日テレが「明日ママ」で"有識者の意見"や"会社の見解"を自社で初めて「釈明」放送

日本テレビが「明日ママ」問題で"会社の立場"を放送内で詳しく釈明した。この番組は、2月9日(日)午前5時10分~5時20分の「日テレアップDate!」だ。

日本テレビが「明日ママ」問題で"会社の立場"を放送内で詳しく釈明した。

この番組は、2月9日(日)午前5時10分~5時20分の「日テレアップDate!」だ。

これはテレビ会社が自社番組について、視聴者からの疑問や批判に答えたり、「番組審議委員会」の議事などについて公開する種類の番組で毎週放送されている。

「番組審議委員会」というのは

日本テレビが放送する番組の向上改善と適正を図るため、放送番組等の審議を行うことを目的として設置された審議機関

出典:日本テレビのホームページ

だ。

番組審議委員会は外部の有識者から構成され、現在は、槇村さとる(漫画家)、高橋源一郎(著述業)、檀ふみ(俳優)、増田明美(スポーツジャーナリスト)、酒井順子(エッセイスト)ら各氏が委員になっている。

「日テレアップDate!」は、この番組審議委員会で出た委員の意見を伝えることが多いため、テレビ業界では「番審番組」と呼ばれている。ひらたく言えば、テレビ局が「視聴者や有識者のご意見もちゃんと聞きながら放送しています」という姿勢を示す、一種のエクスキューズの番組といえる。

「明日、ママがいない」については、「赤ちゃんポスト」を運営する熊本の慈恵病院や児童養護施設の団体である全国児童養護施設協議会、里親の団体である全国里親会などが抗議の声を上げていたが、先週、日本テレビによる正式な「回答文」に対して全国児童養護施設協議会などが「今後の推移を見守る」と記者会見したことで一応の決着を見た。

日本テレビはすでに会社のホームページに全国児童養護施設協議会への「回答文」を載せている。

この中では児童養護施設などが、ドラマを見た影響で施設の子どもの中でフラッシュバックを起こして自傷行為に及んだケースが複数あると報告していた点についても以下のように謝罪している。

貴協議会が1月29日付書状等においてご指摘されるように、本ドラマを視聴した施設の子どもたちが傷ついたり、同書状別紙の実態アンケートに記載されたような事実が存在するのであるならば、もとより本ドラマの意図するところではありませんが、そのような結果について重く受けとめるとともに、衷心より子どもたちにお詫び申し上げます。

出典:日本テレビのホームページの「お知らせ」

また、ドラマの中身に関しても内容を改善していくことを事実上約束している。

さらに、貴協議会から事前に児童養護施設を取り巻く環境などの実情を詳細に伺い、表現上留意すべき点などをより慎重に確認しておく必要があったと認識しております。 本ドラマにおきましては、貴協議会からのご指摘も踏まえ、これまで以上に子どもたちに配慮してまいります。具体的かつ詳細な点につきましては、ドラマという性質上、ご説明することはご容赦頂きたく存じます。ご指摘頂いた点については重く受け止め、すでに主体的に番組制作に活かしております。 元来、弊社の本ドラマ制作のテーマは最初に述べさせていただいたとおりであります。貴協議会のご活動と、方向性において異なるものではないと考えております。ストーリーは、当初の構想に従って展開致します。また、細部において誤解を生むようなことがないよう、細心の注意を払ってまいる所存ですので、改めてこのドラマを最後までご覧になって頂きたく存じます。

出典:日本テレビの公式ホームページのお知らせ

さて、2月9日の「日テレアップDate!」が放送したのは、1月28日に行われた番組審議委員会でのやりとりの一部だ。

議論に先立って、番組のプロデューサーが釈明した。

'''

「これまで水曜ドラマは大人の側からの愛情を描いてきたが、今度は子どもたちの目線で愛情を描こうとした。世の中に愛情とは何かを語るものにしたい。陰惨なもの悲しいものを出すのではなく、悲しみを持っているからこそ子どもたちが人を思いやることができると思って制作している」。'''

これを受けての番組審議委員会。

A委員

「シンデレラなら架空と分かるが、ドラマがまだらにリアルなので傷つく人がいる。体罰とネットでセンセーショナルに言われたが、施設でバケツを持って立たせるなど、実際は牧歌的。センセーショナルに批判されたことにひっかかった」

B委員

「私は11歳の時に母親がいなくなったので、私の中にいる子どもの私がドラマに感情移入した。芦田愛菜ちゃんに、もっと言ってやれ、子どもの言い分をもっとぶちまけてやれと思って見た」

C委員

「何が問題かというと、児童養護施設が置かれている状況に対してだ。いささか無神経だったと思う。また、その後の日本テレビの対応が疑問だ、抗議が来たら、まず相手(慈恵病院や全国児童養護施設協議会など)のところに担当者が行って、一にも二にも言葉で説明すべき。危機管理ができていない」

D委員

「初動の対応としては慈恵病院にも飛んでいって粘り強く説明する必要があった」

E委員

「『ポスト』というあだ名が、(「赤ちゃんポスト」が日本に一カ所しかないのに)限定されているのは問題だ」

F委員

「芦田愛菜が『ちっくしょう』と言うシーンが痛い。役者として消耗品にしてしまっている」

G委員

「どのくらい覚悟を持ってスタートしたのか。意識の甘さがある。『ポスト』という名をつけることで予想できなかったのか。心配などを言う人がいなかったのか」

ちなみにこのG委員とは、スポーツジャーナリストの増田明美さんだ。

一連の問題の根本をズバリと言い当てていた。

これに対して、日本テレビ側が

「自分の名前が嫌な子どもたち、親につけられた名前が嫌な子どもたちが自分で名前をつけた、ということ。『ポスト』というあだ名については、『赤ちゃんポスト』に捨てられていた子どもが、これから前を向いて生きていくための決意表明としてつけた」

などと説明。

増田委員との議論は、まったくかみ合ってないものだった。

このように、番組審議委員会のやりとりは、それぞれが感じたことを言い合っているだけで、児童養護施設側や慈恵病院側が問題視している「子どもへの加害性」についての有無などについて、検証するような議論には発展しなかった。

番組制作者の「釈明」も、施設で育つ子どもたちへの影響を深刻に受けとめている印象はない。

ただ、自分たちはこう思った、と言っているだけだ。

この後で大久保好男社長の「今後も真摯に対応していく」というコメントが読み上げられて番組審議委員会での「明日ママ」についてのやりとりは終わった。

ここで社長がコメントで会社の危機感と誠意を示そうとした点は会社トップの姿勢として評価すべきだと思う。

通常、個別の番組に関する議論で、社長が番組内で意見を表明することはない。

それだけに、現場の担当者の危機感の薄さが伝わってくる一方、会社のトップが強い危機感を持っていることを内外に伝える番組になった。

番組審議委員会のやりとりの議事録は日本テレビのホームページに掲載されるのでそのうち文字でも確認できるだろう。

このタイミングでこの番組を放送した日本テレビは、一連の問題を真剣に、深刻に受けとめていると言ってよい。

(2014年2月9日「Yahoo!個人」より転載)

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