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2018年02月01日 16時45分 JST | 更新 2018年02月01日 16時45分 JST

世界で活躍する日本人若手デザイナー3名に聞く、プロダクトの今、そして未来

3人へのインタビューを通じて感じたのは、体験を通して心が動いた瞬間をつかむ彼らの感度の高さ。

Houzz | 土橋陽子

日本も海外も同じ地平でとらえ、気負わずまっすぐにものづくりに励む若い才能、その活躍に見る、プロダクトデザインの新しい時代。自身もデザイナーとして活躍する筆者によるレポートです。

多くの日本人デザイナーが、海外のブランドから新製品を発表したり、ミラノ・サローネの「サローネ・サテリテ」に代表される自主的なプレゼンテーションを行ったり、世界的に権威あるデザイン賞を受賞したりなど、デザインを切り口に世界で存在感を増してきている。海外で発表した最新のデザインアイテムが、秋のデザインウィークの時期に東京でも見られるような、ワールドワイドな発表のサイクルもできつつある。

Houzz | Leonora Sartori

一方、少子化や新設住宅着工戸数の減少に伴う市場の縮小など、国内のインテリア業界の勢いは、新興国のそれとは比べものにならないのが現状。また、デザインを専門的に扱う媒体も年々減りつつある。

しかし数年前よりも、一般の人々のインテリア全般に対する関心は、確実に高まっている。加えて情報源は、親近感をもちやすいSNSや個人のブログに移行している。

そういった時代に、真摯にものづくりに取り組むデザイナーのありかたは、どう変化していくのだろうか? そこで今回は、今後の活躍に注目したい若手デザイナー3名に話を聞き、その活動についてご紹介する(文中敬称略)。※以下、写真はデザイナー提供

Houzz | 土橋陽子

地元で目にした藍染めから発想、デザインした家具が世界へ
ソニーのインハウスデザイナーからフリーランスでデザイン活動をする、横関亮太(Ryota Yokozeki )。 未来に残したいデザインアイテムを世界中から集めている「ヴィトラ・デザインミュージアム」のパーマネントコレクションに選ばれた《AIZOME chair(アイゾメチェア)》(写真右)のストーリーから紹介しよう。

座面と足や、背もたれのジョイント部をシームレスにつなぐことで、藍染めされた木とコルクの調和をしっかりと感じることができる。またコルクの座面は、内側にオフィスチェアで使われるメッシュを使い、やわらかい座り心地を実現。違う素材を、同じ藍で染めることで生まれる風合いをデザインの要に活かした、凛とした中にもどこかしら愛嬌のある佇まいの椅子である。

Houzz | 土橋陽子

面白いのは、藍染め家具シリーズの開発が、経済産業省など行政が取り組む地方創生の文脈ではなく、横関による完全な自主プロジェクトに端を発するという点。岐阜県郡上市の祭りで使う下駄のデザインを手がけていた際に、鼻緒に藍染めを使うため訪れた〈渡辺染物店〉で、ある "発見" をする。

Houzz | 土橋陽子

「藍を混ぜるのに使われていたレードルが、プラスティック部分と木のハンドル部分で、違う質感で染まった美しさに感動し、布以外のものを染めてみたいと思った」。この "発見" から、さまざまな素材を試して作り上げた〈AIZOME furniture〉シリーズを、2016年ミラノ・サローネの若手登龍門的な展示スペース「サローネ・サテリテ」で発表したことがきっかけで、先述の通り《AIZOME chair》が、「ヴィトラ・デザインミュージアム」の永久収蔵品となった。

Houzz | 土橋陽子

こちらは、一枚のメタルシートを曲げ加工で構成した、Foldシリーズの《Fside table》。Foldシリーズは、2017年春のミラノ・サローネで初出展の後、秋の「DESIGNART(デザイナート)2017」で発表された。非常にシンプルな作りながら、空間に溶け込みつつ存在感のある効果的な形状をしている。ある角度からはボックスに、別の角度からは薄く軽快に見える両面性がユニークだ。スツールとしても使える堅牢性もあり、スリットを活用してコードマネジメントも可能。中にモノをディスプレイすることができ、2つ互い合わせでボックスにして使うことで、中側に隠して収納もできる。

