photo by Ted Van Pelt
自分が心底実現したいことは、実際に文章にして書き留めて、それを折にふれて見よ、ということは、あっちこっちで読んだ。
きっと、あなたが本好きなら、何度もそんな内容のアドバイスを読んだことがあると思う。
だけど、そういうアドバイスを本気で受け止めたことはない。
もし、こうなりたいという望みを書いただけでそうなれるのなら、世の中から不幸は一掃される。
たとえば、マラソンランナーが全員、「私、モモンガ・ビリーバーは東京オリンピックで金メダルを獲る」と書いた途端に、その理論は破綻する。
そう思っていたのだが、今読んだいるスコット・アダムスさんというアメリカの漫画家の方の本:How to Fail at Almost Everything and Still Win Big: Kind of the Story of My Life に、その話が出てきて、かなり驚いた。
その方法は、一般には、"affirmation(アファーメーション)"と呼ばれており、アダムスさんに言わせると、理由はわからないが、自分の場合はそれが劇的に作用したというのである。
たとえば、最初にその方法をある女子学生から教えてもらった時、彼はこう書いた。
「私、スコットは、リッチになる」
その後、彼は直感でふたつの株が良いと思い、そのうちのひとつを少額だけど買ってみた。
その株は値上がりし、まだアファーメーションのことを信じきっていない彼は、すぐにその株を売った。のちにわかったことだが、そのふたつの銘柄はその年によいパーフォマンスを実現したいくつかの目覚ましい会社のうちのふたつだったそうだ。
その時、すぐに彼がリッチになったわけではいけれど、何十年か後に、彼はたしかにリッチになった。
銀行に勤めている時、GMTAテスト(ビジネススクールへの入学希望者を対象に行われる入学適性テスト)で同僚と賭けをした。
賭けの相手のそれまでの最高スコアは86,彼のスコアは77であったが、彼は彼女に勝つと宣言した。
彼は「94」をとるとその目標を具体的にイメージしたそうだ。
そして、試験の結果は、ジャスト「94」であった。
彼はその後、「私、スコットは漫画家になる」とも書いて、それも実現している。
さて、彼のその本(How to Fail at Almost Everything and Still Win Big: Kind of the Story of My Life )は、アマゾンのレビューでも最高の評価を得ている。
非常に面白い内容で、示唆に富み、著書の知性の香りがすべての文章から立ち上がってくるような本である。
そして、本の半ばで、アファーメーションの話になった。
彼は非常に理性的な人なので、アファーメーションが効くことの理由はわからないと言っているし、それが読者にとってマジックのように感じられることもわかっておられる。
それはやはり運だったのかもしれないし、あるいは、自分がほかにもアファーメーションを使ったことがあるのに、効かなかったアファーメーションのことは忘れてしまっているのかもしれない、とまで書いておられる。
たしかに、心理学的な理由、たとえば、それを書くことで目標が明確になり、生活の態度が変わり、目標が達成しやすくなる、ということはあるかもしれない。
しかし、彼は、とにかく、説明はしきれないけど、自分の人生の成功は、アファーメーションした内容と重なっているのだと、おっしゃっている。
僕はそこまで読んで、はたと考えこんでしまった。
人生を幸せに生きるためにはどうしたらよいのかということを、なるほどなるほどと頷きながら読んできて、相当気持ちが入れ込んできたところで、「アファーメーション」である。
そういうことはたしかにないとは言い切れないけど、そういうことが言われる文脈というのがあって、そこにそれが出てきても、何も驚かない。
だが、この本にそれが出てくるとはまったく想像もしていなかったので、すぐにその本を閉じて放り投げるべきか、アファーメーションのことも信じるべきか、どちらかを取らなければならないような気がして、とても戸惑ったのだ。
さて、そこで、僕は、生まれてはじめて、彼の勧める「アファーメーション」を試してみることにした。
だって、ノートに書きつけて、それをたまに見るぐらいのことは、やってみたところでさほど時間もかからない。
今、使っているノートの最後のページを開いて、「私、モモンガ・ビリーバー・イチローは◯◯◯◯になる」と書いて日付を入れた。
もちろん、その目標が誰かと重なって、物理的に無理なものではないように、目標を選んだ。
何年か経ったら、その結果を、またご報告したい。
「アファーメーション」、効くのかな?
いや、きっと、効く。
彼も最初にやったときは、懐疑心でいっぱいだったけど、効くと信じてやってみないとその検証にならないから、少なくとも信じようとしてやってみたと書いておられた。
とりあえず、やや、カルト的な雰囲気もあるが、信じてやってみようと思う。
(2014年12月1日「ICHIROYAのブログ」より転載)