中国はテロの連鎖を断ち切れるのか?

中国、雲南省昆明で恐ろしい事件が起こった。BBCが伝えるところでは、昆明駅で刀を持ったウイグル系中国人に一般市民が襲われ29人が亡くなり、130人が傷を負ったとの話である。

中国、雲南省昆明で恐ろしい事件が起こった。BBCが伝えるところでは、昆明駅で刀を持ったウイグル系中国人に一般市民が襲われ29人が亡くなり、130人が傷を負ったとの話である。日本のメディアなら決してこういう表現を使わないが、BBCが事件現場は血の海になったと伝えている。犠牲者の数からして大いにあり得る話であり、事件の凄惨さを我々に想像させるには充分であろう。

Images seen by the BBC show men and women lying on the floor in pools of blood following the attack.

複数のメディアが伝える様に、今回の事件は3月5日から開催予定の全国人民代表大会(全人代)直前に行われており、昨年11月開催の中国共産党第18期中央委員会第3回全体会議(第18期3中全会)直前に実行された北京、天安門でのウイグル系中国人自爆テロ同様、中国共産党政権への対決姿勢を示すためのものであろう。特筆すべきは規模が格段に大きくなり、事件そのものも随分と残虐になった事である。

■中国、雲南省昆明とはどんな所?

昆明は雲南省の省都であり、政治、経済、文化、交通の中心地である。私は何度か訪れた事があるが、気候は温暖で住んでいる少数民族の人々の明るく素直な人柄には随分と癒された経験がある。雲南省とは読んで字の如く雲の南であり、中国人に取っては中国西南の果て、南はラオス、東はミャンマーと国境を接する僻地である。

日本人にとっては、人種的ルーツの発生地ではないかという学問的見地からも大きな興味が持たれている。事実、現地少数民族の見た目は日本人そっくりだし、恥ずかしがり屋で話かけたらはにかむ事も多く、気候、風景と相まって日本の原風景を見ている様な気がしたものである。従って、今回の惨劇の舞台には最も似つかわしくない場所であり、今回の事件は、今後、中国の何処で、如何なるテロが起こっても最早不思議ではないという冷徹な事実を示している。

■何故テロは起こるのか?

中国共産党の体質に起因すると考える。「権力は銃口から生まれる」というのは毛沢東が発した有名な言葉であると共に中国共産党の党是となっている。権力は既得権益と結び付く。そして弱者を抑圧し、只管搾取を繰り返す。チベット人の様な仏教徒であれば「諦念」もあり得るだろう。しかしながら、ウイグル人の如きイスラム教徒であれば「聖戦=ジハード」と捉え、中国共産党に真っ向から戦いを挑む事は何ら不思議ではないし、事実既に起こってしまった。

世界が注目するのは、当局は断定しているが、ウイグル系中国人によるテロではないかとされている点である。しかしながら、その一方、中国に取って僻地に過ぎないウイグル自治地区での、中国当局によるウイグル系中国人殺害のニュースは今年になって既に何度も目にした。日常的に行われているのであろう。最近、アメリカで博士号を取得した後国際機関で働いているパキスタン人と話す機会があったが、彼の話では、ニュースは氷山の一角に過ぎず、多くのウイグル系中国人が捉えられ、拷問を受けた後、殺害されているのだそうだ。そうであれば、今回の雲南省昆明での惨劇はそのリベンジという事になる。

■中国はテロの連鎖を断ち切れるのか?

結論からいって無理だと思う。そもそも、上述の如く「権力は銃口から生まれる」という中国共産党の党是と、そこから派生する権力者のやりたい放題というのは世界標準から余りに外れている。権力から遠い所に位置する国民が不満を溜め込むのは当然の結果である。成程、チベットの様な孤立した地域であれば中国共産党は力で抑え込めるかも知れない。

しかしながら、新疆ウイグル自治区はイスラム東西回廊の西の果てに位置し、国境を接するのはいずれもイスラム国家である。また、新疆ウイグル自治区に住むウイグル人はトルコ人と同じ民族との事でトルコはウイグル人の苦境に同情していると聞いている。従って、中国共産党がウイグル系中国人を抑圧、弾圧する事は、16億人のイスラム教徒という分厚いコンクリートの壁に向けて、壁打ちテニスをしている様なもので、強く打てばそれだけ強く返されてしまう。近い将来爆薬を使用した地下鉄や百貨店の爆破テロが起こるのではと危惧する。

■権威を失墜する習近平政権

例え、アジアのヒットラーと海外から揶揄されようと国内をきちんとグリップ出来ており、国民に安全、安心を保障しておれば一定の支持を得る事は可能であろう。しかしながら、今の様にウイグル系中国人に好きな様にテロを起こされていては習近平政権鼎の軽重が問われるのは当然である。

PM2.5に代表される環境問題は少しも改善しない。近い将来多くの中国人は呼吸疾患で苦しむ事になるだろう。一方、理財商品に象徴される不良債権問題も中国:地方都市に「住宅相場クラッシュ」の予兆、資金撤退の動きも、或いは、中国「影の銀行」新たに850億円回収危機 デフォルト懸念さらに、といったニュースが連日報じられるのを見ていると、中国バブルはそんなに遠くない将来確実に破裂し、その後中国経済は相当長い期間調整を強いられる展開となると予想せざるを得ない。それと併行して、社会不安や国民の不満は極限まで高まる展開になる。必然的にウイグル系中国人のテロのみならず、不満を持つ国民のデモや暴動が多発する事になる。中国が液状化して行くという事である。

■日本人に必要な覚悟とは?

中国はアメリカに次いで在留邦人が二番目に多い国である。一方、中国は企業の新規投資先として注目を浴び企業は対中投資残高を増やし続けた。しかしながら、そんなに遠くない将来中国在留の日本人が日本に引き揚げ、対中進出に熱心であった企業も中国を見限りアジア展開にシフトせざるを得ない可能性も覚悟しておくべきと思う。

China's Military On The March

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