「ニュースメディアの未来〜コンテンツとメディアのこれから〜」スマートニュース藤村厚夫氏

「ソーシャルメディアウィーク東京2014」の初日、講談社で行われた スマートニュース株式会社 の藤村厚夫執行役員の講演を聴講しました。先般300万ダウンロードを突破したというニュースが記憶に新しい「スマートニュース。Androidマーケットにおいて2013年のベストアプリにも輝き、その使いやすさには定評があります。

「ソーシャルメディアウィーク東京2014」の初日、講談社で行われた スマートニュース株式会社 の藤村厚夫執行役員の講演を聴講しました。

先般300万ダウンロードを突破したというニュースが記憶に新しい「スマートニュース。Androidマーケットにおいて2013年のベストアプリにも輝き、その使いやすさには定評があります。

スマートニュースのテクノロジーや今後の動きも気になるところですが、まずは、変容しつつあるコンテンツとメディアの関係とその背景、これからのニュースメディアのあり方というところからレポートしたいと思います。

Paper、Summly、Gunosyなど、最新の注目サービスたち

藤村氏から冒頭に、これからの新しいニュースメディアを考えるにあたって重要だとする、いくつかのサービスについて紹介がありました。

ニュースのアグリゲーションの新しい仕組みの一つとして「Paper」、ニュースのダイジェストを機械的に生成しコンパクト人々に情報を伝えるサービスとして「Summly」、そしてスマートニュースと比較されることの多い「Gunosy」については、アグリゲーターであると同時に日本においてパーソナライズ体験を突き進めようとしている重要なニュースメディアの一つとして紹介。

スマートニュースにもっとも関与のあるメディア「Twitter」については、新しいニュースメディアを考える上でとても重要な存在として紹介し、ユニバーサルなデザインになりつつあるそのUIを丁寧に解説していました。

新しい時代のコンテンツとメディアとは 〜今何が起きているか〜

新しい時代のニュースメディア」とはどんなものでしょうか。それを考えるにあたり、まずは"新しい時代のコンテンツとメディア"についてこのように表現されています。

メディアとコンテンツが分離可能になり、さらにアンバンドル(自由)に

コンテンツとメディアが分離可能な時代になり、現在、コンテンツやそしてメディアの形式そのものが自由になりつつあるといいます。そしてこれからのメディアは新しい10年を迎えようとしている、と説明。

→新聞、ラジオ、TV、雑誌・・

では、この「コンテンツとメディアが分離可能な時代」になってきたというのは、一体どういうことでしょうか。藤村氏はその背景、要因として「アンバンドル化」「モバイル化」「ニュースのパーソナル化」の3つをあげています。

アンバンドル化(=自由化)

コンテンツがメディアからアンバンドル(自由)になる時、コンテンツを受け取るユーザーは、このようなニーズが満たされるのだと藤村氏は説明。

「良い記事・関心のある記事だけを集めて読みたい」

「広告は非表示(スキップ)にしたい」

「アルバムではなく、楽曲単位で聞きたい・買いたい」

「不要なチャンネルの抱き合わせでは買いたくない(CS、ケーブルTVなど)」

ニュースを自分の好きな時に最適な状態で読みたいと思う、その消費者のトレンドはもう止めることができない。そして、メディアはその中でどうやってビジネスチャンスを生み出していくのかがこれから課題になってくるのだとのだと藤村氏は話します。

モバイル化

モバイルデバイスの普及も重要な背景であると藤村氏は説明。ここで非常に印象深い文章を引用されています。
新聞やテレビはコミュニケーションのきかっけでしか過ぎなかった。スマホの登場により、ニュースを運ぶ媒体とコミュニケーションツールが一体化し、身体との距離も近づいた
これはジャーナリストの藤代裕之氏の記事より引用したもの。藤村氏はこれを「"ニュースメディアを消費すること"と"コミュニケーションすること"、それが近づいていることを的確に表現している文脈であり、これがこれからのコンテンツとメディアを考える上で重要な意味を持つ」として強調しました。

ニュースのパーソナル化

「生活者がニュースを消費する方法に変化が起きていると感じている方は多いと思います。見るメディアが限られ、そこにある情報を提供されるがままに受け取っていた状態から、多数のメディアの膨大な情報の中から選び取るようになった、そんな実感がありませんか。」

藤村氏はそれを「コンテンツ提供者が増え、世の中のコンテンツが溢れ返るようになってきた現在、情報を取得するという行為における原理の転換が起きている」と説明。

具体的な生活者心理で言うと「こういった稀少な情報がありますよ」という状態から「こんなに情報がたくさんあるんです」という状態への変化が現れており、それを"コンテンツ希少性"の経済から"過剰性"の経済への転換だと解説しました。

