2014年ブラジルワールドカップ惨敗後に日本代表引退をほのめかした内田篤人(シャルケ)の復帰を含め、ハビエル・アギーレ監督の選手選考の行方が注目されていた10月2連戦(10日・ジャマイカ戦=新潟、14日・ブラジル戦=シンガポール)。そのメンバーリスト23人が1日に明らかにされ、9月シリーズから8人が入れ替わった。
アギーレ体制発足後の新戦力のうち、前回結果を出した武藤嘉紀(FC東京)、柴崎岳(鹿島)は順当に選ばれ、最近のパフォーマンスが今一つの皆川佑介(広島)、坂井達弥(鳥栖)は落選。森岡亮太(神戸)はまだテストの最中ということなのか、今回もリストに名を連ねた。こうした面々に加え、Jリーグで好調を維持している鹿島アントラーズの西大伍、昌子源、川崎フロンターレの小林悠、サンフレッチェ広島の塩谷司、FC東京の太田宏介らが新たに抜擢された。
欧州組では、香川真司(ドルトムント)とハーフナー・マイク(コルドバ)が予想通り復帰を果たした。9月シリーズ以降、所属クラブで出番の少ない田中順也(スポルティング・リスボン)や柿谷曜一朗(バーゼル)もチャンスを与えられた。逆に代表復帰が有力視された内田、9月シリーズで途中離脱した長谷部誠(フランクフルト)も選考外。これはやや意外な結果だった。内田と長谷部の落選理由について、指揮官は「メンバーに入っていない選手の発言は控えたい」と理由を明かさなかったが、長谷部の場合はパフォーマンスの問題、内田は欧州組招集が15日前と早く、その時点で完全復帰できるかどうかの判断がつかなかったためと見られる。彼らがこの先、チームに加わるかどうかは、来年1月のAFCアジアカップ (オーストラリア)へのラストチャンスとなる11月2連戦(14日・ホンジュラス戦=豊田、18日・オーストラリア戦・大阪)次第だろう。この1ヵ月の動向が大いに注目されるところだ。
アギーレ監督は選出した23人の起用法について会見で説明してくれた。まず守備陣はセンターバック候補が吉田麻也(サウサンプトン)と水本裕貴(広島)、塩谷、昌子の4人。サイドバック候補は西、太田、長友佑都(インテル)、酒井高徳(シュトゥットガルト)の4人。このうちサイドバックについては、西が右、太田が左というのは決まっているものの、長友は今季インテルで右、酒井高徳はシュトゥットガルトで左を務めていて、代表ではどうなるのか興味深かった。指揮官は「代表では前回、酒井高徳を右、長友を左で使ったが、彼らを逆にしても十分機能すると思う」と新たなトライをする可能性を示唆した。酒井高徳はベネズエラ戦(横浜)の際、普段やっていない右に入っていきなり結果を出すことの難しさを口にしていただけに、今回はクラブと同じ位置でやらせることも十分考えられる。ジャマイカ戦は1つのチャンスではないだろうか。
中盤に関しては、アンカー候補が森重真人(FC東京)と細貝萌(ヘルタ・ベルリン)だと明言。「2人がライバルとして競うことになる」と指揮官はコメントした。9月のシリーズでは森重が一歩リードという格好だが、細貝がこの位置に入ってどうなるかはまだ分からない。サイドバック同様、ジャマイカ戦がその試金石になりそうだ。インサイドハーフは右の候補者が柴崎と森岡、左が田中順也と香川と見られる。香川については「4-3-3の場合は中盤で見たい。ドルトムントでも初期はその位置でプレーしていたし、マンチェスター・ユナイテッドでも最後の方はそうだった。彼はハーフウェーラインより前ならどこでもできる。能力の高い選手だ」と絶賛。中盤でゲームメークをしながらゴールを狙うプレーが求められるようだ。香川自身もボールを触りながらリズムを作るのを好むタイプ。この起用法は歓迎ではないだろうか。彼が中盤に入った時、チームのバランスがどう変化するかが気になるところだ。
そしてFW陣は、右が本田圭佑(ミラン)と小林、左が武藤と柿谷、トップがハーフナーと岡崎慎司(マインツ)という構成になるようだ。この日は岡崎についての質問が出なかったため、トップの使い分けについては定かでない部分もあるが、今季ブンデスリーガで5試合出場5ゴールと大爆発している岡崎がファーストチョイスになるのは間違いない。ザックジャパン時代以来の復帰となったハーフナーとしては、彼との違いを明確に示す必要がある。194㎝の高さを遺憾なく発揮して、ジャマイカやブラジル相手でもしっかりと戦えるところを示してほしい。
9月シリーズの日本代表は勝利をモノにできなかっただけに、今回こそ白星はノルマ。特にジャマイカ戦はそれが強く求められるだろう。選手たちはこれまで以上に内容と結果にこだわる必要がある。大きな手ごたえをつかめるような戦いを今度こそ期待したい。
(2014年10月2日「元川悦子コラム」より転載)