イギリスの音楽チャートを運営するオフィシャル・チャート・カンパニー (OCC)は、イギリス音楽として初めて音楽ストリーミングサービスからの再生データを全英シングル・チャートに統合することを発表しました。
シングル・チャートでの音楽ストリーミングからのデータ連携は、SpotifyやDeezer、Napster、O2 Tracks、Xbox Music、Music Unlimited、raraなど音楽ストリーミングサービス、イギリスのエンタメ業界団体「Entertainment Retailers Associations」の全メンバーの合意によって実現しました。
また新しいシングル・チャートにはインディーズレーベルからメジャーレーベル、フィジカルおよびデジタル・ストア、アーティストやマネージャー、BBC Radio 1やMTVなど大手メディアパートナーが、ストリーミングデータ連携に幅広いサポートを示しています。
新しいチャートでは、ストリーミング再生100回が1シングル(ダウンロードまたはCD購入)として換算されていきます。
2013年春にダフト・パンクの「Get Lucky」が初めてストリーミング再生で100万再生を達成しました。しかしその後もストリーミングサービスでの視聴は拡大し、2014年に入ってからは9曲がストリーミング100万回再生を突破しています。
OCCのCEOマーティン・タルボット(Martin Talbot)は、
オーディオストリーミングはこれまでにない勢いで成長しており、今まさに重要な決断に踏み切る時が来ました。全英公式シングル・チャートは世界で最も重要で影響力のあるチャートです。私たちは連携の可能性をしばらくの間検討してきました。そして満足できる正しい方法に辿り着き、2014年夏さらに先に前進します。
今回の発表にあたり、バスティル (BASTILLE) が音楽ストリーミングサービスの連携を発表する動画が公開されました。Bastilleの「Pompeii」は英国史上最もストリーミング再生されたトラックです。
Bastilleのダン・スミスは
2600万回以上Pompeiiがストリーミング再生されたって聞かされた時は驚いたし、完全に変な気分だったし、僕達は本当に本当にうれしいよ。ストリーミングサービスがチャートと連携することは絶対に素晴らしいことだと思うよ。チャートがより公平になるためには、人が音楽を聞く方法を反映させるべきだと思う。
僕たちのアルバムでは、僕たちはラッキーだったし、どれだけ売れたかなんて僕たちの想像をはるかに超えてしまったよ。だけど僕たちのライブとアルバムの売上を比較した時、アルバムを聴いたり所有している人のほうが、実際に購入した人よりも2倍、いやもっと多く存在している。ストリーミングデータを組み込むことは、できるだけリアルな世界に近づくことであって、これは最終的には良い事だ
さらにイギリスの音楽業界団体でOCCの共同オーナーでもある英国レコード産業協会(BPI)は今回のチャート改変に伴い、伝統的なプラチナ、ゴールド、シルバーなど売上認定プログラムをアップデートすることを発表、ストリーミング再生データを連携させる、より忠実なシングル認定を実現するとしています。
世界的に音楽ストリーミングサービスが急成長するなかで、人の音楽の聴き方が変わると同時にチャートへの影響も変わり始めています。
下の音楽マーケティングの専門家、高野修平さんの記事でも書かれているように世界の指標は生活者にとって信ぴょう性のあるデータを組み込んだチャートへ、どんどん変わり始めています。
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これまでアメリカがいち早くストリーミング再生のデータを組み込むチャートに着手する一方で、イギリスは様子を見ていた流れがありました。しかし、ここにきてイギリスでもBastilleの例を出すまでもなく、音楽ストリーミングのデータが利用者の現状を忠実に再現するデータだと認識した上での決断だと思います。
チャートを変えることは売上認定プログラムやアーティストやレーベルへの理解と啓蒙、ショップとの新たな関係性など、音楽業界全体が横断的に足並みを揃える必要があり時間がかかるでしょう。しかし、多くのリスナーがネットで音楽再生をしている現状を指をくわえて傍観するだけでは、いつまでも日本の音楽はデジタルに開放されることはないでしょう。ネットユーザーを音楽シーンにつなぎあわせることが、日本の音楽シーンにとって今最重要課題の1つではないかと思います。
ソース
(2014年6月23日「音楽ブログ「All Digital Music」より転載)