先週末は、全国小規模保育協議会の総会を仙台でやってきました。全国から駆けつけてくれた小規模認可保育所の経営者の方々が、口々に「少人数で手厚く保育できる、小規模保育は良い」と語り合っているのを見て、協議会の理事長の僕としてはジーンと胸がいっぱいになりました。
さて、そんな時にタイムリーなニュースが飛び込んできました。保育士試験において必ず出題されることから、保育士を目指す人は暗唱に近いレベルで読み込まないといけない「保育所保育指針」。
これが10年ぶりに改定されるのですが、そこで乳幼児においては少人数保育を目指すことをうたう、というのです。
NHKのニュース(http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160601/k10010542011000.html)を引用しましょう。
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保育施設を利用する子どもが増え続けるなか、厚生労働省は、保育指針を10年ぶりに見直し、成長の個人差が大きい乳幼児については少人数の保育を目指すことになりました。
先月31日は厚生労働省の専門委員会が開かれ、保育指針の見直し案が示されました。
この中では、保育施設を利用する子どもが増え続けるなか、成長の個人差が大きい3歳未満の乳幼児の保育を充実させるべきだとしています。具体的には、乳幼児期の保育は、その後の成長や社会性を身につけるうえで重要だとしたうえで、一律ではなく、それぞれの子どもの身体的、精神的な成長に合わせて少人数で保育することが重要だとしています。
---(太字は著者)
え、これの何がニュースなの、と思うかもしれません。しかし、保育園業界的には、とても大きなことなのです。というのも、保育所というのは、「Big is Good」だと捉えられがちでした。たくさん子どもがいて、でっかい園舎で園庭もあって、というのが良い保育園。よって、公立認可が一番だよね、と何となく皆さん思うわけです。
教育の世界では大きすぎるクラスサイズは批判を浴びていて、少人数学級が特に小学校低学年で効果が高いことは、ある程度コンセンサスが取れているのに、保育や幼稚園の世界では、理解が浸透していません。
この前も日本の幼稚園を特集するテレビ番組で、海外の幼児教育の専門家に「うちの幼稚園は400人なんですよ!(ドヤッ」みたいなシーンがあって、海外の人が半ば呆れる、みたいなシーンがありましたが、幼児教育に携わる人たち自身がわかっていない、という部分も多分にあります。
実際に僕たちも小規模認可保育所(6人〜19人の少人数保育所)の運営に関わっていく中で、保育業界の人たちから、「マンション保育園は質が低い」等と揶揄されることもあったわけです。
しかし、保育士が必ず学ぶ、保育所保育指針において、「乳幼児には、個々の子ども達の個性を大切にできるよう、少人数を目指そう」と記述されるのであれば、そうした無理解も薄まっていくかな、と。
(ちなみに、保育士1人あたり担当する子どもの数が一定水準を超えると、不適切な関わりの率が上昇することについてはエビデンスがありますが、あまり知られていません。出典: Howes & Phillips & Whitebook, "Thresholds of Quality: Implications for the Social Development of Children in Center-Based Child Care" http://bit.ly/1X0cjLK)
我々は現場で、質の高い少人数小規模保育を当たり前にすべく、これからも頑張っていきたいと思います。20年後の保育士たちに「ええっ、100人超える保育園って、存在してたんですか?」と言われるくらいに。
(2016年6月2日「駒崎弘樹公式ブログ」より転載)