新聞業界に新たな始まりが見えてきた

過去8年間にわたり、新聞社は将来の見通しが半年後には好転するだろうと期待してきた。そのときが、今巡ってきた。

過去8年間にわたり、新聞社は将来の見通しが半年後には好転するだろうと期待してきた。そのときが、今巡ってきた。

どこでもそうなっているというわけではないが、いくつかの新聞社の業績データを見ていると、転機に到達した感じがする。つまり、印刷媒体からの収入や利益がデジタル媒体の数字を上回りだした。いつかはこういうときが来ると私が予測したのは2006年11月だ。今になっていよいよ、状況を好転させた新聞社が目に付くようになった。近い将来、もっと出てくるだろう。

転機への流れを後押しした要素は3つあった。

一つ目はエンゲージメント。つまり、一人のビジターが一定期間に何度サイトに来ているのか、1回の訪問で何ページを見ているのか、時間をどれだけかけているかの重視だ。何年もの間、ビジター数やページのインプレッション数でサイトが成功したかどうかを測ってきたが、最近になって、エンゲージメントの度合いが次第に重視されてきた。各新聞社は滞在が長くなるように、努力を続けてきた。

それでも、こんな見方もできる。米国のネット利用者の60%以上が新聞社サイトを毎月訪れているが、訪問するサイト全体からすると8%にしか過ぎない。時間にすると全体の1.8%、ページ数では1.4%にしかならない。もっとも数字は地域によって違い、ラテンアメリカ諸国はエンゲージメント率が高く、北米(米国、カナダ)は低い。まだまだできることがありそうだ。

2つ目は、ここがもっとも興味深いのだが、携帯機器(電話、タブレット)がニュースの消費のみならず、活用についても大きなインパクトを持つようになっていることだ。読み手の行動は非常に早いスピードで変化しているので、ニュースサイトがどんな風に読まれているかについて真の姿を描くのは実際にはかなり困難だ。しかし、改革が起きているとは言えるだろう。特に、創造性、柔軟性、それにリソースがある新聞社はこの点を重視できる。

創造性、柔軟性、それに十分なリソースがある新聞社というのは、西側の市場では4分の1弱ぐらいと私は推測している。この部類に入る新聞社は携帯機器を使っての利用を想定したサービスに大きな力を傾けている。パソコンで利用する顧客よりも携帯機器での利用者に焦点を合わせているところもある。全体として、そのほうがオーディエンスの数を大きく増やせる。この部類に入る訪問者はパソコンを使う訪問者とは異なる特色を持っている。異なるコンテンツに関心があり、ソーシャルメディアの利用度が高い。

タブレット利用者のほうが広告の効果が高いという結果も出るようになった。英タイムズ紙、サン紙などを発行するニュースUK社は、タブレットで読む読者と紙媒体を読む読者とに調査を行った。結果は、同じ広告であれば印刷媒体よりもタブレッドで読む読者のほうが広告の認知度が137%上昇し、広告対象となった製品を購入する比率が176%増えたという。タブレット版に載ることで、ブランドのイメージが61%上がったそうだ。動画は広告効果が静止画像の場合よりもはるかに高いことも分かった。

3つ目の要素は、フェイスブックやツイッターなどのソーシャルメディアの役割だ。ここで正直に言うと、2012年春、私はフェイスブックはもう終わったのではないか、と書いたことがある。この年の5月18日、フェイスブックはNASDAQに新規上場し、38・23ドルの終値をつけた。その後、18ドルまで下落し、BBCはフェイスブックの上場が「近年でもっとも問題がある」と表現した。うれしいことに、私やそのほか多くの人の予想は間違っていた!いまや、フェイスブックは健全な利益を生み出し、株価が上昇している。新聞業界の復興にフェイスブックやツイッターが果たした役割は大きい。フェイスブックもツイッターの利用者もほとんどが携帯機器を使ってそれぞれのサービスにアクセスしている。

こうしたさまざまな要素が絡み合って、記事が伝わってゆき、新聞者と読者とが双方向でかかわりあい、それぞれの関心事の周辺にコンテンツが集まったりグループができたりし、何かを達成するキャンペーン運動が発生するようになった。すべて自然な流れかもしれないが、私が意外だったのは、こうした新たな動きが新聞社サイトに新たな読者を連れてきているという点だった。

携帯機器とソーシャルネットワークの組み合わせこそが、新聞社がオーディンエンスと収入を取り戻す可能性がある道だ。そして、現在のところ、上の3つの要素を導入した新聞社は、すでに転換期に入っている。ここまで到達するにはずいぶんと時間がかかった。しかし、利益を上げ、提供するサービスを多様化させ、読者とともにコミュニティーを作り上げて影響力を持つ新聞社が増えてきた。これから、もっと増えるだろう。

Google共同創業者、ラリー・ペイジ

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