関空の運営権売却は関西経済復興の牽引役として期待したい

関西では、まずは観光産業周辺のサービス産業からでも厚みをつくって行くことが現実的で、そのためにもインバウンド消費を高度化させていく戦略がとりわけ重要です。

関空の運営権が、オリックスとフランスの空港運営会社バンシ・エアポートなどでつくる企業連合に譲渡されることになりました。日本の成長戦略にとっても大きな目玉政策です。

所有権を国や自治体に残したまま、その施設を活用して営業する権利を譲渡するというものですが、この入札で、企業に提示された最低落札価格が総額2兆2000億円、45年の長期契約とハードルが高すぎたために、結局応札したのがオリックス連合だけという結果になりました。

競合入札の効果が薄れたことは残念ですが、これで仙台空港とともに、完全に民間企業運営となり、関空と伊丹空港を一体で、おそらく近い将来には神戸空港も吸収して空港を経営することになるのでしょう。民間企業のスピードや発想力に期待したいところです。

大阪といえば、第三セクター失敗の歴史の宝庫です。ほんとうに情けないほど馬鹿な構想で、ドブにお金を捨てる事業を重ね、それも関西経済衰退を促す一因になってきました。

これでUSJとともに、民営化によって、これまでのお荷物が、稼ぎ手になってくれるだけでも大きなことです。しかも今回の企業連合には、大阪の代表的な企業30社も出資します。なにか、民間でインフラを整備するというのは大阪らしさも感じます。

ちなみに、大阪市が22%を出資した第三セクターが運営していた当時のUSJは泣かず飛ばずで赤字経営が続いていましたが、民営化された後の成功はご存知の通りです。しかも大阪市が民間並み土地の賃料をもとめても、それに応じず裁判になるという商魂の逞しさです。

関西を再活性化する施策はいろいろ考えられます。しかし、なかでも関西経済のコアとなる大阪を再編し、国際競争力のある規模を持つ都市にすることが絶対条件だと思います。今のネオンだけ派手な地方都市では話になりません。

しかし、なんといっても、それと平行して進めなければならないのが、インフラの強化、とくに国際空港の強化です。海外、とくにアジアから人が集まってくる都市になるための充実した玄関口が必要です。

関空運営権売却で、それを実現する大きなチャンスを得たことになります。成功すれば、空港行政だけでなく、東京と大阪のデュアルコア体制を築くことにも、さらに大都市圏がつながるマルチコア体制へと進化させていく将来も見えてくるのではないでしょうか。

少なくとも分かりやすいのは観光による経済効果ですが、近畿圏は、首都圏以上に層の厚みのある文化資産のコンテンツを持っており、非常に高い観光地としての競争力があります。

海外からの旅行先としても人気が高く、1~9月に大阪を訪れた外国人観光客数が525万人と過去最高を記録しています。関空は入国審査のパンク状態が続くという嬉しい悲鳴があがっているとか。

法務省の出入国管理統計で、入国する空港で比較してみると、2014年のトップはさすがに成田で493万人、そして2位が関空の317万人、3位が175万人で、福岡、中部、新千歳、那覇と続きますが、上位3空港で、4位以下を大きく引き離しています。おそらくアジアでいえば、関空が地理的にも有利で、成田を追い抜いても不思議ではありません。残るは空港のキャパシティとサービスの魅力づくりだけです。

関西には、個々にはキラリと光る優良企業があっても、産業集積地としては成長力を失ってしまっているので、まずは観光産業周辺のサービス産業からでも厚みをつくって行くことが現実的で、そのためにもインバウンド消費を高度化させていく戦略がとりわけ重要です。

大阪府と大阪市のダブル選挙が始まっていますが、またなんのビジョンも持たない地方議員のオール与党体制が復活して、こんな流れに水をさす結果にだけはしてほしくないものです。

(2015年11月11日「大西宏のマーケティング・エッセンス」より転載)

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