決戦の地・ブラジルで直面した言葉と移動の壁。

現地時間6月6日(以下現地時間)のザンビア戦(タンパ)で日本代表のアメリカ直前合宿取材を終え、翌7日夜にタンパ空港からマイアミ経由で8日朝にサンパウロ入りした。マイアミからの所要時間は8時間程度。深夜のフライトで、疲れ切って寝ているうちにブラジルに着いてしまった。空の玄関口であるグアルーリョス国際空港は外国人の入国審査でごった返すことが多いため戦々恐々としていたが、拍子抜けするほど空いていて、スムーズに外に出ることができた。

現地時間6月6日(以下現地時間)のザンビア戦(タンパ)で日本代表のアメリカ直前合宿取材を終え、翌7日夜にタンパ空港からマイアミ経由で8日朝にサンパウロ入りした。マイアミからの所要時間は8時間程度。深夜のフライトで、疲れ切って寝ているうちにブラジルに着いてしまった。空の玄関口であるグアルーリョス国際空港は外国人の入国審査でごった返すことが多いため戦々恐々としていたが、拍子抜けするほど空いていて、スムーズに外に出ることができた。

本来であれば、そこから真っ直ぐ市内東部のイタケーラにあるアレーナ・デ・サンパウロへ向かうのが基本なのだが、空港にいるうちに国内便の予約再確認をしておく必要があった。今回のブラジルワールドカップで各航空会社が相次ぐ増便を行い、我々が予約していた便が勝手に時間を変えられるケースが相次いでいたので、その確認・変更をしたのである。12日にワールドカップ本番が始まったら、航空会社のストライキも行われるという噂があり、戦々恐々としている。昨年のコンフェデレーションズカップでもフライトの混乱があったため、ここからは情報を入念にチェックする必要があるだろう。この日もこの作業だけで2時間を費やした。

その後、公共バスで市内中心部に近いタトゥアペまで出て、イタケーラまでタクシーに乗ることにしたのだが、空港バスが5リアル(約250円)なのに、タクシーは55リアル(約2750円)超。公共交通機関とタクシーの料金差に愕然とした。これでは賃金の低い労働者はとてもタクシーには乗れない。バス料金でさえ値上げされて不満が噴出しているというから、ブラジルの貧富の差は根深い問題だ。ワールドカップ開催に向けてのデモが起きるのも、そういう事情があるからだろう。それでも、大きな荷物を持っているから電車移動は厳しい。大会取材パスを取得した後、イトゥに向かう長距離バスに乗るために。市内北部のチエテにあるバスターミナルへ移動する際にも、70リアル(約3500円)もかかった。タクシーは庶民の乗り物ではないと痛感させられた。

ところが、このチエテのバスターミナルからイトゥ行きは出ていないことが判明。数人に尋ねて確認したつもりだったが、ポルトガル語での説明をこちらが理解しきれていなかったようだ。仕方がないので、今度は3リアル(約150円)の路線バスで市内西部にあるバラ・フンダのターミナルへ再移動。ようやくイトゥ行きに乗れて、90㎞弱の距離を2時間弱かけて目的地に辿り着いた。イトゥは標高583mと、我が故郷・松本とほぼ同じ。日中は30度超まで気温が上がるが、確かに爽やかではある。バスターミナル周辺にはヤマハやホンダ、トヨタ、日産のショールームがずらりと並んでいて、日本車の普及率の高さをうかがわせる。地元には日本人会もあるというから、日本との関係が非常に深い町なのだろう。

日本代表がベースキャンプ地に選定した「スパ・スポーツ・リゾート」の隣にも、麒麟麦酒株式会社のブラジル法人の巨大な工場がそびえたっている。キリンが日本代表のオフィシャルスポンサーなのは周知の事実。今回のキャンプ地選定にもキリンが深くかかわっていることは、よく理解できた。スパ・スポーツ・リゾートは中心部から直線距離で6~7㎞だが、小さな町とこの巨大な施設がどうもミスマッチである。重厚な門のすぐ隣に、報道陣が利用するメディアセンターが設置され、その奥に選手たちのトレーニング施設や宿泊施設などがある。我々が入れるのはグランドまでだが、このピッチも芝生を植えたばかりというのに、きちんと整備されていた。

GKトレーニングを行った権田修一(FC東京)が「滞在が1ヶ月あるので、時間が経ったら多少、悪いところが出てきたりってのはあるかもしれないですけど、今日やってみて、芝生の下がしっかり根付いてなくてベロってはげちゃうとかは全然なかったですし、グランドの中で何処かだけスポットで作ってあるのもなかったですね。しっかりしたグランドだなというのは感じました」と、9日の初練習の後にコメントしていたが、環境はよさそうだ。建設工事が終わっていないといわれていた宿舎の方も選手たちは快適に過ごせているという。これだけ外界と隔離された静かな環境を用意してもらったのだから、今大会の日本代表は集中して戦う必要があるだろう。

日本代表は12日までこの地でトレーニングして、13日にレシフェ入りする。高温多湿の町に再び赴いて、コンディション面に影響はないのか。移動時のトラブルはないのか。そのあたりも試合の行方を大きく左右しそうだ。

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元川 悦子

もとかわえつこ1967年、長野県生まれ。夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターに。Jリーグ、日本代表から海外まで幅広くフォロー。ワールドカップは94年アメリカ大会から4回連続で現地取材した。中村俊輔らシドニー世代も10年以上見続けている。そして最近は「日本代表ウォッチャー」として練習から試合まで欠かさず取材している。著書に「U-22」(小学館)「初めてでも楽しめる欧州サッカーの旅」(NHK出版)ほか。

(2014年6月11日「元川悦子コラム」より転載)

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