日韓コミュニティビジネスフォーラムに招待されたことをきっかけに、11月6日、ソウル市内のアガヤ(赤ちゃんへの呼びかけ語)保育園を見学しました。アガヤ保育園は、YMCAが運営する、一時保育を中心に行う保育園です。韓国で初めて一時保育を始めた施設だそうです。同時に、学童保育機能も持ち、小学校後の児童の預かりも行います。
現場はちょっと広い民家を改装したものです。小さなお庭も付いています。
内装は手作りでとても工夫されていて、明るい雰囲気です。
この日は、みんなで料理を作ろう!というプログラムを行っていました。良いにおい。
子ども達は楽しそうです。
学童保育スペースがあり、宿題も手伝います。
さて、日本では一時保育機能は保育所に付いているのと、独立した一時預かり施設も
自治体事業として(税を原資に)運営されていますが、韓国ではそうした補助事業が一切ないとのこと。
ですので、アガヤ保育園の経営はかなり厳しいようです。初期だけは社会的企業向けの補助が出ましたが、今はその時に貯めたお金を取り崩しています。(韓国では社会的企業育成支援法という法律があり、日本で言うソーシャルビジネスや社会的企業のための、独自の法人格「社会的企業法人」があります。この認可を取ると、初期3年間人件費が補助されます。)
しかし、政府がアガヤ保育園等の取組を参考に来年度から制度化する予定があり、そうなったら制度に乗ることで補助が出るので、経営の安定化に繋がるだろうと考えているそうです。
この他韓国の保育園事情を聞くと、かなり共通点、特に日本がかつて経験した課題を持っているようでした。箇条書きにします。
・保育園(オリニチップ)の種類は国公立と民間私立。国公立は1割で、9割が民間私立。運営者は企業・NPO・個人・協同組合等。
・以前は低所得者層には無料だったが、昨年から全員に無料化。それによって保育所利用希望者が増え、待機児童問題も加速
・保育の質が低い園も多々あるそうです。表向きは19時までと書いてあるのに、実際は16時半までにしてほしいと言われたり、ずっとビデオを見せっぱなし、という経験をした人もいる
・学童保育インフラは日本以上に貧弱。
・全体的に保育政策にかける予算はかつての(今もだけど)日本のように非常に少ない。制度化進捗具合においては、15年前の日本くらいの印象
・日本よりも低い合計特殊出生率。少子高齢化の危機感は社会的にある程度共有されており、矢継ぎ早に政策化している。政策化のスピードは日本より早い印象だが、レパートリーは日本に一日の長
まとめると、日本の10〜20年前の状況にかなり似ているので、日本の現在の保育制度やノウハウをシェアしてあげることで、韓国の少子化を食い止めることにかなり貢献できるように思いました。
そうした意味でも、課題先進国の日本は課題解決先進国として、他国に貢献していけるのではなかろうかと思います。
しかし、日韓で保育関係者や有識者の交流は余りされていないということで、こうした機会は積極的に作っていって良いのではなかろうかと感じました。
(※この記事は2013年11月24日の「駒崎弘樹公式ブログ」より転載しました)