障がい者の人生を誰が評価できるの? みんなが不完全であり、みんなに可能性がある

茨城県教育委員の言葉は、私と息子の人生を全否定された気分にさせました。

11/18、茨城県の県総合教育会議で、教育委員の長谷川智恵子氏が、県内の特別支援学校を視察したことを踏まえて、障がい児が生まれてこないよう妊娠中に診断し選別する方向性を進めるべきだといった趣旨の発言をしました。

「妊娠初期にもっと(障害の有無が)わかるようにできないんでしょうか。4カ月以降になるとおろせないですから」

(特別支援学校を視察した感想として)「ものすごい人数の方が従事している。県としてもあれは大変な予算だろうと思った」

「意識改革しないと。生まれてきてからでは本当に大変です」

「茨城県はそういうことを減らしていける方向になったらいいなと」

絶句しました。心底の怒りを覚える発言です。

私の長男は自閉症です。私と息子の人生を全否定された気分になりました。

その後、長谷川智恵子氏は発言を撤回、さらに教育委員辞職を申し出たという報道がありました。

おそらく、長谷川氏は「知らなかった」のだろうなと思います。

「知らない」こと自体は、必ずしも責められることではありません。仕方がない部分もあります。

私もしばしば、この手の無理解に遭遇します。

多くの場合、我慢するしかありません。

しかし、県教委という特別支援学校を統括する最高機関の委員が、無理解であることは許されません。

その意味で、発言を撤回・謝罪し辞任するというのは妥当な対応であろうと思います。

ただ、ネット上では、少数ですが長谷川氏の見解に賛意を示す意見も見かけます。

また、長谷川氏がはからずも提起した問題は「出生前診断後の対応」として顕在化しています。

せっかくですから、みんなで学ぶ機会としてみましょう。

うちの長男(自閉症・愛の手帳3度)の可能性

うちの長男は自閉症であり、愛の手帳3度の知的障がい児です。

15歳になりまして、9年間通った高島特別支援学校ももうすぐ卒業です。

自分とこの例で恐縮ですが、長男がどういう子かを紹介することで、少し考えていただければと思います。

長男は料理が得意です。これはカレーを作っているところ^^

包丁さばきも見事なものです。

さて、この様子を、私と妻は何の不安もなく見ていることができます。

しかしこの「知的障がい児が包丁を使っているところ」、皆様がすぐそばで見ていたら、どのようにお感じになるでしょうか?

この様子、障がい児に慣れているヘルパーさんやデイサービス職員でも、初めて見るとギョッとします。

ほんとうに大丈夫だろうか?と感じてしまうのは、「知らなければ」致し方ないことですね。

しかし「この子はできる」ということがわかれば、その後はいろいろなことをまかせてもらえます。

ここで「危ないからやめようね」などと言って包丁を取り上げてしまったら、彼の可能性はひとつ失われるのです。

もうひとつ、長男の得意技をご紹介します。水泳です。

手前は、当時8ヶ月の次男です。おじゃま^^

板橋区の障がい者水泳教室やデイサービスの水泳教室に通っているうちにどんどん上達。

今年7/5に東京都障害者スポーツセンターで開催された障がい者の水泳大会「第30回はばたき水泳大会」に出場。

25mを35秒10という自己ベストで泳ぎ切り、銀メダルを獲得しました!(と言っても、同じレースで泳いでいる選手の中での2位、ということですけどね^^)

メキメキと力をつけている長男。

これは、もう一段のレベルアップをめざしてもいいんじゃないか...?と思い。

パラリンピック選手発掘プログラムに応募してみました!!

いやーどうなるかなこれは。楽しみだぜおい^^

長男がまたひとつ「可能性の扉」を開くことに少しでもつながれば、私は幸福です^^

実態は「命の選別」か...出生前診断の議論

2013年より日本でも受診できるようになった「新型出生前診断」。

妊婦の血液を解析することで、胎児の染色体や遺伝子の異常を出産前に検知することができます。

しかし出生前診断によって、根治が不可能とされる遺伝子障がい、例えば代表的なものとしてダウン症であるということが胎児の段階でわかった場合、保護者は「それでも生むのかどうか」を考えなければならなくなります。

2015/6/27の日経新聞には、2年間で新型出生前診断を受診した1万7800人のうち陽性と診断されたのが295人で、うち221人が中絶した、とする記事が出ました。

新型出生前診断で陽性判定後、羊水検査で確定診断を行いますが、羊水検査によって異常なしとされた人も23人いました。

しかし「確定診断を受ける前に中絶した人も数人いた」とのことで、大きな倫理問題をはらんでいます。

昨年、我が家には新しい命がやってきました。14年ぶりに生まれた次男です。

妊娠中、出生前診断をどうするか、妻と相談しました。

出生前診断でわかるのは一部の障がいでしかありませんし、何も障がいがなかったとしても、将来この子がどんな問題を抱えることになるか、何もわかりはしません。

「うちに来た以上、ドンと来い!」ということで、出生前診断はやらないことに決めたわけです。

とはいえ、すべてのご家庭に同じ決断をしろなどとは言えません。

私の口から「中絶はよくない」などと安易に言うことは、間違ってもできません。

子どもを生むということは、理屈じゃできません。

そして、その理屈じゃないところに、私たちの社会全体が依拠しているのです。

少なくとも、私たちは「知る」ことが必要です。

日本人1億2千万人までいかずとも、板橋区民55万人であっても、宇宙の如き広大な世界であるということを。

それは、偏見なく、受容しながら接し続けなければ見えてこない世界です。

そこに何があるか、誰にどういう可能性があるか、事前に知ることは誰にもできません。

だから、私たちみんなが不完全であり、そして私たちみんなに可能性がある。

そこを腹に落として、あとは「ドンと来い!」しかないんじゃないかなぁと^^

無責任かもしれませんが、そうとしか言えないんですよねぇ...。

もちろん板橋区議会議員としては、社会で生きる上でハンディを背負う方々をしっかり支える施策を整えるべく、板橋区議会で提言を続けていきますので、どうぞお気軽にご意見をお寄せください!^^

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