「使う人の思うように使ってほしいですね。僕も驚くような使い方を見てみたい。特に《Fside table》はその想いで作りました」と横関は語る。

Houzz | 土橋陽子

Foldシリーズの《F shelf》はメタルシートを曲げ加工した構造体と木天板によるシェルフシステム。AIZOMEシリーズとは異なる、プレイフルなビジュアルも楽しい。メタルの構造体はブックエンドとしても機能する。構造体の数、位置を変えることで、フレキシブルにさまざまなサイズに対応したシェルフを作ることができる。使う側に工夫する余白を残しつつも、家具としての完成度が高いのが魅力的だ。

プロダクトデザインを通じて伝えたいのは、「目の前の物事をより良くすること。新しい体験にいざなうプロダクトには、体験価値を十分に引き出す形を与えることを意識して、デザインしています。でき上がったプロダクトを見て触れて、それを少しでも感じてもらえれば幸いです」。そんな彼が暮らしてみたい空間は、「新しいモノと古き良きモノが共存する生活空間」だそうだ。

Houzz | 土橋陽子

1985年、岐阜県関市生まれ。金沢美術工芸大学 製品デザイン学科を卒業後、ソニー株式会社クリエイティブセンターに勤務(2008〜2017)。2016年イタリアのミラノ・サローネのサテリテで発表した藍染めを施した家具シリーズの《AIZOME chair》が、世界で最も重要なデザイン博物館とも言われる「ヴィトラ・デザインミュージアム」のパーマネントコレクションに選ばれる。2017年にRYOTA YOKOZEKI STUDIO設立、現在に至る。

Houzz | 土橋陽子

新しいビジョン、仲間や社会をつなげるデザイン活動
大学卒業後、スイスのECAL(ローザンヌ州立美術学校)に留学した後、フリーランスでデザイン活動をする、岩元航大(Kodai Iwamoto)。 岩元のデザイン活動は、言葉を選ばないで言うと「現代の手工業」的な要素が強い。それは、現在のデザイン活動に至った経緯にも所以するのかもしれない。

岩元の卒業したスイスのECALは、工房が充実しており、金工・木工はもちろん最新の3DプリンターやNC加工機などの立体造形機も備えられていたそう。現役デザイナーが務める講師からの課題に対して、実際に自分の手を動かしながらアイデアを形にしていく技術が身についたと言う。

「自分の強みはモノを作るプロセスまで介入して造形することにあると思う」と語る岩元は、都内のシェア工房や実家のガレージでモックアップ(試作のための模型)やプロトタイプの製作を続けている。

スイスに移る前から、国内外の家具見本市に参加したり、家具メーカーと商品開発を行っていたりした経緯があり、フリーランスとして活動を続けて現在に至る。

Houzz | 土橋陽子

活動のひとつに、岩元が実行委員長を務める、 ECALの友人たちとともに立ち上げた「RE-IMPORTATION」がある。国境を越えて活動する若手日本人デザイナーにスポットを当てた展示会で、第1回目は2016年に南青山の〈イチーズギャラリー〉で、第2回目は2017年10月に六本木AXIS地下1階の〈SYMPOSIA〉にて開催された。

展示されているのは、留学経験のある仲間たちの自作のプロトタイプ。その完成度の高さは目を見張るもので、新しいビジョンをもった若いデザイナーたちと社会を結ぶ架け橋となりうる展示内容だった。現在、ミラノ・サローネへの出展に向けて、随時スポンサーを募集中だ。

Houzz | 土橋陽子

写真は、その「RE-IMPORTATION」で発表した、大阪に本社のあるステンレスメッシュメーカーの〈アサダメッシュ株式会社〉と共同開発したランプ《Quartz Lamp(クオーツランプ)》。

電球を覆うのは、髪の毛よりも細いステンレス繊維で織られた布。オーガンジーのようになめらかで美しい光沢をもち、スイッチを入れるとシェード内で乱反射する。まるで水晶が太陽の光を受けてキラキラと輝くような、複雑な効果を生み出すポエティックな照明。とても軽く、複数を吊るすことで大胆な空間演出が期待できる。目下、商品化に協力してくれる会社を探しているとのこと。

