小ネタ。一部界隈で話題になった、ウクライナのクリミア自治共和国の検事総長に就任されたナタリア・ポクロンスカヤ氏に関するこの件。「ナタリア・ポクロンスカヤ検事総長、日本で萌えキャラ化されて困惑【クリミア情勢】」

小ネタ。一部界隈で話題になった、ウクライナのクリミア自治共和国の検事総長に就任されたナタリア・ポクロンスカヤ氏に関するこの件。

ナタリア・ポクロンスカヤ検事総長、日本で萌えキャラ化されて困惑【クリミア情勢】」(ハフィントンポスト日本版2014年3月24日)

クリミアのナタリア・ポクロンスカヤ検事総長が、日本で美少女キャラクターとして描かれて人気になっていることに困惑している。「私には全く関係ありません。仕事の成果を評価してください」と話していると、ロシアのメディア企業「コムソモリスカヤ・プラウダ」が3月22日に報じた。

まあ当然といえば当然の回答ではある。ご当人は人気商売ではない専門職であり、かつ困難な時期に危険と目されるポストに就いて奮闘しているところであろうから、いかに褒められているとはいえ、失礼と思われてもしかたない話ではあろう。

以上をふまえてだが、ここで終わっては面白くないので、少しここから考えをふくらませてみる。

「萌えキャラ」というのは、pixivに投稿されたこのイラストであるらしい。

で、これがそのイラストの元となった記者会見時の映像。まあ確かに似ているといえば似ている。

pixivをぱらぱらと眺めてみると、他にもいろいろな方が描いておられるようだ。たくさんあるがそれっぽいテイストのものをいくつか置いとく。

最後のやつはどこかで見たようなキャラだがまあおいとく。確か他の記事では、検事総長は「私はポケモンではない」と発言した、とあったように記憶している。よく意味がわからんが、まあこの手のものにこれまで縁も関心もなかったのであろう。自分が「中身」で勝負していると思っているのに外見だけをもてはやされるのは不愉快であるにちがいない。私には想像がつかないが、外見に恵まれた方には同様の悩みがあると聞いたことがある。

もちろん当該イラストを描いた方はそんなつもりはなかったのではないかとは思う。むしろ応援したい、ぐらいに思っているかもしれない。折しもクリミアは大きな危機に直面している。上記記事にも、命すら狙われる状況と書いてある。

ならば応援するイラストを描けばいいのではないか、とシンプルに考えてみた。不幸中の幸い(というと不謹慎だが)で、絵になる「敵役」もいらっしゃる。あまり対決構図を煽るのもどうかとは思うが、今回の事態に関し、ウクライナ側に理があると考える人であれば、この2人で何か描けるものはあるのではないか。

そういう観点からみると、こういうのはやや不満が残るところだ。

もうちょっと何かあるだろうとぱらぱら見たが、どうもそういうのはあんまりないっぽい。ウクライナ情勢がらみでは、こういうのはいくつか見つかったが、数は圧倒的に少ない。

こちらも緊迫する台湾関係だといくつかあった。絵師ご自身が台湾の方だったりする場合もあるかもしれない。

そもそも政治ネタがpixivにはあんまりないようにみえる。いや別にないわけじゃないんだが、絵はともかく、内容がちょっとアレなものが多くて、ちょっと紹介するに耐えない。pixivユーザーの層がおおむねそういう方向性ということなんだろうか。プロだと某一人称が「わし」な方の作品はこっち方向なのかもしれないが、少なくとも萌え系ではないし、どうにも内輪受けというか、外に向かって主張をアピールしている感じではない。

政治系の諷刺マンガというのはマンガの歴史を考えると伝統的というか正統派というか、とにかくそういう存在であって、実際、今でもいろいろな雑誌に面白いものがよく載っていたりする。絵もさることながら、ネタとその切り口が勝負どころだ。ドギツすぎるもの、独善的なものは共感を呼ばない。自分たちの好みだけでなく、立場のちがう人たちにも共感してもらえるような工夫がほしい。

日本の萌え絵師の皆さんは、今こそこの世界規模の風刺漫画市場に参入すべきではないか。絵を描く人が内容も考えるというのが難しければ、人を分ければいいのかもしれない。それこそ『ヘタリア』みたいなのをうまく使うとなんかうまいことできそうな気がする。テーマはちがうがたとえばこんな感じの。これは動画だが、絵1枚でもけっこういろいろ表現できるのではないかと思う。

勝手に美少女キャラにされてご立腹のポクロンスカヤ検事総長も、ウクライナがんばれ、クリミヤがんばれみたいな方向だったら、少しは喜んでくれるかもしれない。あるいはこの件の歴史的背景を絵1枚で説明する、みたいなのでもいい。クールジャパンでいろいろ打ち出そうというご時世だし、政治風刺漫画の世界も萌え絵で席巻して「また日本人が」といわれるぐらいになると面白い。ビジネスにはなかなかしにくいだろうが、だからこそアマチュアの方々にはチャンス、ではなかろうか。

まあ、あまり大きな話ではないのでこのへんで。あとは、pixivで見つけた政治関連?の絵をいくつか置いとく。いやまじめな話、表現上の工夫で政治への関心が少しでも高まるのであれば、もっとこういうアプローチがあってもよさそうな気がする、と学習マンガで育った経験からつらつら思っている。

(この記事は、2014年3月25日の「H-Yamaguchi.net」より転載)

Les fanarts de Natalia Poklonskaya

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