員の立場からいえば、エントリーシートを数十社とか百社とか出すような無駄な就活はもうやめる方向で企業側も考えてほしい。今の就職活動は3年生の後半から学生たちが浮き足立ってしまい、大学で勉強どころではない。次の就活シーズンから少し就活解禁が遅くなるので多少改善されるのかもしれないが、何らかの形で「絞り込み」が必要なら、大学の成績などでラインを設けることも考えるべきだ。

建前では「ない」と言いながら、実際には「ある」というほかない『学歴フィルター』。

見えないところに「差別」があるなんて、やはりフェアなことではない。

(2014年3月30日「Yahoo!個人」より転載)

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