【Buzzfeed日本版はウェブメディアの未来を占う】~元朝日新聞記者が新編集長に~

Buzzfeed日本版が、2016年のウェブメディアの進路を占う試金石となることは間違いないだろう。

Buzzfeed日本版の編集長に16日、朝日新聞デジタル編集部の元記者古田大輔氏が就任したことで、ウェブメディア界隈がにぎやかだ。新規参入により業界が活性化することは大変結構なこと。また、英国BBCも今月日本語ニュースサイトを開設した。海外初の広告ビジネスモデルだといい、こちらも他のウェブメディアを大いに刺激しよう。

Buzzfeedは米国発のバイラル・メディアであるが、その特徴は、政治経済海外などの硬派なニュースからエンタメ、ライフスタイルまで幅広くカバーしていることだろう。画像やビデオをふんだんに使い、SNSで拡散する、という典型的なバイラルの手法を取って成功し、月間2億ユニークユーザーを誇る。日本ではYahoo!ジャパンと組んだ。

さて、古田氏の古巣、朝日新聞はデジタル戦略で先鞭をつけてきた。Japan In-depthチャンネルに今年1月に出演した古田氏は、デジタル編集部にウェブデザイナーやエンジニアの他に、記者経験のある人材も含め、総勢50名近いスタッフが所属していると述べ、同社の力の入れようを語った。そのデジタル編集部は「デジタルジャーナリズム」を追求して来たわけだが、この概念は今でもあまり広まっていないようだ。当の朝日新聞は以下のように定義づけている。

「デジタルならではの新しい技術や多様な表現方法、双方向性を取り入れて、ユーザーに有意義な体験を提供(ユーザーエクスペリエンス)する報道。なかでも、収集したデータを分析し、分かりやすく視覚的に伝える「データジャーナリズム」は、オープンデータ拡大やビッグデータの蓄積もあり、欧米メディアを中心に取り組みが進んでいる。」

つまり、一般的によく聞く「データジャーナリズム」は「デジタルジャーナリズム」の中の一つの手法で、データを使って事象を読み解くものを指す、ということらしい。その「デジタルジャーナリズム」を世に知らしめたのは、2014年ソチ五輪のフィギュアスケート女子フリーが終了し24時間後に、浅田選手に関する記事と写真を印象的なデジタル表現で見せ大きな反響を呼んだ「浅田真央 ラストダンス」だ。

ツイッターやFacebookで拡散され、ページ閲覧数は公開後3日間で100万を超えたという。写真や記事、動画、グラフ、スライドショー、音声などの多様な表現を使って読者を引きつける「イマーシブ(没頭型)・コンテンツ」という手法を導入したことが新鮮だった。

ただ、その後朝日新聞が積極的にデジタルジャーナリズムを進めているかと言うとそうでもないように見えるのは残念だ。同番組で、同じ社内において、新聞紙面にデジタルジャーナリズムが反映されていない、と指摘すると、古田氏は「デジタルの分野でまだやれていないことを進めていきたい。」と意欲を示していたが、組織の大きい朝日新聞社内で思うように実現できなかったことが、Buzzfeedへの移籍の原因かもしれない。

いずれにしても、今後Buzzfeed日本版はこの冬の立ち上げに向け、積極的に人材を採用していく方針だ。古田新編集長も、「#BuzzFeedJapan は編集部員を募集してます。報道系の記者、バズライター、ライフライター、エディターなど興味ある方は連絡をください!」とツイッターで呟いている。新聞やテレビ、他のウェブメディアなどを中心に人材の流動化が起きそうだ。

古田新編集長は報道に力を入れる方針のようだが、米国版のサイトを見ればわかるように、Buzzfeedは硬派のニュースを流してはいるが、むしろ主なのは、その対極にある日常のちょっとした一コマの短いオモシロ動画や、軽いネタの「リスティクル(listicle)」と呼ばれるまとめ記事に力を入れているように見える。

オモシロ動画配信に軸足を置いた日本発のバイラル・メディアは一時次々と立ち上がったが今やほとんど姿を消してしまった。果たして日本のユーザーにBuzzfeedの手法が受け入れられるだろうか。

また動画なら、既に2012年にローンチした、1分程度の短い動画配信に特化したウェブメディア「ナウディス(Nowthis)」がある。ホームページを持たず、ツイッターやFacebook、Tumblr、INSTAGRAMなどのSNSに直接動画を流している、いわゆる「分散型メディア」だ。こうしたメディアが将来日本上陸したら、これもBuzzfeed日本版の強力なライバルとなろう。

一方、日本ではまだまだウェブメディアは活字中心だ。ハフィントンポスト日本版しかり、NewsPicsしかり。そうした中、一気に動画に力を入れたウェブメディアが勝ち進むかは不透明だが、Buzzfeed日本版が、2016年のウェブメディアの進路を占う試金石となることは間違いないだろう。

(貼られているリンクを見るには、http://japan-indepth.jp にて記事お読みください)

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