自民党憲法改正案の緊急事態条項が、スターウォーズよりヤバい4つの理由

緊急事態条項というのは、災害やテロなどの非常時に、内閣に権限を集中させたり、議員の任期を伸ばしたりするもので、年始から新聞の一面トップになっていました。

皆さんは、スターウォーズのストーリーから、自民党の憲法改正案にある緊急事態条項の恐ろしさがリアルに分かることをご存知でしょうか?

緊急事態条項というのは、災害やテロなどの非常時に、内閣に権限を集中させたり、議員の任期を伸ばしたりするもので、政府はこれに取り組んでいくということで、年始から新聞の一面トップになっていました。

災害やテロ対策は確かに必要です。そうと聞くと、必要なんじゃないかと思うかもしれませんが、よくその内容を読んでみるととっても怖いものだったのです。

そんなときに、正月休みにスターウォーズを見ていたら、自民党憲法改正案の緊急事態条項そのまんまだということに気付きました。

1 歯止めがきかなくてヤバい!

エピソード1~3では、銀河共和国が辺境星系での通商に課税してくるので、それに抵抗して共和国を離脱しようとする分離派が、軍隊を組織して戦争を仕掛けてきました。共和国の危機だということで、議会は非常事態宣言をして、議長に非常大権を与えて軍隊を創設しました。その際、議長は、非常事態が終わったら、速やかに非常大権を返上すると言っていました。

ところが、危機が去っても議長が非常大権を返上しないので、おかしいぞということになりました。「フォース」という力を駆使して銀河の正義と平和を守る役割の「ジェダイ」という騎士たちが調査したところ、議長こそが黒幕だと分かり、ジェダイたちは議長を倒そうとしました。

ところが、こともあろうにジェダイのホープであるアナキン(後のダース・ベイダー。エピソード4~6の主人公ルークの父)が議長に騙されて、黒幕の議長を倒そうとしていたジェダイを殺してダークサイドに堕ちてしまい、議長の手先になってしまいました。議長は、銀河共和国を廃止して、銀河帝国の設立を宣言し、皇帝になりあがります。皇帝はジェダイが反乱を起こしたというレッテルを貼り、虐殺を命令したのです。

ただ、スターウォーズの非常事態宣言は、自民党憲法改正案の緊急事態条項よりは、手続的にはまだマシなものです。自民党の案は、内閣がまず自分で緊急事態の宣言ができてしまうのに対し、スターウォーズでは議会で承認されなければ最高議長は非常大権を得られなかったからです。

自民党の案も、事後的に国会の承認が必要ではありますが、与党が多数を占めている議院内閣制では、政府の方針は国会ではそのまま承認され、全く歯止めにはならなくてヤバいのです。

2 民主主義で、民主主義が終わってしまいかねなくてヤバい!

このように非常事態宣言による最高議長への権力の集中も、帝国の成立も、議会で承認されました。エピソード1~3のヒロインのパドメは、「自由は死んだ。万雷の拍手の中で」と表現しました。その後、銀河帝国の成立から崩壊まで、実に20数年かかったのですが、非常事態宣言のコントロールが効かなくなると、後で民主主義を取り戻すのがどれだけ大変かということがよく分かります。

民主主義だったら何をしてもいいわけではなく、憲法に違反してはいけないという限界があるのですが、権力者が確信犯的にやろうと思ったら、民主主義を終わらせることすらできてしまってヤバいのです。

3 司法のチェックを受けないのがヤバい!

スターウォーズに出てくるジェダイは、争いを調停したり、なんだったらライトセイバーでワルいヤツをやっつけたりします。今でいうと、警察と裁判所と執行官を足したようなものなんでしょうか。

そして、上記のとおり、非常大権を握った最高議長が、実は黒幕だったことをジェダイが知って止めようとしますが、返り討ちにあってしまいます。ある意味、司法が止めようとしたけど、歯が立たなかったような状況です。

一方、自民党の緊急事態条項では、司法が事後的に緊急事態条項の行使をチェックできるかどうか何も触れていません。

しかし、日本の裁判所は、極めて政治性が高いからと言って、そもそも憲法判断を回避して、政治に丸投げしてしまうことが多くあります(統治行為論)。政府が「大変だ!緊急事態だ!」と言っている状況では、裁判所が判断を回避する可能性は高いでしょう。

フォースの凄い力があったとしても、ジェダイは返り討ちにあってしまって止められなかったのですから、司法に判断する権限があることをしっかり書き込んでおかないとヤバいのです。

4 フォースに覚醒しないとヤバい!

スターウォーズでは、非常事態宣言で独裁者が出てきて、帝国になってしまった後、フォースに覚醒したルークが帝国を倒してくれます。エピソード7では、ジェダイがいなくなっていて、助けてくれないので、誰かがフォースに目覚めていきます。

しかし、憲法が無視される立憲主義の危機に、都合よく助けてくれる誰かがいるわけではありません。

でも、今のところは、まだ国民主権であり、民主主義なので、私たち一人ひとりが「自分たちには力があるんだ」ということに覚醒したら、このスターウォーズの非常大権よりヤバい自民党憲法改正案の緊急事態条項のための改憲を止めることができるかもしれません。

なぜなら、憲法を改正するためには、まず衆参両議院の各3分の2以上の賛成で国民投票の提案をしなければならないからです。

参議院の242議席の3分の2以上というのは161議席です(議長の分の1議席はカウントから除いて計算。)。現在、改憲派の自公・おおさか維新・旧次世代で150議席弱なので、まだ10議席以上足りず、憲法改正の発議はできません。とはいえ、憲法改正に反対の議席数を維持し、改憲を阻止するためには、野党が共闘しないとまずい状況です。

しかし、昨年夏、野党が違憲な安保法案に反対して共闘できたのは、市民が求めていったからでした。それだけの力が、私たちにはあるのです。

そう、フォースは、皆さんの内にあるんです。

だって、国民主権なんですから。

逆に、今覚醒しないと、7月の選挙の後、大変なことになってしまいかねません。

緊急事態条項のことを聞いたことがなかったという方も、参議院選挙までにスターウォーズを見ていただいて、国民主権に覚醒してみませんか?

国民主権と共にあらんことを。

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集団的自衛権、憲法解釈の推移

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