Houzz | 土橋陽子

グッドデザイン賞2017を受賞した《bentstool(ベントスツール)》は、〈マークスインターナショナル〉のオリジナルブランド〈duende〉のアイテムとして、IFFTにて発表。多くのバイヤーや関係者からの好評を得た。玄関で靴ひもを結んだり、ちょっと休憩したいときの腰掛けとしても、コンクリート打ちっ放しの壁や、シンプルな雰囲気の空間のアクセントとしても映える。

さまざまな加工実験をする中で偶然生まれた形状が、スツールの座面と脚を固定する構造にマッチしていることに気づき、デザインに落とし込んだシンプルな形状。結果として一般的な量産方法を意識した椅子には見られない風合いが「けれん味のない味わい」として効いている。

「頭の中で構想していたものが実際に手を動かして作ってみるとなかなか上手くいかない葛藤と、トライ&エラーを繰り返すことで理想に近づき、やっと完成させた時の喜びの両方がものづくりにはあります。その楽しみを多くの方に知ってほしいです」と岩元は言う。

自身が理想とする生活空間を聞くと「仕事のときは工房にこもり、木くずや鉄くずにまみれて手を動かしながら物を作るような生活がしたいです。また、私一人ではなく工房をシェアするような仲間や、一つの空間でさまざまな分野のクリエイターとともに仕事をするようなシェアオフィス&工房を作っていきたいです」との答えが。

Houzz | 土橋陽子

1990年、鹿児島県生まれ。2009年神戸芸術工科大学プロダクトデザイン学科入学後、デザインプロジェクト「Design Soil」に在籍し、イタリアのミラノ・サローネやフィンランドのハビターレ等、海外の展示会に多数参加。2016年にスイスのEcole cantonale d'art de Lausanne(ECAL)のMaster in Product Designを卒業後、現在は東京を拠点に、​精力的に活動を行っている。

撮影/加藤孝司(Takashi Kato)

Houzz | 土橋陽子

企業内とフリーランス、両方のデザイン活動を並行する独自のスタイル
三菱電機のインハウスデザイナーでありながら、個人でもデザイン活動をする松山祥樹(Yoshiki Matsuyama)。彼の一つの顔、「総合電機メーカーのインハウスデザイナー」としての活動から紹介する。

2013年に社内でスタートさせた、BOP層(開発途上国 の低所得階層)の暮らしに向けたデザインプロジェクト「Small World Project」。調査としてインドネシア東部の島を訪れた際に、バイクで村々を巡って魚を売り回り暮らす人々の活気あふれる姿に魅力を感じる一方で、課題を発見する。

「魚が炎天下の中ですぐに傷んでしまったり、売値が落ちたり、また食中毒の原因になったりしていることを知って、まずはこの課題にアプローチしてみようと思いました」。

Houzz | 土橋陽子

写真は、現地インドネシアの魚売りの人々の生活を目にして思いついた、バイクのバッテリーを利用した冷蔵庫。

写真のものとは異なるが、初期の現地での検証用プロトタイプは、帰国してから3ヶ月ほどで、アイデアの検討から、製作までを行った。その開発スピードは、企業のもつ設備や知恵をフル活用できるインハウスデザイナーの強みとも言えるだろう。

「実際に動く試作機を3台制作し、現地で数ヶ月間使ってもらったところ、魚が新鮮なまま保存できることによって、これまでよりも長く働けたり、または遠くの村に売りに行けたりと、彼らの日々の収入に増加の兆しが見えた」と松山。

現地の暮らしのベースとなる所得を向上させることは非常に重要。それに貢献できる製品として、現地の方々には大変喜ばれた。

Houzz | 土橋陽子

写真は、2017年10月の「DESIGNART 2017(デザイナート2017)」で発表された試作品。現地の人と一緒にプロトタイプの評価や実験を行った。作ったものを与えるだけではなく、ブラッシュアップのプロセスをユーザーとともに行うことを大切にしたというのが興味深い。

また、デザイナートではさらに一歩進めた提案をしていた。同じ形状のものを、まったく異なるシーンに広げることで、現地の人が冷蔵庫をより安く買える仕組みづくりだ。

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DESIGNART 2017報告:日々の暮らしをエモーショナルに彩るデザインとアート

