保育士不足解消に、政府が今すぐできる地味だけど効果的な1つの政策

待機児童問題がやんやと叫ばれていますが、保育園を増やせない理由があります。それは、「保育士不足」です。既に半数の園で、「人材確保が課題」と言っていて、更にこのまま行くと、厚労省調査によると3年後の2017年には7万4000人の保育士が不足するそうです。

【深刻化する保育士不足】

待機児童問題がやんやと叫ばれていますが、保育園を増やせない理由があります。

それは、「保育士不足」です。

既に半数の園で、「人材確保が課題」と言っていて、更にこのまま行くと、厚労省調査によると3年後の2017年には7万4000人の保育士が不足するそうです。7万4000人というと、仮に彼らが現場に入って1・2歳児をみるとすると、認可保育所基準で行くと保育士1人で6人の子どもをみれますから、子どもおよそ44万人分の人手が足りない、ということになります。

政府が言っている潜在待機児童数は40万人、一部報道では80万人と幅がありますが、仮に人手不足の予測が過大でその半分程度だったとしても、政府が公式に表明した40万人の半分近くの子ども達が、保育士不足によって預かれない、ということになります。

これはまずい。

【保育士不足の理由】

で、その原因と言われているのが、処遇です。保育士の平均月収は20万8000円で、全職種平均の29万7700円よりも、9万円近く低いわけです。

これを何とかするために、子ども・子育て新制度では、消費税増税によって得られるお金から7000億円引っ張ってきて、そのうちの3000億円くらい使って、処遇改善等を行っていこうとしています。

これはこれで絶対やらないといけないのですが、しばし時間が掛かります。しかし保育士不足は都市部では今まさに進行中でして、4月開園を目指したが開園ができない、という例も出始めています。

ちなみに、認可保育所では、働く人は「100%保育士でなければならない」という規制があるので、必然的に「保育士資格を持つ人」が必要になります。「保育ができる人」かどうかではなく。

【とりあえずできること】

そこで、保育士資格を持つ僕から、今すぐにやれることから、ということで政府に一つ提言です。

それが「保育士試験の通年化」です。

現在、保育士試験というのは年に1回(一次は夏、二次は秋)です。

大学等大きな会場を借りて、何百人も大講堂で集めて、マークシートで試験を行っています。

つまり大規模なオペレーションが必要なので、年1回が限度、って多分そういうことなんです。

でも、マークシートって。一カ所に集めてやる必要、本当にありますかね?

例えば今は、TOEFLやTOEICには、iBT(インターネット・ベースト・テスト)と言って、コンピュータが並んだテストルームに行って、そこで試験を受けられるようになっています。テストルームに試験官を置くだけで良いので、圧倒的にオペレーションコストを削減できるでしょう。こうしたものを導入すれば、毎月保育士試験を実施することが可能になり、毎月保育士を誕生させられることができます。

【予想される反論】

おいおい、二次の実技試験はどうするんだよ、という声も聞こえてきます。でも、二次試験って、本当に意味ありますかね?絵本の読み聞かせ、絵画、ピアノから2つを選んで行うこの試験。合格率は95%です。ぶっちゃけた話、なくても良いし、例えすごく絵が下手でも、働きながら練習すれば良いだけなんじゃないでしょうか。

また、「先月受けた友人に、どの問題受けたか聞けたらずるい」という意見もあるでしょう。でも、iBTやWEBテストだと、例えば1000問中でのこの100問を出す、ということが可能になるので、事前に問題を聞いておくのも余り意味がなくなります

更に、「試験を受けただけのやつが、大切な子どもの命をみれるのか?」みたいな突っ込みもあるでしょう。それに対しては「え、今でもそうなんですけど」としか言えません。保育士って、ペーパーテスト(とほとんど受かる実技)でなれるんです、実際のところ。

もし質の担保、ということを言うのなら、今でも本当は「免許更新制」は必要なんです。だから、通年化で促成育成が心配なら、3年に1回くらい更新できるようにすれば良いだけです。

【通年化の効果】

もし保育士試験を通年化させてくれるなら、こういうことができます。例えば保育の実務経験があったり、子育て経験のある、だけれど資格だけは持っていない、という人を採用します。そして、3ヶ月みっちり勉強させて、ウェブテストを受けさせ、資格を取得させます。

そして現場でOJTでしっかりと育成していきます。

今は、無資格の保育者は認可保育所では働けないので、認可保育所より更に待遇が悪いベビシッター企業や認可外保育所等に流れていってしまっていますが、そうした人達も試験のハードルが下がることで、保育園勤務に門戸が開かれていくことでしょう。

【実現に向けての具体策】

いきなりこれまで何十年と続いた年1回のオペレーションをひっくり返すのは大変なので、まずは保育士不足が甚だしい東京都で、追加的にウェブテストを四半期に1回くらい試験実施してみると良いと思います。それで効果が出たら、全国に広げていき、最終的には10年くらいかけてペーパーテストからウェブテストに切り替えていって、通年化していけば良いのではないかと思います。

【まとめ】

というわけで、厚労省はとりあえず保育士資格試験に、ウェブテストを取り入れて複数回化させていきましょう

ただ、これは「とりあえず」の策です。

悪いと言われる介護職員以上に処遇が低い現状を変えないと、構造的には不足し続けます

というわけで、安倍政権におかれましては、ぜひ財源をきちんと確保し、保育士の処遇改善に努めて頂けることを、心より願っております。

(2014年2月28日「駒崎弘樹公式ブログ」より転載)

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