本来なら、食料品などの生活必需品の消費税を軽減するというところを飲食料品に限定し、さらにいったん消費税を支払わせ、後に2%分を戻す「還付制度」を自公で大筋合意したといいますが本当でしょうか。筋が悪いというか、合理性も欠け、なにがなんでも税収減を抑えたいという官僚発想そのもので、プライバシーがどうのこうのという以前の問題です。
マイナンバーカードの利用促進と、飲食料の消費税はあげない建前の一挙両得のアイデアだと思っているのでしょうが、これほど無駄な仕組みはありません。というか、なにがなんでもマイナンバーカードを使わせ、マイナンバー制度を定着させることに主眼があるのでしょうか。消費税を強引に道具として使ったとしか思えないのです。マイナンバーカードの普及なら、もっと正攻法がないものかと感じてしまいます。
マイナンバーを読み取る装置、支払った消費税をICカードにデータで蓄積し、そのデータを読み取り、還付金額を銀行口座に振り込むシステムを用意しなければなりません。本来なら、レジで品目別に消費税を管理し、集計するプログラムに変更すればいいだけではないでしょうか。全体の仕組みに無駄を感じてしまいます。
「還付制度なら食料品をすべて対象にでき、線引きする必要がない」というのもいつの時代の話なのかと思ってしまいます。今日のように商品コードで単品管理されている時代では首をかしげる発想です。線引でなにか揉めているようですが、なにを対象とするかはそれこそ政治の理念で基準を決め、細かなことは官僚に任せればいいだけです。
さらに戻す額の合計に上限を設けることで、より多く買った人には事実上の所得制限がかかるというのは、あたかも所得に応じた消費があるということなんでしょうが、それは飲食料に関しては疑問です。いくら高額所得者でも、家族人数が少なければ消費額が少ないでしょうし、所得が低くとも家族が多ければ消費額が増えます。そもそも、消費税は、その逆進性が問題になるので、海外では軽減税率を導入しているのです。もし、寮など、集団生活しているところで飲食料を購入する際はどうするのでしょうね。
おしなべて見ると、いかにも財務省の発想らしく、お国のためであって、国民のため、社会のためという感じがしません。取るものはとことん取る、できるだけ税収減を抑えようという上から目線の発想ですが、与党のみなさまも、実行は官僚に任せるとしても、大事なところは、しっかり自らの頭を使って考えてもらいたいものです。
(2015年9月8日「大西 宏のマーケティング・エッセンス」より転載)