腑に落ちない日帰り出張

野々村竜太郎氏の不自然な政務活動費が問題となり、その責任をとって兵庫県議を辞職した。私は日帰り出張のある点に注目した。

野々村竜太郎氏の不自然な政務活動費が問題となり、その責任をとって兵庫県議を辞職した。私は日帰り出張のある点に注目した。

■サラリーマンでもハチャメチャな出張はしない

野々村竜太郎元兵庫県議の"号泣会見"は、全国的に大騒ぎとなった集団的自衛権の閣議決定報道をかき消し、さらに外国メディアでも"お笑いネタ"として報道されてしまった。兵庫県議会各会派は、辞職した野々村氏を虚偽公文書作成容疑、虚偽行使容疑で、兵庫県警に刑事告発したのは皆様も御存知の通り。

刑事告発が受理されたことで、兵庫県警は日帰り出張先の防犯カメラ映像をかき集めるなど、物的証拠を探している最中だと思う。

さて、2013年度日帰り出張の日程を見ると、過労で倒れる、うつ病にかかるなど、体の不調を訴えてもおかしくないレベルだ。サラリーマンでもハチャメチャな出張はしない。

■宿泊施設に泊まらない

野々村元県議の2013年度日帰り出張スケジュールを見ると、2013年4月17日から27日まで、奇数日は福岡、偶数日は東京に行ったという。しかも、すべて鉄道利用による日帰り。あまりにも効率が悪い。

例えば、関西から福岡、東京に"効率よく"出張する場合、下記の移動手段が考えられる。

1.新大阪(新幹線〈のぞみ〉〈さくら〉など)→博多(新幹線〈のぞみ〉〈さくら〉など)→岡山(寝台特急〈サンライズ瀬戸・サンライズ出雲〉)→東京

2.大阪国際空港(航空機)→福岡空港(航空機)→東京国際空港(羽田空港)→都内泊

3.新大阪(新幹線〈のぞみ〉〈さくら〉など)→博多(福岡市交通局空港線)→福岡空港(航空機)→東京国際空港→都内泊

4.大阪梅田(夜行高速バス〈ムーンライト号〉)→博多バスターミナル、博多(福岡市交通局空港線)→福岡空港(航空機)→東京国際空港→都内泊

5.大阪梅田(夜行高速バス〈ムーンライト号〉)→博多バスターミナル、博多(新幹線〈のぞみ〉〈さくら〉など)→岡山(寝台特急〈サンライズ瀬戸・サンライズ出雲〉)→東京

10日間にわたり、福岡と東京を行ったり来たりするのもおかしな話だ。例えば「前半福岡、後半東京」にするのが自然ではないだろうか。

特急〈こうのとり〉は、おもに新大阪―城崎温泉間を福知山線経由で結ぶ。

特急〈スーパーはくと〉は、全列車佐用に停車する。

2013年5月中旬以降は、城崎温泉と佐用(さよ)の日帰り出張を繰り返している。特に2014年3月は2日連続で城崎温泉に行っていたという。尼崎―城崎温泉間(福知山線経由)の距離は176キロ(営業キロ)で、特急〈こうのとり〉利用でも約2時間30分かかる。仮に尼崎8時21分発の特急〈こうのとり1号〉城崎温泉行きで出張先に行き、城崎温泉18時18分発の特急〈こうのとり26号〉新大阪行き最終列車で帰る場合、現地の滞在時間は約7時間となる。

■鉄道にこだわる理由とは?

日帰り出張については、ほとんど、もしくはすべて実行していない可能性が高い。

私が腑に落ちないのは、ほとんど鉄道しか利用していないことだ。なぜ、航空機、船舶、高速バス、宿泊施設を一切利用しなかったのか。

それは「名前」である。

航空機には搭乗者名簿、船舶(おもに長距離フェリー)には乗船名簿があり、宿泊施設には宿泊者カードに名前を記入する(インターネットカフェはポイントカードを掲示)。高速バスでもネット予約などでは、名前を入力しなければならない。つまり、虚偽の報告をすると、バレる可能性が高い。

一方、鉄道で「名前」を明かさないと購入できないのは、定期券、一部のトクトクきっぷ、クレジットカードの使用など。旅行代理店でも発売前のきっぷを申し込む際、名前の記入が必要だ。

野々村氏が鉄道利用にこだわったのは、"物的証拠が発見されにくい"という読みだと思う。JR西日本では、券売機でも新幹線などのきっぷを購入できるからだ。

多くの企業が鉄道の交通費を支給する場合、近距離乗車券については自己申告で済むが、それ以外は領収書を提出しなければならない。兵庫県議会が野々村氏を疑うのも当然と言えよう。

近年は鉄道、バス、タクシーの車内に防犯カメラを搭載する車両が増えている。ところが野々村氏が利用したと思われる列車で、車内に防犯カメラが搭載されている車両は、新幹線N700系のみ。彼が"新幹線出張"をとりやめた理由のひとつかもしれない。

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