子ども2人が夏休みのキャンプに行き、久しぶりに訪れた、夫婦二人だけの時間。
たまには二人で外食でもするか、と近くのレストラン(完全禁煙)に行くことになった。
子どものいない時間なんて久しぶりすぎて、何を話したら良いのか分からない。
「あいつら、今どうしてるかなぁ」
「ちゃんと髪乾かせてるのかな」
など、結局子どもの話ばかり。
【ワークショップ型対話】
そんな中、妻がおもむろに「はい、ワークショップやるよ」と付箋と紙を取り出した。
妻は、地域で子育てと仕事の両立について考えるワークショップを友人たちとやっていて、好きが昂じて青山学院のワークショップデザイナーの資格を取るまでになっていたのだった。
「ぶおっ、二人でワークショップ?しかもレストランで?」
そんな戸惑いをよそに、テーマは課せられ、時間制限の中、ワークが始まる。
(1)相手のすごいところ、良いところ
(2)一番良い思い出
(3)結婚の決め手
(ここで気づきのシェア)
(4)今パートナーに伝えたいこと(当初は違うお題だったが、後にアドリブで変更)
これらを紙に箇条書きにしていって、その後短くプレゼンをした。
【結果と効用】
一つ一つ列挙するのは中々恥ずかしいので、詳細は控える。
が、結果として非常に良かった。普段は照れてしまったり、場にそぐわないと思って口に出さないことでも、「ワークショップの場だから」ということで、自然と話せるようになったのだった。妻よ、企画を聞いた当初、塩対応してごめん。そしてありがとう。
そもそも、普通に生きていて、妻の良いところをリストアップしたりしない。また、「なんで結婚したのか」等と改めて考えたりしない。日常に埋没していって、何となく空気のような存在になってしまいがちだ。
しかし、その時を振り返ると、そこには迷いがあったり、熟考があったり、決断があったりしたわけで、それを再び想起できたのだった。
また、日常を共に過ごしていると、相手の「足りない部分」がよく見えて来て、そのマイナスをゼロにしようと、文句を言ったり喧嘩したりしがちだ。しかし、良い部分にフォーカスをあて、リスペクトを伝えることは決定的に不足してしまうのだ。
社内においては、社員の強みに気づき、そこを徹底的に伸ばしていくのが人材育成だ、と口を酸っぱくして言っているわりに、自分は夫婦間ではそれができていなかったのだった。
こうしたことを思い知らされ、妻へのリスペクトの念を改めて認識して、「うんそうだ、自分はパートナーがほしかったんだ。そしてそのパートナーシップは、意識的に育んでいくものだったんだよな」という、当たり前すぎるほど当たり前のことを、「思い出した」のだった。
【手法の普遍性】
これを他のカップルの皆さんができるのかどうか、はよく分からない。たまたま妻がワークショップの勉強をして、ファシリテーションに慣れていたから、ハマったのかもしれない。
けれど、会社で普通に会議のファシリテーションをやったり、研修担当をやったりした人だったら、別に難しいことではないのではないか、と思う。
何もツールがないと、「さぁ、お互い腹を割って話そうよ!」みたいな無理ゲーになっちゃうので、何かしら道具立てがあるとやはり違うのではないか、と思う。
普段の日常会話では、あまり深いレイヤーに入って話すことはできないのだけれど、場とツールを設定すると、意外と簡単に潜れるのは驚きだ。
【最後に】
夫婦は最小単位のパートナーシップだ。他のすべてのパートナーシップと同様に、振り返りと学び、改善とメンテナンスが必要だ。
にも関わらず、最もそれを忘れがちで、放置してしまうのが夫婦という間柄かもしれない。
というわけで、夏休みというタイミングを利用して、騙されたと思って夫婦間ワークショップを試してみるのをお勧めしたい。
:関連文献
・ベスト・パートナーになるために―――男と女が知っておくべき「分かち愛」のルール 男は火星から、女は金星からやってきた
・ワーキングカップルの人生戦略
(2017年8月15日「駒崎弘樹公式サイト」より転載)