数日前、アメリカの小売りチェーン、アーバン・アウトフィッターズ (Urban Outfitters)の経営幹部が「同社が世界最大のアナログレコード販売店である」と発言したことが話題になりました。
別の記事でこの話題を取り上げた時にはTwitterやFacebookで反対意見が数多く頂きました。
その発言がキッカケとなり、米国で公式チャートを運営するビルボードが、米国音楽市場の約80%を占めるレコードレーベルやディストリビューター、卸売店などを調査、その結果アーバン・アウトフィッターズの主張は間違っていることを証明しました。
調査の結果、アメリカ最大のアナログレコード販売店1位に輝いたのはAmazonで、市場の12.3%のシェアを占めています。
次がアーバン・アウトフィッターズでシェア8.1%を獲得しています。
第3位は全米に130近くの店舗を構える小売りチェーンのHastings Entertainmentで、2.8%と1位2位から大きく離れています。第4位は若者向けの洋服を販売するHot Topicで2.4%、第5位はモールと隣接してBlu-rayやDVDなどを販売するTrans World Entertainmentで2.2%という結果です。
アーバン・アウトフィッターズはまだビルボードの見解にコメントを出していません。
アメリカのアナログレコード販売事情
ビルボードの調査結果は、米国市場のみをカバーしていますが、同社によればAmazonが国際的にはアーバン・アウトフィッターズよりもさらにプレゼンスがあるとのこと。アーバン・アウトフィッターズは米国では約300店舗を構えますが、海外では約50店舗ほどしか運営していないことが要因です。
またビルボードによれば、小売り店以外を含む場合の業界最大のアナログレコード販売業者は、卸売店のAlliance Entertainmentとなります。Alliance Entertainmentはベスト・バイやバーンズ・アンド・ノーブル、Trans World Entertainmentなど小売り店や、インディーズ系ストアにアナログを販売しています。
忘れることができないのは、インディーズストアの存在です。ビルボードは、米国ではインディーズストアの存在はAlliance Entertainmentよりも巨大で、合計すると全米でアナログレコード売上の約50%を占めていると述べています。
ビルボードの記事には、現在アメリカでどのようにアナログレコードが販売されているのか、詳しく書いているので、音楽の売り方のヒントになりそうです。例えば楽器屋さんのGuitar Centerや、オーガニックな食品を取り扱うスーパーマーケットのWhole Foodsもアナログレコード販売に取り組んでいるなど、その状況を関係者のコメント入りで紹介してくれています。
またレコード・ストア・デイの共同創業者マイケル・カーツ(Michael Kurtz)はインディペンデントなストアが膨大な規模のセレクションを抱えていることを指摘し、サンフランシスコのRasputin Musicのアナログレコード部門はフォークやジャズ、クラシックなど特定のジャンルを大量に抱え、「アーバン・アウトフィッターズ全てのセレクションにも匹敵する規模」と答えています。
先日全米レコード協会(RIAA)が発表した2014年度1〜6月期の音楽売上では、アナログレコードの売上は43%増加し1億4600万ドル、出荷枚数は41%増加し、460万枚から650万枚へと大きく拡大してて、総売上のシェア4.6%まで成長してきました。
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これまでアナログレコードを買い求めてきた人たちはコアなファンばかり。だからアーバン・アウトフィッターズのようにカジュアルな感覚で買い物をしながら音楽も一緒に買う流れが、新規のアナログレコード購入者を生み出しているような気がします。その流れではAmazonも全てが同じとは言えないですが、同じような購入者層が多いのではと思いますし、新しい客層が集まるからこそレコード・ストア・デイのようなリアルなイベントも盛り上がるとも思います。それからアーバン・アウトフィッターズもAmazonもレコードストアではないことは事実です。このライト層向けの流通と同時にインディペンデントなショップもコアファンを取り込みながらお互いが盛り上がれば、もっとアナログ市場が盛り上がる気がします。
ソース
(2014年10月1日「All Digital Music」より転載)