厚労省の動きで「成長戦略」の本気度も見えてくる

一般用医薬品1類、2類のネット販売については、一律禁止を違法で無効だとした最高裁判決があったのを受け、厚労省は解禁せざるを得なくなり成長戦略として今月中にもまとめるといいます。しかしどうなるのでしょうね。だまって解禁するほど厚労省は馬鹿ではありません。

一般用医薬品1類、2類のネット販売については、一律禁止を違法で無効だとした最高裁判決があったのを受け、厚労省は解禁せざるを得なくなり成長戦略として今月中にもまとめるといいます。しかしどうなるのでしょうね。

だまって解禁するほど厚労省は馬鹿ではありません。ただでさえ人員不足なところに、規制緩和などという、また仕事やクレームが増えるやっかいなものを持ち込まれると困るのです。だから規制緩和したという名目で世間を納得させ、しっかり規制維持の実質をとることが省益になってきます。

その前科が2009年の改正薬事法でした。コンビニでも医薬品が買えるようになるという触れ込みでした。マスコミもそれにのって規制緩和で世の中が変わってくると大キャーンペーンをおこないました。しかも大手コンビニのトップのなかにそれに軽率に乗って、抱負を語っていた方もいらっしゃいました。

厚労省がうまく忍び込ませたのが登録販売員制度でした。すこしでも事情がわかっているならば、それが規制強化だったことは理解できたはずです。しかも、官僚の言いなりに記者発表する、なにも知らないのか、調べもしない記者クラブの記者が、それを垂れ流すことで、ほんとうは「規制強化」を「規制緩和」だとする情報操作が行われ、世間が騙されたのです。改革を主張していた民主党も同じで、結局は官僚に乗せられたのです。

今回のネット販売解禁には、テレビ会議による「疑似対面販売」という罠が仕掛けられてきそうです。

1類のうち原則として販売開始から4年以内のものは、薬剤師による薬局での対面販売を維持すること、販売4年を超えた1類と、2類全部はテレビ電話を使った「疑似対面販売」を義務づけた上での原則解禁とすることで、厚労省はネット販売解禁の決着をつけようとしているようです。

つまり、ネットで発毛剤のリアップをで買うにも、胃薬のガスターを買うにもテレビ会議を通してでなければ買えないというのです。

テレビ会議の利用が「規制」そのものです。実際には売るなと言っているに等しいのです。いくら販売側がテレビ会議の仕組みをつくってネット販売では利用者側が利用できるとは限りません。都市部の若い世代の人はともかく、地方に住む高齢者の人などでは、利用できない人のほうが多いでしょう。

さらにここに矛盾が起こってきます。いわゆる富山の薬売り、配置販売業の売り方です。薬を置いていくのですから、使おうという時に、対面ができるわけがありません。

テレビ会議を使った販売でも、実際に店舗を持っているドラッグストアやコンビニ等では事情が違ってきます。なぜならテレビ会議の仕組みを店舗に設置しておけば、夜間など、薬剤師がそれぞれの店舗にいなくとも、お店とセンターにいる薬剤師の人とのやりとりができるようになるからです。それは認められるようになるのでしょうか。それを認めるなら消費者にとっては利便性が高まります。

ネット販売ではそうはいきません。だからネット販売側からは猛烈な反対が起こっています。そこが2009年の改正薬事法の時との違いです。どう政府は決着をつけるのでしょうか。アベノミクスの第三の矢がほんものかどうかを判断するリトマス紙のひとつになってきそうです。

厚労省と業界の癒着による問題では、保育所問題もあります。横浜で待機児童ゼロが実現でき、株式会社の参入を促した横浜方式が注目され、横浜市の保育所を視察されています。

切実なニーズがあるにもかかわらず待機児童問題が解消されない、そのカラクリをジャーナリストで政府の規制改革会議の委員をされている長谷川幸洋さんが、現代ビジネスの「ニュースの深層」で赤裸々に明かされてます。ぜひ読んでおきたい記事です。

横浜市の待機児童ゼロの実現は「株式会社」の参入によるところが最も大きいのですが、その株式会社の参入を、阻止してきているのが、保育所を運営する「社会福祉法人」の関係者やその代弁者、またその利権を守ってきた厚労省です。「株式会社は利益優先」とか「失敗すれば、すぐ撤退する」といった理由で参入を阻止してきたのです。

ところが、「社会福祉法人」こそが「利益優先」体質であり、非課税優遇措置を受け、施設整備費用については国や都道府県から補助金を受けているにもかかわらず、財務は公開されておらず、経営実態が不透明なのです。さらに本質をついていると感じる箇所があるので引用しておきます。

キャノングローバル戦略研究所の松山幸弘研究主幹が実施した約1200法人対象の調査(上記資料にある)によれば「設立の主目的が相続税対策と補助金獲得にある」「背後に営利目的事業体があり、社福からの資金流出が疑われる」法人が多数ある、という。

つまり、もともと彼ら自身が利益優先なのだ。

そうだとすると、社会福祉法人の関係者が株式会社の参入に抵抗する真の理由が分かる。株式会社が保育事業に参入して、待機児童が減ってしまっては、自分たちの利益が損なわれる。待機児童とは、社福にとっては大事な「お客さん」なのだ。いつまでも順番を待ってもらっていたほうが都合がいいのである。

競争が起こり、しかも待機児童ゼロとなると利権が脅かされる、そういう仕組を変えなければ、待機児童問題の解決も、成長戦略も絵に書いた餅になってきます。

また、いくら安倍首相が成長戦略を掲げても、そういった既得権を持った団体や業界も選挙の票田なので、自民党は二枚舌になってきそうです。どう安倍首相が自民党を統制できるかの関門も待ち構えています。

注目記事