日本最長距離旅客列車の半世紀

日本最長距離旅客列車の臨時寝台特急〈トワイライトエクスプレス〉が廃止された。次のタイトルホルダーはどの列車なのか?

日本最長距離旅客列車の臨時寝台特急〈トワイライトエクスプレス〉が廃止された。次のタイトルホルダーはどの列車なのか? 日本最長距離旅客列車の半世紀を振り返ってみよう。

■現在も破られていない1595.9キロ!!

寝台特急〈富士〉の車内で、富士山を眺められたのは上り東京行きのみ。

日本最長距離旅客列車の「距離」という点に関して、現在も破られていない記録は、東京―西鹿児島(現・鹿児島中央)間1595.9キロを日豊本線経由(小倉―大分―宮崎―鹿児島間)で走破した急行〈高千穂〉(1956年11月10日から)と寝台特急〈富士〉(1965年10月1日から)だ。

東京―西鹿児島間の所要時間は、急行〈高千穂〉が約31時間、寝台特急〈富士〉が約25時間もかかった(のちに所要時間が短縮されている)。特に寝台特急〈富士〉の下り西鹿児島行きは、夏の季節になると、"全区間で夕暮れを2度も眺められる"という珍しい列車だった。

当時、東京―西鹿児島間は急行〈桜島〉と寝台特急〈はやぶさ〉が鹿児島本線経由(小倉―博多―熊本―西鹿児島間)で走破しており、距離や所要時間とも短い。遠回りの日豊本線経由で全区間乗車した人は少ないと思われる。

山陽新幹線が全通した1975年3月10日のダイヤ改正で、急行〈桜島〉〈高千穂〉が廃止され、日本最長距離旅客列車は寝台特急〈富士〉のみとなる。しかし、一部区間の乗車率低下により、1980年10月1日のダイヤ改正で東京―宮崎間の運転に短縮され、王座陥落。新聞でも社会面に掲載された。

■次の日本最長距離旅客列車も東京―西鹿児島間

〈はやぶさ〉は日本最長距離旅客列車から、日本最速列車に変わった。

1980年10月1日のダイヤ改正で、日本最長距離旅客列車の座に就いたのは、寝台特急〈はやぶさ〉。東京―西鹿児島間1515.3キロを走破し、所要時間は約22時間だった。この列車は1958年10月1日に登場し、当時は東京―鹿児島間1518.5キロを結んでおり、王座に就く前のほうが若干長い。

国鉄は1985年3月14日のダイヤ改正で、寝台特急〈はやぶさ〉にロビーカーを連結し、乗客から好評を博す。今までの寝台特急は"息抜きの場"がなく、当時は斬新な車両だった。のちに、寝台特急〈富士〉〈北斗星〉などにも連結された。

しかし、1986年11月1日のダイヤ改正より、A寝台個室シングルDXが東京―熊本間の付属編成にまわされ、全区間を走破する車両がすべて2段式B寝台のみとなってしまう。個室利用客は熊本で別の車両に移動しなければならず、快適性が若干低下した。

分割民営化後、寝台特急〈はやぶさ〉は客車がJR九州の保有となり、1989年3月11日のダイヤ改正でB寝台個室ソロを連結し、サービス向上を図る。こちらも付属編成に連結された。

東京―九州間は航空機移動の定着やJR九州昼行特急の充実が進む中、寝台特急〈はやぶさ〉は東京―西鹿児島間を"乗り換えなしで結ぶ列車"として、愛用する乗客もいたが、乗車率の低下により、1997年11月29日から東京―熊本間の運転に短縮された。

■後年は札幌―大阪間24時間越え!!

日本最長距離旅客列車では唯一、関西発着だった臨時寝台特急〈トワイライトエクスプレス〉。

1997年11月29日から日本最長距離旅客列車の座に就いたのは、臨時寝台特急〈トワイライトエクスプレス〉で、大阪発札幌行きは1495.7キロ、札幌発大阪行きは1508.5キロを走破していた(大阪行きの距離については、急行〈高千穂〉、寝台特急〈富士〉〈はやぶさ〉と同じ1500キロ台をキープ)。札幌行きと大阪行きは函館本線の経由地が異なるため、走行距離が異なるのだ。

臨時寝台特急〈トワイライトエクスプレス〉は、"列車の旅"に特化したのが功を奏し、高い乗車率を誇った。日本最長距離旅客列車にふさわしい設備を整えており、王者の風格と貫録を兼ね備えた列車といえる。

2014年10月以降、北海道新幹線開業に向けた試験などの関係で、一部の日でダイヤ変更が行なわれ、大阪発札幌行きの所要時間が24時間41分となり、1980年の寝台特急〈富士〉以来、34年ぶりに"24時間越え"を記録した。

■将来の日本最長距離旅客列車は新幹線?

1000キロ以上の在来線長距離列車は、臨時寝台特急〈北斗星〉〈カシオペア〉のみ。

臨時寝台特急〈トワイライトエクスプレス〉の廃止により、日本最長距離列車の座に就いたのは、臨時寝台特急〈北斗星〉〈カシオペア〉で、上野―札幌間の距離は1214.7キロ。ついに1500キロの"大台"を割った。

臨時寝台特急〈北斗星〉は2015年8月下旬で完全廃止、臨時寝台特急〈カシオペア〉は北海道新幹線開業後の去就が注目されている状況だ。

N700系は、2005年に登場してから早10年。定期〈のぞみ〉は、この車両で運転。

仮に臨時寝台特急〈カシオペア〉が廃止されると、次代の日本最長距離旅客列車は東京―博多間(営業キロ1174.9キロ、実キロ1069.1キロ)の東海道・山陽新幹線〈のぞみ〉になり、昼行列車では初めての"王座"に輝く。

日本最長距離旅客列車は、1日1往復、時間をかけて走破し、車窓から流れゆく様々な景色が長距離を感じさせてくれた。しかし、新幹線はとてつもない速さがウリで、車体強度確保のため、座席の窓が小さくなった(N700系やE5系などでは、窓側席しか車窓を楽しめない)。車窓もトンネルや防音壁が多い。

現在、東京―博多間の定期〈のぞみ〉は1日下り30本、上り32本もあるので、特別感や味わい深さもない。今の新幹線に旅情を求めるのは、無理な話かもしれない。

Yahoo!ニュース個人より転載)

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