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きのう海外のお客様とお話する機会があったのだが、彼女のお嬢さんの夢は政治家になることで、ピースボートに乗り(変な連中ばっかり!っておっしゃっていたそうだが)、現在はアフリカのNGOで働いておられるそうだ。
現地の治安が良いとは言えず、親としては心配でたまらないようだが、海外で働いた経験が将来のキャリアに好影響を与えることは確実で、心配をおさえて見守っているとおっしゃっていた。
ところで、最近、若い人たちが海外への長期の旅行に行かれることが増えているような気がして(あくまで気がしただけ。留学する人は増えているという統計はある)いたのだが、アメリカの若い人がAtlanticに書かれた記事『How Millenials Are Changing Travel(ミレニアム世代がいかに旅行を変えつつあるか)』が、とても面白かった。
記事は主に先進国のミレニアム世代(現在16-34才)が、旅行に対してどのように違う考え方をしているかについて書かれたものだが、日本のミレニアム世代にもあてはまる部分があるような気がする。
そこに書いてあるミレニアム世代が長期の海外旅行を好む傾向にある理由は、まとめるとこんな風になる。
以前の世代には、確かな階段があってそれをただ登ってゆけば、それなりに豊かになり幸せを実感することができた。
しかし、今の若い世代には、その階段のかわりに高い失業率や不安定な短期雇用と老後の不安しかない。
金銭的な幸せがごく一部の人たちにしか望めないとしたら、自分はせめて自分の価値観にあった仕事がしたい。それで社会の役に立ちたい。
長期の海外旅行に行って世界を見て体験することは、そうするための手段。
幸い、さまざまなオンラインの旅行ツールやSNSの発達で、長期間の海外旅行が安く簡単にもなっている。
だから、ミレニアム世代は世界を旅する。
- 国連の総計によると、海外旅行をしている人の20%は若いひとたちで総数で言うと、2億人にのぼり、約1800億円をつかい、それは2007年比較で30%増加している。
- 若いひとたちは「太陽サンサン、ビーチでごろり的な旅行」という古い旅行のスタイルに興味はなく、有名観光地よりもさらに僻地へ、ホテルの代わりにユースホステルに泊まり、2週間のツアー旅行よりも長い期間のバックパック旅行などを好んでおり、実際に2ヶ月以上にわたる長期の旅行をする人が2007年よりも増えている。(WYSE(The World Youth Student & Education) Travel Condederationによる137カ国34,000人の調査)
- 現在では長期間の海外旅行のコストが劇的に安くなった。Airbing(エーアンドビー・宿泊先予約サイト)、Couchsurfing(カウチサーフィング)、Skyscanner(スカイスキャナー・格安航空券検索)、Lonely Plane(ロンリープラネット・旅行ガイドブック)などの旅行ツールとソーシャルメディアの発達のおかげである。
- 筆者は学生のあいだにバイトをして、15ヶ月の旅行のために約160万円貯めた。その金額は贅沢なほうで、旅行中にあった多くのバックパッカーはその半額のお金で旅をしていた。
- 若い世代が旅行に行く理由のひとつは、以前のように退職後の豊かな生活が望めなくなったから。退職後のゆったりとした海外旅行は、この不況で幻想になってしまった。それなら、今、行けばいい、となった。
- もうひとつの理由は、安定した長期雇用が少なくなってきたことがある。いまの若いひとたちはいままでのどの世代よりも高い失業率に直面している。たとえば、筆者の知人のLauerさんは生物学の学位をとって卒業したけれどその分野での仕事はなく、結局、韓国で科学と英語の教師をしている。彼女にとってみつけることができたもっとも高給の仕事がそれだったのだが、仕事の合間に好きなところへ旅行して楽しんでいる。短期雇用が増えれば、仕事をやめて次の仕事をみつけるまでの時間を旅行に使うこともできる。
- ミレニアム世代はワークライフバランスをいままでの世代以上に大切にするし、お金よりも自分の価値観にあった仕事がしたいと思っている。
- それでも、アメリカですら、長期間の旅行によるキャリアの中断について世間の見方はまだ比較的否定的だ。(オーストラリアやイギリスではもっと認められてきている)
- WYSEの調査では、若いひとたちの多くが彼らの旅行はレジャーのためだけではなく、ジョブトレーニングのためでもあると答えている。22%は外国語を学ぶため、15%は仕事の体験を増やすため、15%は勉学のためと答えており、その割合はすべて2007年より増えている。
- たしかにそういったスキルが仕事に役立つこともある。たとえば、エリザベスさん(25才)は世界の人権擁護について学んでいたが、南アメリカをバックパックで旅行中にさらにさまざまな知見を深め、国連と国際法律家委員会での職を得た。
(2014年6月23日「ICHIROYAのブログ」より転載)