「アンネの日記」破損事件の謎

ソチ・オリンピックで感じたのは、選手の活躍だけでなく、現地での応援や日本からの声援が、世界に誇れるほど成熟してきたことでした。メダルの獲得を超え て選手の健闘に感動し、称える国になったことはすばらしいことでした。

ソチ・オリンピックで感じたのは、選手の活躍だけでなく、現地での応援や日本からの声援が、世界に誇れるほど成熟してきたことでした。メダルの獲得を超え て選手の健闘に感動し、称える国になったことはすばらしいことでした。しかし一方では恥ずかしい事件も起こりました。東京の図書館で「アンネの日記」やそ の関連図書が破損されていたことがわかったことです。 「アンネの日記」破損の実行犯についてはさまざまな憶測が流れています。ついに在特会やネトウヨもここまでやるようになったのかとか、逆にネトウヨ界隈では、中山成彬議員のツイートにインスパイヤされたのか、在日韓国人か左翼の陰謀だとする見方があるようです。

こういった先入観をもった発言は、国会議員の立場を考えると疑問には感じますが、いずれにしても、どの立場であっても、国益が毀損される恥ずべき事件なので、いったい誰が実行したのかの謎は深まるばかりで、徹底した捜査をお願いしたいものです。

たんなる馬鹿がやったにしては執拗すぎ、組織的な犯行をも感じさせます。ユダヤ人を嫌うといえば、明治への復古主義の人たちは、共産主義も今日の日中韓の 対立もユダヤが仕組んだものという陰謀説を信じているとはいえ、その程度で「アンネの日記」、また関連図書を破るとはとうてい思えません。

それにユダヤ社会とは、日本はいい関係を築ける歴史を持っているだけにいっそう残念に感じることです。ご存知だと思いますが、外交官の杉原千畝がナチスに追われた数千人のユダヤ人にビザを発給して救ったこともありました。

杉原千畝についてはブログで紹介したことがありますので、そちらも御覧ください。

復古主義の人たちからすると、これは杉原千畝が単独でやったことではなく、東條英機や松岡洋右らが命じたものだ、杉原千畝だけを賞賛し、当時の日本政府を 悪く言うのも陰謀だと、にわかには信じがたい説のようですが、いずれにしても、ホロコーストから多くのユダヤの人たちを救ったことに変わりはありません。

しかし、人種差別が講じた、あるいはそれを利用した犯行だとのいずれの見方にたったとしても、レイシズムを放置したり、また早く厳しい法的措置をとってこ なかったことが、こういった問題につながってきたように感じます。在日の人たちが多く住み、また商店を営んでいる鶴橋で、「朝鮮人は出て行ってください」 「出ていかなければ鶴橋大虐殺」とか叫んで殺人を示唆した時点で逮捕することも可能だったのではないでしょうか。

ドイツはネオナチに対して法的に活動を禁止したために、地下活動となり、ついには2011年にネオナチによる連続殺人事件が起こっています。これも警察当 局が極右勢力の危険性を過小評価し、「警察と情報当局による見過ごしや過失、驚くべき怠慢によって捜査が妨げられていた」(AFPBB News)ことが原因にあったのでしょう。

ネトウヨや在特会の人たちの人種差別発言や行動が日本を貶め、海外での反日を煽る格好の口実となるので困ったものです。別に右翼であろうが左翼であろうがいいのですが、もう互いを罵り合うことはやめ、礼節をもった誇りある発言や行動をお願いしたいものです。

オリンピックで生まれた爽やかな風が、こういった日本で広がってきている重苦しく、陰湿な空気を変えてくれればと願うばかりです。

(2014年2月24日「大西 宏のマーケティング・エッセンス」より転載)

破損した「アンネの日記」

「アンネの日記」破損事件

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