「つまようじ少年」犯行劇場は報道も共犯だといえないか

どの局も、「つまようじ少年」がYouTubeに投稿した動画を編集しただけで、繰り返し、繰り返し流していました。

どの局も、「つまようじ少年」がYouTubeに投稿した動画を編集しただけで、繰り返し、繰り返し流していました。捕まってみれば、商品を持ち込んで演技し、つまようじ混入や万引きを自作自演していた疑いが強いようです。しかしまあ、編集方法は異なるとはいえ、ただ投稿画像の垂れ流しです。結果として、テレビ局は、少年に振り回され、少年の意図、「神以上の存在になる」錯覚というか妄想をふくらませること、また少年が、注目を浴び、高揚感にひたることを助長する役割を演じてしまったことは否定できません。

意地悪くいうと、YouTubeで注目されたいがための少年の野心と、視聴者の目を釘付けにしたい放送局が一緒につくりあげた犯行と逃走のドラマだったのではないかという印象すら感じます。

それだけでなく、きっと、あれだけ動画を流せば、第二、第三の「つまようじ少年」の模倣犯がでてくるかもしれないというのに。他局が犯行の動画を流しているから当局も流さないと遅れをとるということだったのでしょうか。

少年は生活保護を受け、それを資金に逃亡していたといいいます。生活保護を受給のまえに、扶養義務が優先されるのが原則としても、19歳から若年者単身世帯として、東京都なら月額85,510円を受給できるようです。

まあしかしネットでは、この少年に対しては非難轟々で、少年は、注目されたものの、英雄視されるどころか馬鹿にされていたので、ネット社会も健全さを保つメカニズムが働いていることを感じます。

この心を病んでいる少年は、誰からも無視され、居場所も失い、犯行に及んだようですが、被害にあった店舗以外には被害が広がらなかったことが幸いでした。幼稚な犯行で、警察を馬鹿にして挑発したものの、あっさり逮捕される結果に終わり、もう二度と報道されることもないとは思いますが、YouTube画像を垂れ流し、いわばYouTubeにタダ乗りすることが報道なのか、また犯行動画を拡散し、劇場化を手助けした格好になった報道のあり方に疑問を感じる人が局内に存在することを祈りたいものです。

(2015年1月19日「大西宏のマーケティング・エッセンス」より転載)

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