つまり生活者の心理が「これもあれも大切なものだから見ようね」から、「たくさんあるのでいいものだけにしよう(見よう)ね」という心理に変わってきているということです。

キーワードは「アグリゲーション」と「キュレーション」

「アンバンドル化」「モバイル化」「ニュースのパーソナル化」がもたらす、コンテンツとメディアの変容。そこから考える「新しい時代のニュースメディア」とはどの様なものでしょうか。

ソーシャルメディアが普及した現代は、繋ぎっぱなしの情報で膨大な情報が流れる時代、情報の多さと共に人々のニーズがめまぐるしく変化する時代、そんな時代に対応するメディア。それがニュースメディアの未来だと藤村氏は話します。

そしてキーになってくるのが、「アグリゲーション」そして「キュレーション」だと。この言葉について、藤村氏は「私の考える」と前置きし、このように説明。

これが最適化されていくことで、生活者は「情報を発見することへの快適」「情報を読むことへの快適」を得ると説明。情報の消費の仕方の質も変容してくるということでしょうか。

スマートニュースの本質

ここでスマートニュースの機能と哲学の話になります。

2012年12月にサービスインした「スマートニュース」、その特徴を藤村氏はこのように述べています。

・コンテンツを最適に、快適に読める仕組み

膨大に流れる情報を集め、そのコンテンツを最も快適に読める環境を実現する。楽しさと快適さを追求した設計。それがスマートニュースだと。

これは、前述した項目、アグリゲーションとキュレーションによりコンテンツが最適化された時に、消費者が得る「快適」、つまり「情報を発見することへの快適」「情報を読むことへの快適」に合致します。

続いて藤村氏は、スマートニュースの2大要素を

・「コンテンツブラウザ」(=最も快適なコンテンツ閲覧)

であると解説。

これがスマートニュースの本質であり、「ニュースを読む楽しさを重視したUX」「高速な表示」としてストレスフリーなニュース閲覧体験を実現しているものだと説明。

このことから、(藤村氏のいう)「アンバンドルな時代の新しいニュースメディアの姿」、その要素を含み実現しているものがスマートニュースというサービスだと伺い知れます。

ではスマートニュースはどのように情報を集めて来ているのでしょうか。Twitterのリアルタイム解析のプロセスについて、藤村氏が提示されたスライドをベースに簡単に記述します。

スマートニュースの非常に高度に学習するシステムが、世の中に流れる膨大な情報を精査しユーザーに情報を届け、精査されたコンテンツは文字の微妙な大きさ記事の見出し改行位置など丁寧に考えられたUIを経て快適な環境で閲覧されます。

スマートニュースが目指すもの

最後に藤村氏は、スマートニュースが目指すものとして以下の3つの項目をあげながら、その未来を聞かせて下さいました。

・何となくこれが一番いい

・訊かなくても操作できる

・利用していて飽きない

・ディープラーニング=高度な機会学習(カテゴリ判定、共通性判定)

・ビッグデータ分析(誤報、デマコンテンツの早期発見や抑止)

・コンテンツ品質への視点(絶対量で確定できない"質"を分析・学習)

・スマートニュースサーバーが生み出すデータと解析の能力をどうパブリックにするか

・ジャーナリズム活動をどう支援するのか

さて、ここで思い出したいのがスマートニュースのメッセージ。スマートニュースのコピーは「良質な情報を全ての人へ」。そしてミッションは

「世界中の良質な情報を

必要な人に送り届けることを通して

より良質な情報が生成される空間をつくる」

上記の3項目を追求しひた進むことが、このミッションに繋がるのでしょう。それがニュースメディアの未来を切り拓く一役としてのスマートニュースの姿なのだと思います。

***

今年還暦を迎えられた藤村さんですが、冒頭「デジタルメディアの未来について自分がやれることがあると思っている」とお話しされていました。

藤村さんとスマートニュースの皆さんが描く未来、「スマートニュース」が切り開くコンテンツとメディアの未来の行く末が心から楽しみです。

藤村 厚夫 氏 プロフィール

スマートニュース株式会社 執行役員 事業開発担当。

株式会社アスキーにて「netPC」「アスキーNT」の編集長、ロータス株式会社(現日本IBM)にて戦略企画/マーケティング本部長を歴任し、2000年に株式会社アットマーク・アイティを創業。合併によりアイティメディア株式会社代表取締役会長に就任し、同社の東証マザーズ市場への公開に貢献。2011年メディアプローブ株式会社取締役に就任、モバイルシステムによる新規事業を担当。

※この記事は2014年2月28日の「in the looop」掲載記事より転載しました。

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