憧れの大横綱千代の富士

日馬富士の熱戦が終わった1週間後、千代の富士(九重親方)が停年まであと4年を残し、61歳の若さで旅立った。

大相撲名古屋場所は、第70代横綱日馬富士が13勝2敗で8回目の優勝。

ほとんど話題にならなかったが、「32歳の横綱」が優勝したのは、1987年九州場所の第58代横綱千代の富士以来、29年ぶり。2017年夏場所以降も現役の横綱だと、やはり千代の富士以来、29年ぶりの「33歳横綱」となる。

熱戦が終わった1週間後、千代の富士(九重親方)が停年まであと4年を残し、61歳の若さで旅立った。弟子の成長、大関稀勢の里の横綱推挙、第69代横綱白鵬の通算1000勝及び1048勝、優勝40回という大記録をこの目で見たかったはずで、非常に心残りだと思う。

私自身、千代の富士という力士は憧れの存在だった。小兵で筋肉質、絶対的な強さを引き立てる黒の締め込み、相手に立ち合いの変化を許さないほどの鋭い目つき、自身より重い力士を豪快に投げ飛ばす腕力、外掛けで相手の態勢を崩すうまさなど、その威厳、風格は"横綱の見本"といえた。

千代の富士の真骨頂といえる一番は、1989年九州場所の関脇寺尾戦だ。立ち合い、いつものように寺尾が激しい突っ張りで攻め続けるも、千代の富士は一瞬のスキを見逃さず、寺尾の体勢を崩し、豪快につり落とした。私としては、"横綱としての凄味を感じさせる"相撲に見えた。

九重部屋は第41代横綱千代の山が1967年に興してから、50年目の節目を迎えた。1977年に千代の山が急逝してからは、第52代横綱北の富士が井筒部屋(当時)を吸収合併させる形であとを継ぎ、1992年、千代の富士に譲った。

私は大横綱千代の富士を父と慕う佐ノ山親方(元大関千代大海)が九重部屋を継承し、今まで以上に盛り上げると信じている。

謹んで哀悼の意を表します。

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