日テレ「明日、ママがいない」で慈恵病院が「テレビのお目付役・BPO」に申し立て。今後の展開は?

日本テレビのドラマ「明日、ママがいない」の問題がいよいよテレビ局にとってはお目付機関といえるBPO(放送倫理・番組向上機構)に持ち込まれた。

日本テレビのドラマ「明日、ママがいない」の問題がいよいよテレビ局にとってはお目付機関といえるBPO(放送倫理・番組向上機構)に持ち込まれた。

日テレドラマ、BPOに審議要請 「赤ちゃんポスト」設置の病院

日本テレビ系列で放映中の連続ドラマ「明日、ママがいない」が児童養護施設関係者の人権を侵害しているとして、親が育てられない子供を匿名で受け入れる「こうのとりのゆりかご」(赤ちゃんポスト)を設置する慈恵病院(熊本市)は22日、放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送人権委員会に審議を求める申立書を送付した。 記者会見した蓮田健産婦人科部長は「第1回放送後に、施設の子供がいじめられたとの報告を伝え聞き、緊急性が高いと判断した。BPOは速やかに結論を出してほしい」と述べた。

出典:MSN産経新聞

BPOというのは、NHKと民間放送が出資して、政府に番組内容に介入させないように、自分たちで放送倫理を遵守するために設立した第三者機関だ。「放送倫理検証委員会」「放送人権委員会」「青少年委員会」の3つの委員会がある。それぞれの委員会で、放送倫理違反が疑われる番組放送について、弁護士や学者などからなる委員が検証を行う。あくまで第三者機関で、監督官庁ではないから、強制力はないが、様々な意見や監督を行う。それらBPOの結論は、放送局にとっては裁判における「判決」に等しい。

たとえば2009年の日本テレビの「真相報道バンキシャ!」における岐阜県庁の裏金をめぐる虚偽証言の放送では、当時の社長らの退陣という事態になったが、BPOの「放送倫理検証委員会」は日本テレビに対して、検証・訂正番組の放送や再発防止体制の構築などを「勧告」した。

ところが、日々放送される各局の放送は、大小の違いこそあれ、間違いや人権侵害、ヤラセ行為など「問題発覚」が頻繁に起きていて、各委員会ではどこも懸案の審議を抱えているのが現状だ。

BPOの詳細は、ホームページを見てほしい。http://www.bpo.gr.jp

「放送倫理検証委員会」は、

放送倫理検証委員会とは 問題があると指摘された番組について、取材・制作のあり方や番組内容について調査。放送倫理上の問題の有無を、審議・審理し、その結果を公表します。

出典:BPO 放送倫理検証委員会のホームページ

と役割を説明している。簡単に言うと、ヤラセやデータの偽造事件などを審議するのがこの委員会だ。

「青少年委員会」は、

青少年委員会 (正式名称:放送と青少年に関する委員会) とは 青少年が視聴するには問題がある、あるいは、青少年の出演者の扱いが不適切だなどと視聴者意見などで指摘された番組について審議を行い「見解」を公表したり、制作者との意見交換を行います。また、放送と青少年の関わりを研究、調査しています。

出典:BPO 青少年委員会のホームページ

という説明で、たとえば、子どもが視聴する時間帯での過激な性的表現などを審議する。

「放送人権委員会」は、

放送人権委員会 (正式名称:放送と人権等権利に関する委員会) とは 「放送によって名誉、プライバシーなどの人権侵害を受けた」という申立てを受けて審理し、「人権侵害があったかどうか」、「放送倫理上の問題があったかどうか」を判断します。 ※申立ては無料です。第三者の立場から、迅速、公正に審理します。

出典:BPO 放送人権委員会のホームページ

放送によって、人権を侵害されたという申し立てを受けて、個別に審議を行う。

今回、日テレのドラマ「明日、ママがいない」で慈恵病院が問題を持ち込んだのが「放送人権委員会」だった。

日テレドラマでBPOに審議要請 熊本の病院、人権侵害訴え

日本テレビ系列で放映中の連続ドラマ「明日、ママがいない」が児童養護施設関係者の人権を侵害しているとして、親が育てられない子どもを匿名で受け入れる「こうのとりのゆりかご」(赤ちゃんポスト)を設置する慈恵病院(熊本市)は22日、放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送人権委員会に審議を求める申立書を送付した。

出典:共同通信

慈恵病院は、日本テレビによるドラマの放送によって、実際に施設にいる子どもたちの人権が侵害される恐れがある、として、まだ実際にはいじめなどの被害が深刻な状況になっていないものの、差し迫った危険性がある、という論拠で、申し立てを行ったものと思われる。

この場合、問題となるのが、「現時点でいじめなどの被害」が深刻ではないとしても、放送によってそうした人権侵害が起こりうるとして、同委員会が申し立てを受理し、審理を行うかどうかだ。

実際の審理にさえ入ってしまえば、児童養護施設の関係者や「赤ちゃんポスト」の設置機関である慈恵病院、里親たちなど、実の親が養育できない子どもたちに関わっている人たちが等しく「ひどい内容」としているので、

少なくとも、差別や偏見につながりかねない、として「放送倫理違反」を指摘されるだろうというのが、私の見立てだ。

ただ、実際に審理入りをするかどうか。

実は、BPOの事務局は、NHKや民放などの放送局のOBたちが数多く、「調査役」として、再就職している。

それらの人たちが自分の「古巣」と気脈を通じて、問題が大きくならないように行動する場合もある、と伝え聞く。

このため、BPOの審議も、「身内が身内を裁く」という面があり、様々なところで「問題を大きくしたくない」というテレビ局の意思が作用する。

私自身、一昨年、「生活保護バッシング」の各局の報道があまりにも一方的で、生活保護を受けている人たちへの「差別」「偏見」を助長している、と感じて、番組のDVDなどを携えて、「放送倫理検証委員会」に審議入りを要請したが、数ヶ月語に示された委員会の結論は「各局の編集権の範囲内」で「審議入りしない」というものだった。

明らかな誤報やデータの間違いなども示したにも関わらず、審議もしてもらえない。事実上の「門前払い」だった。

問題提起をした側から見れば、そんな「おかしな結論」を下す場合もある。

放送倫理検証委員会は、ひどい放送によって実害を受ける「被害者」がいない場合なので、「申し立て」という手続きをとっていないという問題もあったと思う。

ところで、今回、慈恵病院が持ち込んだのは放送人権委員会だ。「被害者」が申し立てるという仕組みになっている。

これは、実際の人権侵害を証明することができれば、審理の前に「門前払い」ということはない。

前述したように、実際の審理にさえ入れば、放送における問題性や加害性が明らかになるであろう今回のドラマの場合、日本テレビの放送倫理違反が指摘される可能性が高い。

このため、1か月以内、2月下旬までには結論が見えてくるはずだ。

放送人権委員会のホームページを見ると、1月21日に委員会が開かれているので、次の委員会の開催は、2月の中旬から下旬だ。そこで「審理入り」ということになれば、日本テレビは放送の見直しを迫られる、ということになる。

BPOがどんな方向に動くのか。

注目することにしよう。

(2014年1月22日「Yahoo!個人」より転載)

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