BLOG
2014年04月15日 16時22分 JST | 更新 2014年04月15日 16時48分 JST

彼女に送ったオリジナルミックステープにどんな曲を入れましたか?

いつだったか、嫁がぽつりと言った。「オトコって、なんで付き合うと、必ずと言っていいほど、好きな曲を入れたテープをくれるのかしら」それを聞いたのは結婚して10年以上経ってからだったから、生臭い感じがしたわけではないのだけれど、なんだかがっかりした気になったことを覚えている。

 

  いつだったか、嫁がぽつりと言った。

 「オトコって、なんで付き合うと、必ずと言っていいほど、好きな曲を入れたテープをくれるのかしら」

 それを聞いたのは結婚して10年以上経ってからだったから、生臭い感じがしたわけではないのだけれど、なんだかがっかりした気になったことを覚えている。

 つまり、たしかに、20代の僕は、嫁にオリジナルミックスのテープをつくってプレゼントしたのだけど、そのときは嫁は凄く喜んでいるように見えたはずだし(というのも渡した時のことを覚えていないのでそう書くしかないのだが)、きっと何度も聴いてくれただろうなと、勝手に思っていたのだ。

 テープを作ることはそれなりに気合の必要なことだったし、まさか、嫁のテープコレクションの『あまり聴かない』グループのなかに、僕の渾身のミックステープが僕以外のオトコどものつくったテープと一緒に並んでいたなんて、想像もつかなかった。

 恋に落ちた(いまではあの時の甘酸っぱい気持ちははっきり思い出せないけれど)ときの、あの苦しい気持ちを、一本のカセットテープに詰め込んで贈る。

 そのときの選曲もショーブだ。

クラプトンの『レイラ』とか、ボズ・スキャッグスの『スローダンサー』佐野元春の『アンジェリーナ』とか、RCサクセションの『雨あがりの夜空に』とか、吉田拓郎の『たえこMY LOVE』とか、アメリカの『金色の髪の少女』とか、ベタイ曲の合間にキースジャレットの『ケルンコンサート』の一部をはさんだりして、自分のオンガクの趣味の良さをアピールする。

 カセットテープにダビングする曲は主に自分がもっているレコードから選んで、ダビングする。

 レコードをターンテーブルに乗せて、ひとつ前の曲の終わりごろに針を落とし、カセットデッキの『録音』ボタンの上に指を置いてスタンバイ。前の曲が終わって音が完全になくなったら、ボタンを押す。そして、曲が始まる。

 曲が完全に終わるまでそばにいて、終わったらすかさず停止ボタンを押す。

 テープの残量が少なくなってくると、次の一曲をこのままA面に入れるべきか、B面の最初から入れるべきか迷う。

 レコードは持っていなかったが、ニルソンの『ウィズアウトユー』やレオンラッセルの『A SONG FOR YOU』も選んだはずだ。

 それらの曲は誰かのレコードからか、FMでエアチェックしたカセットテープから、録音する。そうやって録音した曲は、音質が落ちてしまうのが、残念だが仕方がない。

 録音が済んだら、タイトルを書き、ケースに付属している紙を裏返して、曲名とアーティスト名を書く。

 ともかく、そうやって、レコードをあれこれと引っ張り出し、カセットからは必要な曲の頭を探し出し、演奏時間にまるまるつきあってつくったミックステープなのだ。

 だが、そうか。

 そんな苦労をして、好きな女の子にミックステープを贈っていたのは、僕だけじゃなく、世のオトコどもは、ほぼみんな、同じことをしていたのか。

 そして、そんな『大好きな女の子にプレゼントしたオリジナルミックステープ』を何万本も集めてチェックしたら、『レイラ』はその85%に収録されてたり、おおよそ25%の曲は共通だったりするのかもしれない。

 なぜだか、いま急に、そんなテープをおしつけて悪かったなと、ちょっと愚痴りたくなった。

 そりゃ、僕だって、オリジナルミックステープは何本かつくって、ほかの女の子にもあげたから、お互い様だけど。

 音楽がまだ、単なるデーターではなく、手で触れることのできた、遠い昔の話だ。 

(2014年4月6日「ICHIROYAのブログ」より転載)

Photo gallery エリック・クラプトン画像集 See Gallery