田中将大が"ベスト"と"ワースト"を更新 現地の報道は日本と対照的

田中の制球難にあえいだ末の逆転劇に、日本の報道では多くが「田中乱調」「4勝目ならず」「勝敗つかず」の見出しが躍った。一方で、対照的に現地メディアでは多くが、「田中が圧巻~」「またしても強さを見せた!」「11奪三振!」と称えたタイトルが並んだ。

現地27日のヤンキース対エンジェルスは、この日の唯一のナイトゲーム。この全米中が注目する一戦に田中将大が先発し、今季の"ベスト"と"ワースト"を更新した。

ベストは11奪三振。ワーストは5四死球だ。オープン戦中は、5試合21イニングを投げて計3四球。シーズンもここまで4試合29.1イニングで計2四球と、ずば抜けた制球力を見せてきた。そんな田中が、今日は4回までに5四死球。コントロールに苦しみながら、7回途中5安打2失点で何とかゲームを作った。

降板時には1-2と敗戦投手になる可能性を残していたものの、そこは「神の子」マー君。直後の7回裏に味方が追いつき、黒星は消滅。8回にはヤンキースがさらに1点を追加して3-2でエンジェルスに勝利した。

田中の制球難にあえいだ末の逆転劇に、日本の報道では多くが「田中乱調」「4勝目ならず」「勝敗つかず」の見出しが躍った。一方で、対照的に現地メディアでは多くが、「田中が圧巻~」「またしても強さを見せた!」「11奪三振!」と称えたタイトルが並んだ。

ジョー・ジラルディ監督は試合後、「これで田中が制球力を失った時ですら、ゲームを作れることが証明できたんじゃないかな」と誇らしげに語っている。(参照:ニューヨーク・タイムズ紙電子版

これまで田中が評価されてきたのは、まず修正能力の高さ。本塁打を浴びようとも、すぐに切り替えて修正し、その後圧巻の投球を披露したことなどが挙げられる。また、順応性についても同様に高評価。3試合目のカブス戦では、デーゲームへのスライド登板という変更に加え、ニューヨークで前夜降った雪の寒さや冷たい風がフィールドに降りる中、抜群の制球力をみせた。

そして今回は田中の最大の武器でもある、その制球力が失われるという、これまでにない困難な状況下でも、ゲームを作ったことが高評価につながった。

中でも話題を呼んだのは奪三振だ。試合前、エンジェルスは「田中のスプリッターには手を出さない」と宣言していたが、元ヤンキースの名投手で現在は解説を務めるデビッド・コーン氏に「メジャー最高レベルのスプリッター」と言わしめたその伝家の宝刀で、田中は今日も打者を次々と仕留めていった。

これで田中はメジャー初登板から5試合で46奪三振。これは1900年以来では、ハーブ・スコア(50)、スティーブン・ストラスバーグ(48)に次ぐ、メジャー史上3番目の最多奪三振記録という。

現地のファンは、「TanaKKKKKKKKKKKa!!!」と三振を表すKを並べて、田中の奪三振ショーに興奮の声援をツイッターなどのSNSで投稿。ヤンキースの公式フェイスブックにも「田中はヤンキースの申し子」「素晴らしいに尽きる」「この調子だ!」といった声が次々と寄せられている。

なお、この日はイチローがめずらしく左翼で捕球ミスをする場面が見られるも、今季初打点を挙げた。これにも、現地ファンのツイートでは「イチローはレフトが専門ではない」と擁護し、今季初打点を喜ぶ声が多くみられた。

幼い頃から、短所より長所を評価し、褒めて伸ばすスポーツ教育でも知られるアメリカ。田中やイチローといった一流選手でも、悪い面より良い面を称賛し、楽しく盛り上げようとするのは現地メディアやファンも同じ。

「自分への声援は力になる」と先日のホーム初先発で喜んだ田中、ヤンキースで躍動感あふれるプレーを続けるイチロー。今日の反応で明らかなったように、こうした声を受け、さらなる高みへと登って行くのだろう。

2014-04-30-19.jpg

スポカルラボ

MLBをはじめ海外スポーツに精通した英日翻訳ライター3人による メディアコンテンツ制作ユニット。スポーツが持つ多用な魅力を独自 の切り口で表現し、人生の選択肢はたったの一つや二つではない、 多様なライフスタイルを促進することをミッションに掲げて活動中。 Facebook→スポカルラボ

【関連記事】

(4月28日J SPORTS「MLBコラム」より転載)

New York Yankees v Chicago White Sox

田中将大画像集

注目記事