Houzz | 土橋陽子

「リビングのソファサイドや、寝室、テラスなどに置いて使うようなモデルを、一緒に提案しています。キャンプやレジャーなどにも使っていただけると思います。このモデルも、基本的にはインドネシアの魚売りのためのモデルと同じ造形で構成されており、同一の生産設備で製造されることをイメージしています。金型をはじめとした生産設備が共通化でき、また利用シーンが広がり生産台数が増えることで、現地の人々へもより安価に提供できないかと考えています。まったく異なるシーンを結びつける一つのカタチをデザインしました」と松山。

同じ形状でも、仕上げやカラーリングを変えることで、たとえば都会のエグゼクティブのベッドサイドに置くような小さな冷蔵庫に。インテリアにもなじむ美しい仕上がりが目を惹いた。

Houzz | 土橋陽子

ターニングポイントになった作品の一つ《コリネット》。2011年、富山デザインコンペティションでのグランプリ受賞をきっかけに、〈ナガエプリュス〉から商品化された。アルミニウムの冷たい質感と大きな曲面が美しい、鋳物の魅力を存分に引き出したマッサージ器。

日本の大企業のインハウスデザイナーでありながら、個人のデザイン活動も並行して活動している稀有な立ち位置についてはこう語ってくれた。「学生の頃からコンペなどをきっかけに、商品のデザインなどをさせていただく機会があり、その中で現在の会社に所属しましたので、自然と個人でのプロジェクトとインハウスでの仕事が並行するような形となりました」。

Houzz | 土橋陽子

2014年、次世代クリエイターの国際コンペティション「LEXUS DESIGN AWARD」を受賞し、デザインイベント「AnyTokyo」で発表した《SkyLighthouse》は、松山のもう一つの顔を見せている。

純水で満たした円形のアクリル容器の中に、僅かにアクリルの微粒子を混入。空が青く見えるレイリー散乱現象を再現した光のオブジェ。人工照明を太陽光代わりに、見る角度や光の透過距離によって、中身が暁や夕焼け時のようなオレンジ色のグラデーションに染まる。

「いいな、と思える理由をディベートのように戦わせる必要はない。美しい、と感じたり、なんかいい、と思ったりした感覚を大事にして、それをカタチにすることにも意味はある」という松山らしい作品だった。

「すでにこれだけモノがあふれた世界にあってもまだ、自分がこれまで気付きもしなかったモノの在り方に触れて、気持ちが動かされることが多々あります。自分自身が気に入って、大切にしたいと思えるプロダクトに出会えるということは、とても豊かで、素敵なことだと思うので、誰かにとってのそのような価値を、これからの仕事の中で創り出していければと思います」。

自身が理想とする生活空間は「どちらかというと、静かでのんびりとした雰囲気の場所が好きなので、なるべくサッパリとした空間が良いですが、猫か犬かは、一緒に暮らせたらいいなと思います」とのこと。

Houzz | 土橋陽子

1987年神奈川県横須賀市生まれ。2012年法政大学デザイン工学研究科修了後、同年より三菱電機株式会社デザイン研究所に勤務。並行して取り組んでいる個人プロジェクトでは、伝統工芸や地方の地場産業などの素材や技術を活かした生活雑貨などを幅広く手掛け、国内外でデザインを発表。富山プロダクトデザインコンペティションや、LEXUS DESIGN AWARD、グッドデザイン賞などを受賞。

3人へのインタビューを通じて感じたのは、体験を通して心が動いた瞬間をつかむ彼らの感度の高さ。そのつかんだ感動を逃さずに、手を動かしながら、デザインに落とし込んでいく姿勢にあると感じた。

海外に出て行くことに躊躇しない、新しい世代のデザイナーが世界で活躍していく姿を見るのは、非常に心強く、また楽しみでもある。世界には優れたデザイン専門誌も数多くあり、そこで「デザインを切り口に」存在をアピールすることは、突破口となるのではないだろうか?

彼らのものづくりへの気負わないまっすぐな視線は、国内・海外を分け隔てず同じ地平でとらえている。その自然体の力強さが人を惹きつけ、高い評価につながっている。こういう才能やその活動の一端を知ることが、一人でも多くの人の、インテリアプロダクトへの興味や愛着を育てるきっかけとなれたらと願う。

文:Dobashi Yoko
記事提供:Houzz(ハウズ)

(2018年1月12日 Houzz『世界で活躍する日本人若手デザイナー3名に聞く、プロダクトの今、そして未来』より転載)