事故処理に政府が責任を持つ体制が必要 ~福島原発視察(1)

私は、8月28日、福島県の東京電力福島第一原発、第二原発を視察してきました。事故後の視察は1月に続いて二度目です。現場の皆さんの努力で復旧作業は進んでいるものの、新たに汚染水漏れが発覚するなど、ただでさえ30年以上かかるという事故の収束には、気が遠くなる状況です。

9月8日、2020年の東京オリンピック開催が決定しました。日本中が歓喜に沸き、2020オリンピック・パラリンピック誘致国会議員連盟の常任理事である私にとっても、喜びと安堵の瞬間でした。

しかし、喜んでばかりはいられません。今後の福島原発の先行きが見えないからです。安倍晋三首相が「状況はコントロールされている」と説明した福島第一原発ですが、現実はそう言い切れるような状況ではありません。

私は、8月28日、福島県の東京電力福島第一原発、第二原発を視察してきました。事故後の視察は1月に続いて二度目です。現場の皆さんの努力で復旧作業は進んでいるものの、新たに汚染水漏れが発覚するなど、ただでさえ30年以上かかるという事故の収束には、気が遠くなる状況です。事故現場は今、どうなっているのか。実際に現場に出向いて把握してきた現状を報告します。

東京から2時間半。常磐線いわき駅で列車を降り、まず向かった先はJヴィレッジ。元々はサッカー日本代表の合宿などで使われる施設でしたが、震災後は原発事故対応の前線基地となっています。我々は人工芝の室内練習場に建つプレハブの施設内で、WBC(ホール・ボディ・カウンター:放射線量全身測定)を受け、正常値であることを確認してから約10キロ北にある福島第二原発に向かいました。第二原発も地震と津波の被害を受けて一部の建屋には浸水しましたが、幸いにも安全上必要な装置は機能を維持しました。一部、失われた冷却機能を回復した後、地震から4日後には1~4号機すべてで冷温停止状態になっています。原子炉建屋では使用済み核燃料が眠っている燃料プールや原子炉格納容器の真下部分も見ながら、型の近い第一原発の状況について説明を受けました。

その後、福島第一原発へ。現在も放射線量が高いため、全身防護服を着て顔にもマスクを装着したうえで、バスの中から視察しました。敷地内に入って最初に目に飛び込んできたのが、ところ狭しと置かれた容量1000トンの巨大な貯水タンク。8月になって、このうちの一基から約300トンの汚染水が漏れていたことが明らかになったばかりです。

視察に行ったちょうどこの日、原子力規制委員会は「国際原子力・放射線事象評価尺度(INES)」に基づく評価を「重大な異常事象」に相当するレベル3に引き上げました。もしも汚染水が外洋に漏れれば甚大な環境破壊であり国際社会での信用失墜ともなります。徹底的な原因究明と最悪を想定した対策に加え、今後の再発防止策を講じなければなりません。

そして沿岸部に建つ、6基の原子炉建屋。このうち1~3号機はメルトダウンを起こし、今も強い放射線を出しています。3号機の前を通った際は手元の線量計が最高の毎時1.7ミリシーベルトを示しました。作業員も近づくのが困難なため、現在、3号機では遠隔操作によるガレキ処理が行われています。核心である溶けてしまった燃料棒の取り出しとなると、一体いつから始めることができるのか、見当はまったくついていません。

沿岸部には骨組みだけとなった建物やひっくり返ったトラックなど、津波の爪痕が今も生々しく残っています。事務の本部だった建物も地震被害によりガラスが割れ、天井が崩落した状態で今も据え置かれています。事故対応を優先してきたからですが、事故から二年半も過ぎたとは到底、思えない光景でした。

政府と東電は事故から30~40年かけて廃炉を完了させる計画を描いています。しかし、今も汚染水漏れなど想定外の事態が日々起こり、その対応に追われているのが現状です。今年の夏は気温が30度を超える日が続いたため、防護服を着ての日中の作業もままなりません。

廃炉に必要な技術の多くは「これから開発」するのであり、政府も東電もいつまでに廃炉を完了できるのか、明確な道筋を描けるはずがありません。改めて今回の事故の深刻さを受け止めました。

単に東電を責めれば済む問題ではないのも現実です。原発政策を推進してきたのは長年にわたる政府(主に自民党と経済産業省)と電力会社です。本来、私は東電を国有化して国が責任を持って事故対応にあたるべきだと考えてきました。平成23年(2011年)10月、震災から半年経った時期に竹中平蔵氏との共著「告発日本の大問題30」を出版し、その中で竹中氏と東電の国有化をするべきだという議論をしました。

しかしその後、民主党政権でも自公政権でも国有化は実現しないままです。結果として、東電任せという状態にしてきたことが、今回の水漏れ事故など、新たなる深刻な状況を発生させていると言えます。なぜならば、民間企業である東電はあらゆるリスクを想定した根本的な対策を講じることはしません。できるだけ少ない事故処理費用にしたいからです。

2020オリンピック開催地決定のIOC総会直前の3日、安倍首相は汚染水対策に500億円の国費を投入して国として責任を果たす方針を発表しましたが、私からすれば遅いと言わざるを得ません。そもそも、「一民間企業」である東電に、今後も政府が逐次資金を出すことには無理があります。返す返すも、東電の法的整理=国有化によって全面的に国が責任を持つ体制を作るべきだったと考えますが、オリンピック開催が決定した今、事故処理の体制を再構築することが急務と言えます。

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