ADBは、政府から独立した人びとの発言をアゼルバイジャン政府が激しく弾圧するなかで、同国で開催される。同行幹部は原則を曲げることなく、アゼルバイジャン政府に対し、NGOとマスコミの活動を妨害する規制の全廃を強く働きかけると同時に、これらの組織が自由に活動してこそ、持続可能な開発が実現する点を強調すべきだ。
(ワシントンDC)アジア開発銀行(ADB)と出資各国は、来週開かれる同銀の年次会合でアゼルバイジャン政府に対し、活動家と独立系団体の弾圧停止を強く求めるべきだと、ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日述べた。国際金融機関の1つであるアジア開発銀行(本部マニラ)は、2015年5月2日~5日にアゼルバイジャンの首都バクーで第48回年次総会を開催する。
ADBには、透明性、影響を受ける人びとの参加、そしてアカウンタビリティが持続可能な開発の鍵であるとの認識がある。しかし今回の年次総会は、アゼルバイジャン政府が政府を批判する独立系組織に前例のない弾圧を加えるなかで開催されることになる。
「ADBは、政府から独立した人びとの発言をアゼルバイジャン政府が激しく弾圧するなかで、同国で開催される」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチの国際金融機関担当上級調査員ジェシカ・エヴァンスは述べた。「同行幹部は原則を曲げることなく、アゼルバイジャン政府に対し、NGOとマスコミの活動を妨害する規制の全廃を強く働きかけると同時に、これらの組織が自由に活動してこそ、持続可能な開発が実現する点を強調すべきだ。」
昨年アゼルバイジャン政府は、独立系活動家やジャーナリスト数十人を拘束した。容疑はでっち上げだった。今年4月には、中心的な活動家と同国で最も著名な人権派弁護士の2人が、金融犯罪に関与したとして同じ政治的動機に基づき別々に有罪判決を受けた。活動家には6年6ヶ月、弁護士には7年6ヶ月の刑がそれぞれ宣告された。
当局はまた、NGOを対象に一連の過酷な新法を実施している。海外のドナー団体は政府の認可制となった。補助金を受けるには、そのつど政府の許可が必要だ。当局はさらに50団体以上の銀行口座を凍結し、場合によっては職員の口座も対象とした。こうした個人や組織の多くが、政府の透明性とアカウンタビリティ、公的な議論の促進、報道の自由、選挙監視、法の支配といった分野で活動していた。政府は開発団体も標的にしている。
ヒューマン・ライツ・ウォッチは2月、中尾武彦ADB総裁宛に書簡を送り、バクーでの年次総会を控え、同行がこうした事態に対処するためにとるべき重要な一連の措置を勧告した。「貴行が政府と共同し、独立系組織が今回の年次総会に実質を伴ったかたちで自由に、かつ報復を恐れずに出席することが保証できなければ、ADBはバクーでの年次総会を取りやめるべきだ」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。多くの活動家が獄中または亡命しているため、総会に参加可能な独立系の国内組織はほとんど存在しない。
ADBは年次総会の開催国選定に関するガイドラインを定め、同行が掲げる原則を遵守する国で開催されるようにすべきだと、ヒューマン・ライツ・ウォッチは指摘した。
アゼルバイジャンは1999年にADBに加盟し、インフラ整備の基金に15億米ドル(1,800億円)を超す資金を受け取っている。ADBによれば5月の年次総会では、政府職員、ビジネス界のリーダー、投資家、ジャーナリスト、市民社会の代表者など3,000人が参加する。ADBの最大の出資国は日本とアメリカだ。
「ADBの最大出資国である日本とアメリカには特別の責任がある。同行の原則を持ち出すことで満足せず、政治的動機に基づく容疑で獄中にある活動家やジャーナリストの即時無条件釈放を求めるべきだ」と、前出のエヴァンス上級調査員は述べた。「アゼルバイジャン政府は、持続可能な経済開発を目指すと主張する一方、政府に言行一致を求めるのにふさわしい人びとを弾圧している。こうした不誠実な態度がしっかり問われなければならない。」
(2015年4月30日「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」より転載)