休憩料金16,000円のすごいラブホ!? これはもはや『高級リゾートホテル』だ!

『ホテル』と名のつく施設はさまざま。外資系ラグジュアリーホテルからビジネスホテル、カプセルホテルなど、「宿泊できる施設=ホテル」ともいえそうだが、宿泊ではなく数時間の休憩利用に主眼の置かれた、いわゆる『ラブホテル』という業態もある。これは男女2名での異性同伴利用が想定された施設といえるが、実はラブホテルの法令上の定義は細かく決められている。

『ホテル』と名のつく施設はさまざま。外資系ラグジュアリーホテルからビジネスホテル、カプセルホテルなど、「宿泊できる施設=ホテル」ともいえそうだが、宿泊ではなく数時間の休憩利用に主眼の置かれた、いわゆる『ラブホテル』という業態もある。

これは男女2名での異性同伴利用が想定された施設といえるが、実はラブホテルの法令上の定義は細かく決められている。

例えば、旅館業法上ではホテル営業や旅館営業に該当することになるほか、風俗営業法(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)上の規制や各自治体による条例などでもその定義は細かく定められている。さらに、実態はラブホテルであるものの、ホテル営業や旅館営業としてのみ届け出された施設などもあり、詳述は避けるがその実態は多様化しているのが現状だ。

最近では、ラブホテルという露骨な表現は避け、『ブティックホテル』や『レジャーホテル』などという呼称が用いられるようになった。

筆者はホテル評論家として業界誌への連載などをいくつか持っているが、その中で『レジャーホテル』というタイトルのラブホテル業界専門誌への連載もあり、この業態について詳しくリサーチや取材などする機会もある。

ここでも『レジャーホテル』という表現を用いるが、男女同伴といった"本来の目的"とは異なる利用がなされる、まさに"レジャー"という表現が言い得て妙という施設も多く、日々進化している業態であることを改めて認識させられる。たとえば、カラオケが無料だったり、VOD(ビデオ・オン・デマンド)で映画も見放題、充実したルームサービスなどで女子会等でも利用されるケースがあるという。また、防音にも秀でていることから、楽器練習や執筆などで利用されるケースもあったり、全室にサウナやジャグジー、果てや露天風呂など充実したバスルームを設ける施設が多く、癒しをテーマにした施設など、多様化しているのがこのレジャーカテゴリーの特徴でもある。

筆者のホテル評論は、高級ホテルからビジネスホテル、簡易宿所(カプセルホテル)、そしてレジャーホテルまで『ホテル』と名のつく施設をその対象としており、主に利用者目線からの快適な滞在に資する施設か否かを重視している。

2014年1月1日からは『365日365ホテル』というミッションを遂行中で、デラックスホテルからエコノミーホテル、レジャーホテルまで毎日異なる様々なカテゴリーのホテルを利用することがルールとなっており、全ホテルを60項目のチェックリストを用いて採点、ホテルの実名と得点を『365日365ホテル(上)』(マガジンハウス)を上梓しレポートしているが、レジャーホテルカテゴリーの施設がデラックスホテルの得点に肉薄する例すらある。

最近取材した中で、特に驚いた施設が東京都国立市にある『WATER HOTEL S』(ウォーターホテルエス)。

レジャーホテルは高速道路のインターチェンジ付近に密集するケースが多く、こちらも中央道の国立府中インターチェンジ至近に位置する。外観はいわゆるラブホテルといった"淫靡な雰囲気"は皆無だ。

WATER HOTEL Sという名のとおり、至る所で水をモチーフにした設備や仕掛けがあり、客室で供されるミネラルウォーターにまで『水』にこだわる。

その客室はスタンダードからデラックス、スイートまで様々なタイプを設けており、最安の客室で休憩利用が6,900円から、平均で9,000円から10,000円。

さらに、最上級カテゴリーの『フォーシーズンズスイート』になると15,000円から、宿泊はなんと30,000円オーバーという、この地区としては、というよりも都心のシティホテルと肩を並べる料金帯の最高級クラスレジャーホテルといえる(写真はフォーシーズンズスイート)。

取材当日は外観から各客室、システマティックなバックヤードまで見学させていただいたが、驚きの連続であった。

仮にレジャーホテルが"ラブホテル"を意味するワードだとしたら完全に間違っている。システマティックで機能的なバックヤードに支えられた、徹底したゲスト目線のデイユースも可能な『アーバンリゾートホテル』である。

フォーシーズンズスイートでは、60インチLED液晶3DTVを採用。浴室にも20インチのTVやスチームサウナブースも備える。

ルームサービスの供食体制も感動的で、高級シャンパンからワインが市価と大差ない価格で提供されている。

和食・洋食バラエティに富んだメニューは厳選された食材で提供している。原価率はなんと60%にも達するとのことだ。

このルームサービスの料理を目当てに訪れるゲストが多いというのも頷けるクオリティだ。

ルームサービスの利用率は、なんと92%を超えるという。

客室の入り口付近はルームサービスワゴンが余裕を持って置けるスペースが確保されており、スタッフと顔を合わせることなく料理をピックアップすることが可能だ。

駐車場には、品川ナンバーのベンツ、ポルシェやフェラーリなどが多いのも特徴的。都心からまさに「レジャー」に訪れる人が多いということだろう。

一般的にレジャーホテルの客室は、その収益を考えても1日4回転以上が標準といわれるが、1日2~3回転に抑えているという。1組の平均利用単価は4万円を超え、15万円以上を支払うゲストも多いとか。まさに『富裕層向けレジャーホテル』ともいえそうだ。

ホテルサービスは、ハード・ソフト・ヒューマンといわれるが、人的サービスのないこの業態の究極を知るにつけ、妙な先入観にとらわれていたことに気付かされる。

『サービスとは何か』

人間の"本能"に根付き直結する業態だけに、その解を導き出す努力にはリアリティがある。

文:瀧澤信秋/ホテル評論家・Hotelers編集長

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