ビットコインのイベントに出たら来場者に途中退席された話

とりあえず、私の話が予定より長引いてしまった(申し訳ない)以外はイベント自体は概ね順調だったのだが、後で聞いたら、怒って途中退席した人がいたらしい。確かに出て行ったっぽい人がいたような気がする。どうもビットコイン投資をしている人らしくて、なんでも遠くからわざわざ来て参加したのに、期待した話がまったく出てこないので怒って帰ったとか。イベント後の懇親会費を払い戻させて憤然と出て行った由。
Bloomberg's Best Photos 2013: A twenty-five bitcoin is arranged for a photograph in Tokyo, Japan, on Thursday, April 25, 2013. The digital currency, which carries the unofficial ticker symbol of BTC, was unveiled in 2009 by an unidentified programmer, or group of programmers, under the name of Satoshi Nakamoto. Supply is capped at 21 million Bitcoins and managed by a software algorithm embedded into the digital currencys design, rather than a monetary authority such as a central bank. Photographer: Tomohiro Ohsumi/Bloomberg via Getty Images
Bloomberg's Best Photos 2013: A twenty-five bitcoin is arranged for a photograph in Tokyo, Japan, on Thursday, April 25, 2013. The digital currency, which carries the unofficial ticker symbol of BTC, was unveiled in 2009 by an unidentified programmer, or group of programmers, under the name of Satoshi Nakamoto. Supply is capped at 21 million Bitcoins and managed by a software algorithm embedded into the digital currencys design, rather than a monetary authority such as a central bank. Photographer: Tomohiro Ohsumi/Bloomberg via Getty Images
Bloomberg via Getty Images

先日、ビットコイン関連のイベントに呼ばれて出た。「ビットコインは電気羊の夢を見るか〜評価経済とデジタル通貨で築く未来〜」というタイトル。主催者はリンクデザイン株式会社代表でギークオフィス主催者の福岡秀幸さん。福岡さんがモデレータを務められ、登壇したのは慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)かつ一般社団法人アカデミーキャンプ代表理事の斉藤賢爾さんと私。斉藤さんは近々ビットコインに関する本を出版される予定とかで、当日は先行販売が行われていた。私がしゃべったのは、以前シノドスに書いたものとほぼ同趣旨。スライドはこれ。

会場になった「3×3 Labo」(「さんさんらぼ」と読むらしい)というのは、丸の内の取り壊し前のオフィスビルの空きスペースを使った、なんと表現していいかわからない不思議な空間だった。いくつかの部屋に分かれていて、個人的には和風の部屋とかが気になったのだが、イベントが行われたのはふつうのイベントスペースっぽい広い部屋だった。

イベントのタイトルからだと少しわかりにくいかもしれないが、斉藤さんも私も基本的にビットコインに対しては辛口の評価をしている。斉藤さんは技術的な面、私は経済的な面での問題を指摘し、ビットコインそのものよりもビットコインがきっかけとなって今起き始めている金融分野のさまざまなイノベーションに注目すべき、というあたりもほぼ共通していた。この見解はちょっと前に出たGSのレポートも概ね共通していて、それほど的外れだとは思わない。

とりあえず、私の話が予定より長引いてしまった(申し訳ない)以外はイベント自体は概ね順調だったのだが、後で聞いたら、怒って途中退席した人がいたらしい。確かに出て行ったっぽい人がいたような気がする。どうもビットコイン投資をしている人らしくて、なんでも遠くからわざわざ来て参加したのに、期待した話がまったく出てこないので怒って帰ったとか。イベント後の懇親会費を払い戻させて憤然と出て行った由。

ご期待に添えず申し訳ないといえば申し訳ないのだが、ファイナンスの教員としてひとことだけいわせていただくと、無駄にして怒るほどの金額を投じる際には事前に下調べをせよ、というのは投資の基本かと思う。私の主張はぐぐればすぐ出てくるはずで、何をしゃべりそうかぐらいは簡単に予想がつくと思うのだが。あと、自分が気に入らないものを見ない聞かないというのも、あまり投資に向いた行動スタイルではない。もはやお話する機会もないだろうから、投資の成功を陰ながらお祈りするしかないが、懇親会費を含めても2000円のセミナーに大儲けの秘訣を期待されたのだとすると、少々行く末を危惧しないでもない。どうかご無事で。

もちろん、私の予想がはずれる可能性は充分にある。今年は2014年ということで、私の話の中でもEPIC2014を取り上げた。2004年までの事実をもとに2014年のメディア状況を予測したアレだが、話題を呼んだ「グーグルゾン」はネタとしても、2004年の3年後に登場したiPhoneや、そこから始まったスマートフォン、タブレットといった携帯情報端末の爆発的な普及とその影響などをまったく予想できていなかったことなどを考えると、なんだそんな程度のものだったのかという感想を禁じ得ない。もちろん、だからといってEPIC2014を作った人々が無能だというわけではなく、そもそもこの領域ではほんの数年先を予測することすらきわめて難しいということだ。

ビットコインが世界中の多くの人々に普及して日常的に使われるようになったり、あるいはどこかの国で正式な通貨として認められたりして、その結果ビットコインが今後半永久的に大幅な値上がりをし続けていくといったバラ色の未来を予想しておられる方々が凱歌をあげる日がくるのかもしれないが、その節は私の無能を笑っていただくといい。少なくとも今の段階で、私にはそうはとても思えない。

(2014年4月20日「H-Yamaguchi.net」より転載)

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