後悔しない就職先選びとは?

前回の記事で説明したが、多くの就活生が就職先の選択に失敗するのには二つの理由がある。

前回の記事で説明したが、多くの就活生が就職先の選択に失敗するのには二つの理由がある。第一は、対象企業の実態を正確に把握せず世間体やマスコミの醸し出すムードに依存しているという実態である。まるで、船の航海に際し海図がない様な話である。今一つの理由は、就職した3年後、5年後、8年後(30才)、どの様な社会人に成長し、勤務する企業で如何なる仕事を担当したいのか? 明確なビジョンを持ち合わせない事である。まるで、船の航海に際しコンパスがない様な話である。船が出港するに際し、海図もコンパスもなければ当然の事として座礁し難破してしまう。今回はかかる実態を考慮した上で、「後悔しない就職先選びとは?」をテーマに考察を試みたい。

■選択すべきは100年後も市場がある事業領域を担当する企業

折角正社員として企業に勤めても、ガラケーがスマホに駆逐される、或いは、家電量販店が台頭するECに商流を強奪される、といった話は、淘汰される側の企業の従業員に取っては悪夢だが、市場主義経済では日常的な光景である。従って、企業の選択に際しては100年後も市場がある事業領域を担当しているのか? 否か?が重要なポイントとなる。

■高い参入障壁の構築に成功しているか?

仮に100年後も市場がある事業領域を担当する企業であったとしても、有望市場という事で、韓国、中国、更には中国に雁行するアジア新興産業国が怒涛の如く乱入し、市場が一気にレッドオーシャン化する様では話にならない。韓国、中国、アジア新興産業国の参入を頑強に排除する参入障壁の構築に成功しているか? これを精査するのは当然である。

■その仕事にやり甲斐を感じられるか?

一部上場企業に正社員の身分を得、自分の能力に合った仕事を就業時間中に熟せる量与えられ、これを遂行した対価として給与が毎月決まって口座に振り込まれる。これだけで果たして幸せになれるだろうか? 矢張り、仕事にやり甲斐や達成感を感じる事が出来ねば幸せにはなれない気がする。一義的には仕事を通して勤め先企業に貢献していると感じ、更には微々たるものかも知れないが、日本の将来、ひいては、世界の平和と安定に貢献していると実感として体験出来るか否かは重要な点である。やり甲斐を感じてこそ、人は更なる高みを目指し、学び頑張る事が出来るからである。

■地球温暖化ガス排出削減は息の長いテーマ

「後悔しない就職先選びとは?」というテーマの至近距離に近寄り詳細な分析をする事は無論必要である。しかいながら、時には視野狭窄回避のため距離を空けて俯瞰する事も重要である。これからの100年、西側先進国が直面せざるを得ない重要テーマで、日本がリーダシップを発揮すべき分野とは一体何であろうか? 日本が難産の末1997年に採択にまで漕ぎ着けた「京都議定書」を更に前に進め、西側先進国を一つに纏め地球温暖化ガス排出削減を実現する事だと思う。

日本のマスコミはエネルギー問題、電力問題に関しては殆ど脳死状態であり、あるべき「思考」をスルーして「反原発」、「放射能汚染」に直結してしまう。しかしながら、世界の状況はこれとは真逆である。先ず一読すべきは、PRESIDENT OBAMA'S CLIMATE ACTION PLANである。重篤な旱魃に悩むアメリカの指導者としてこれ以上の二酸化炭素(地球温暖化ガス)の排出増加が許されず、削減に向け舵を切る事が待ったなしであると主張している。次いで読むべきは、国連(IPCC)の第5次評価報告書第3作業部会報告書である。国連(IPCC)もまた、アメリカ、オバマ大統領と同じ主張をしている。

■地球温暖化ガス排出削減の切り札は原発

日本では原発に対して何がしかのアレルギーを持つ人が多い様に思う。こういう国内事情では、多分、少なくともこれから30年、日本で原発が新設される事はないだろう。しかしながら、世界の趨勢はこれとは真逆である。PM2.5に代表される大気汚染に悩む中国を筆頭に、これから新たに新設する発電所の第一候補として原発を考えている国は少なくない様である。一方、日本と原子力協定を締結済みの国は、米国、英国、カナダ、オーストラリア、中国、フランス、トルコ、アラブ首長国連邦など多数あり、現在、インド、ブラジル、南アフリカ共和国と交渉中で、メキシコ、サウジアラビアまでを視野に入れている。こういった国々に日本企業が原発を建設する事が、イコール地球規模での地球温暖化ガス排出削減への日本の直接的な貢献となる。

■原発における圧倒的な日本企業の競争力

世界的に見て原発開発と言えば、低品質低価格のロシア製を除けば、日立・GE、東芝・ウエスティングハウス、三菱重工・仏アルバ、コンソーシアムくらいしか思い浮かばない。安全性が重視される原発であれば日本政府が円借款などを柔軟、弾力的に提供すれば日本勢だけで世界シェアの7割程度を確保出来ると思う。福島第一原発の事故教訓を反映した新型原発の製造が可能な事も日本企業の大きな優位性である。事実、ハフポスト記事、東芝が原発会社買収へ 原発建設を強化する地域は?が示す様に、日本企業も着々と布石を打っている。日立、東芝、三菱重工といった企業の原発事業部門で働く限り将来は安泰という事である。

就活生の興味はある程度は致し方ないと思うが、一例を挙げれば、自動車、携帯電話キャリアー、ビールといったテレビ広告を大量出稿している企業に偏っている。こういう企業は一見派手であるが、SONYの没落を見たら分る様に経営者が潮目を見誤った瞬間に優良ビジネスは薄利ビジネスとなり、更にはあっという間に赤字ビジネスとなる。そして、従業員もこれに併せリストラされてしまう。

就活生の興味が派手な企業にのみ引きつけられる事による問題は、その結果、隠れた優良企業が無視されてしまう事である。読者の皆さんは鉄鋼・機械製品メーカーの「日本製鋼所」という名の企業をご存じだろうか? 知らない人が多い様に思う。この会社は安全性が厳しく要求される原発の中核である全世界の原子炉の80%を生産している。80%までシェアが取れておれば、ほぼ独占状態である。価格決定権は飽く迄日本製鋼所側にあり、ビジネスにありがちな顧客からの値引き要求もない。その結果、充分満足のいく利潤をあげ、その何割かを研究開発と設備投資に回すから更に競争力が増し、競合相手は撤退せざるを得ない。日本製鋼所はきっと100年後も世界の原子炉市場を席巻しているはずである。従って、日本製鋼所の原子炉部門で働く限りリストラの心配はないという事である。

今回示したのは、飽く迄、「後悔しない就職先選びとは?」のテーマに対する考察の一例に過ぎない。しかしながら、こういう思考過程で就職先を選択すれば、将来余り後悔する展開にはならないはずである。

注目記事