「細かいこと」に気を留めなかった朝日新聞

FunDoの記事、 「『ここ空いてますか』混雑している新幹線の出来事を綴った老人の投書に賛否両論の声」が大きな反響を呼んでいる。朝日新聞が2012年12月27日に掲載した男性(当時63歳)の投書を3年後の今になってピックアップしたのだ

東海道新幹線。

FunDoの記事、 「『ここ空いてますか』混雑している新幹線の出来事を綴った老人の投書に賛否両論の声」が大きな反響を呼んでいる。朝日新聞が2012年12月27日に掲載した男性(当時63歳)の投書を3年後の今になってピックアップしたのだ(FunDo の当該記事は、2015年1月12日に掲載したものと思われる)。

男性の投書を拝見すると、静岡市にお住まいなので、東海道新幹線を利用したのだろう。

■ペットの"座席利用"はできない

男性は、乗車した列車の自由席に空席がないので、指定席車両に移り、席を求めた。こちらも「満席」という状況だ。すると、ある座席でバスケットらしきものを載せており、中には小犬が入っていた。隣の女性に空席の確認をしたところ、「指定席券を買ってあります」と一蹴された。

読者の中には、「新幹線でペットの座席利用は可能なのか?」という疑問を抱くと思う。

JR東海によると、ペット(全身が入るケースを使用。小動物に限る)の座席利用は認めていないが、普通手回り品料金(280円)を支払えば、車内に持ち込める。荷物と似たような扱いとなるので、乗客の足元に置いていただくことをお願いしている。なお、規約によって、ペットの乗車を断る場合もあるという。

女性がケース入りの小犬を座席に載せたのはいけない行為だ。しかし、「指定席券を買ってあります」と男性に一蹴したのは、小犬ではなく、"連れの人物の分"だと私は考える。その人物がトイレや通話などで席を外し、女性が見知らぬ客に坐らせないための"対策"だったと思う。もし、乗車時からケースに入れたペットを座席に載せていたら、車掌が女性に確認をするはずだ。

■子供は年齢に関係なく指定席の利用ができる

男性は、幼児が指定席に坐っている光景に戸惑いを覚えたようだ。子供料金は原則小学生に適用されるが、例外もある。下記を御参照いただきたい。

・乳幼児が指定席(普通車及びグリーン車)、寝台を利用する場合。

・幼児が単独で乗車する場合。

親御さんが幼児1人を1人分の座席に坐らせるのは、問題ない。特に4歳を過ぎると急激に成長するので、大人のヒザの上に載せるのは無理があると思う。

■どうしても坐りたい場合は、車掌に「指定席の空席有無」を問い合わせるべき

男性は自由席に戻り、座席に坐っている子供を見て、母親に「空いていますか」ときいてきた。子供を未就学児と思い込んだらしい。母親は子供をヒザの上に載せ、席を空けてもらった。"坐らせてもらえた"にもかかわらず、「居心地が悪い」と思うのだから、首をかしげる。

「どうしても坐りたい」彼のとるべき行動は、車掌に指定席(普通車、グリーン車)の空席有無を問い合わせること。空席があり、本人が同意した場合は、差額を払えばいい。満席の場合は、次の停車駅に到着後、自由席の空席を探すしかない。

■ただ載せただけの朝日新聞

男性の投書は、ただのグチであり、鉄道事業者ホームページ内の御意見コーナーに直接問い合わせをすべき内容だ。朝日新聞もこの投書のどこに心を打ったのか理解できない。読者が誤解しやすい内容をそのまま載せたのだから。

残念なのは、「ペットの座席利用は可能なのか」、「幼児の指定席利用は可能なのか」、「どうしても坐りたい場合は、なにをすればいいのか」に一切の疑問を持たなかったこと。イコール細かい点に注目しなかったことだ。「朝日新聞」というのは誰もが知っている大企業で、取材や問い合わせが容易にできるはず。フリーランスとは異なり、「信用と信頼を簡単に得られる」のが最大のメリットだ。

男性の投書を掲載するなら、有識者や鉄道事業者に上記の細かい点を確認し、紙面をさいて、読者にわかりやすく伝えるべきだった。朝日新聞の"細かいミス"により、掲載から3年たった今でも"色あせない話題"となってしまうのだ。

【協力:東海旅客鉄道】

Yahoo!ニュース個人より転載)

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