〈フライング東上号〉リバイバルカラー車両そろい踏み

2015年11月28日より営業運転開始。

青空に映える〈フライング東上号〉リバイバルカラー車両。

東武鉄道は東上本線(以下、東上線)全線開通90周年を記念して、2015年11月28日より、〈フライング東上号〉リバイバルカラー車両がデビューする。2014年も東上線開業100周年を記念して、8000系の81107編成と81111編成がリバイバルカラーに塗装変更されており、東上線、越生線からますます目が離せない。

■伝説の行楽列車、〈フライング東上号〉

〈フライング東上号〉は、1949年4月3日に登場した行楽シーズン向けの臨時特急で、当時は東上線池袋―秩父鉄道長瀞間を約2時間で結んでいた。ハイカラな列車愛称の由来は、イギリスの特急〈フライング・スコッツマン号〉にあやかったといわれている。当時は特急料金を設定せず、乗車券のみで利用できる列車だった。

当初は32系という深紅の車両を使い、翌1950年4月頃から早くも54系に交代。同年12月頃から車体塗装を「深紅のボディーと黄色い帯」から、「濃い青のボディーと黄色い帯」に変更されている。

東上線森林公園駅で飾られている53系〈フライング東上号〉の紙模型。

1952年3月頃から日光・鬼怒川方面の特急車両53系に交代。塗装も「濃い青のボディーと黄色い帯」を受け継ぎ、さらに歴代車両では最長の10年間務め、〈フライング東上号〉のイメージを決定づけた。座席はロングシートからクロスシートにグレードアップされた半面、運転区間を池袋―寄居間に短縮されている。また、1954年から特急料金を設定していたが、利用客の伸び悩みにより、わずか2年で乗車券のみで利用できる"お気軽列車"に戻る。

1962年12月頃から通勤形電車の78系、翌1963年11月頃からルーキーの8000系にバトンが渡された。車両の格が落ちたとはいえ、東上線の看板列車として、運行が続けられていたが、1967年12月16日で廃止。28年の歴史に幕を閉じた。最盛期は放送設備にレコードプレーヤーを接続して、車内に流麗な音楽を流すサービスのほか、アナウンサーによる沿線の見どころ、香水の香りを楽しむなど、"ゆとり"重視の列車だったという。

あれから48年、50090系の50092編成と、8000系の8198編成が〈フライング東上号〉リバイバルカラー車両として、もうひとつの"昭和"がよみがえる。

■東武鉄道初のフルラッピング車両となった50092編成

50092編成は東上線池袋―小川町間で運行。

50090系は定員制列車〈TJライナー〉用の車両として、2008年6月14日にデビュー。下り列車のみ設定され、好評を博している。2016年春から上り列車も設定される予定だ。上り列車の乗車整理券が410円(ふじみ野のみ下り列車と同じ310円)としているのは、着席保証区間が全区間に及ぶからだという。参考までに下り列車の着席保証区間は、池袋―ふじみ野間のみ。ふじみ野から先は乗車券のみで利用できる。

さて、50090系はアルミの無塗装車体なので、2015年11月21日から23日にかけて森林公園検修区でフルラッピングが施された。この手法は東京メトロの銀座線用1000系などで用いられており、塗装に比べ費用を節約できるほか、環境負荷低減のメリットがある。

50092編成のフルラッピングで、もっとも目立つのは、フロントガラスの一部も対象にしたこと。黒から濃い青に変えたことで、後述する8198編成よりも強烈なインパクトを放つ。

特別仕様の車内広告。

客室内は、東上線の往年の姿や車両の画像をふんだんに使用した「おかげさまで東武東上線全線開通90周年」のマルチ広告を掲出する。

なお、50092編成は、アクシデントによる車両運用などの変更がない限り、同年11月28日の「東武東上線全線開通90周年記念ツアー」(団体列車)直前に池袋へ回送されるまで、森林公園検修区で留置される。

■"4色目"の8000系

8198編成は東上線小川町―寄居間及び越生線で運行。

8000系は1963年秋に登場し、20年間にわたり712両が新製された。当初はロイヤルベージュとインターナショナルオレンジのツートンカラーだったが、1974年からセイジクリーム、1985年からジャスミンホワイトをベースに、ロイヤルブルーとリフレッシュブルーの帯に装いを変え、現在に至る。

先述した通り、8000系は〈フライング東上号〉に充当されていたが、塗装はツートンカラーだった。今回の〈フライング東上号〉リバイバルカラーは、8000系にとって、"新色(4色目)"となる。

塗装作業の様子(東武鉄道提供)。

〈フライング東上号〉リバイバルカラーに抜擢された8000系は8198編成で、2015年11月9日から12日にかけて、南栗橋車両管区で塗装変更を受けた。既存のリバイバルカラーと同様、ヘッドマークを交換できるよう、先頭車の貫通扉にサボ受けを設置されている。

11月14日に日光線南栗橋―新栃木間1往復で試運転をしたのち、森林公園検修区へ。客室は特段の変更もなく、広告も従来通り営利中心となる。

2015年10月末現在、広義の8000系(東武博物館所有8111編成、秩父鉄道ATS装備車、3両ワンマン車の800系と850系を含む)は、66編成270両在籍している。このうち、森林公園検修区所属車は、4両ワンマン車のみ12編成48両が在籍しており、東上線小川町―寄居間及び越生線で活躍している。

■車体側面にもこだわり

東武鉄道の社紋は創業時に制定された。

〈フライング東上号〉リバイバルカラーの車体側面には、東武鉄道の社紋が各車両の片端に貼付されている。現在は東武グループのロゴ制定に伴い、社紋つき車両が見られなくなったので、懐かしさを覚える。特に50090系は車両番号の位置を片端付近の戸袋から車体中央に変更されており、徹底的なこだわりようだ。

翼を広げた側面マーク。

行先表示器の周囲に両翼のマークを貼付。〈フライング東上号〉にも掲出されたマークで、今回のリバイバルカラーでは、一部アレンジしている。

〈フライング東上号〉リバイバルカラーは、冒頭で述べたとおり、2015年11月28日より営業運転を開始。両車とも同日の「東武東上線全線開通90周年記念ツアー」のほか、定期列車の運用にも就く。

なお、8198編成は11月28・29日とも、東上線小川町―寄居間で運行される予定だ。

【協力:東武鉄道】

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