地方創生における国の役割 石破茂氏による講義まとめ

2016年3月9日、地方創生担当大臣の石破茂氏による政策議論講義「地方創生における国の役割」が開催された。

日本政策学校では2016年3月9日、地方創生担当大臣の石破茂氏による政策議論講義「地方創生における国の役割」を開催いたしました。

以下はそのサマリとなります。

「地方創生における国の役割」

政治家の使命は、言いにくいことであっても真実であると確信したら、評価を恐れずに説明し、理解してもらうことである。

その「言いにくいこと」の一つに、人口減少による日本衰退の予測も含まれる。

地方の労働生産性は低迷しており、地方ごとに経済的な差は大きい。しかし地方行政は、住民から近い距離にある。

今後、地方は、『産官学金労言』が連携して参画し、PDCAサイクルを回すべきである。

目標を定め、責任をもって、可能性を信じてチャレンジすべきである。

(画像はご本人のご了承を得て掲載しております)

◇政治家の使命=勇気と真心をもって真実を語ること

かつて大先輩の政治家が、こんなことを教えてくださった。

「政治家の仕事は、勇気と真心をもって真実を語ることである。」

今日でも、集団的自衛権、原発、消費税増税など多くの論点について、賛否両論があり、多くの意見がある。

そんな中で真実を見極めるのはとても難しい。そして、努力して見出した真実は、ほとんどの場合大衆受けのするものではなく、耳に心地いいものではない。それを警戒して、真実を語らない政治家もいる。

しかし政治家の使命は、それがどんなに言いにくいことであっても、自分の信ずる真実を勇気をもって語り、真心をもって説明し、理解を得ることである。

そのためには、あの人が言うのなら聞いてみようか、と思われるような関係性を多くの方々と作っていなければならない。これが、政治家の課題である。

◇人口減少で危惧される今後の日本

これからの日本は、人口が減少する一方である。

東京は、今まで人類が経験したことのない規模とスピードで超高齢化都市となる。

また、東京は今でも世界の主要都市の中でもっとも災害リスクの大きな都市である。

地方は、東京より2~30年早く高齢化を迎えている。

若年女性の人口が減少し続ければ、今後、まちとして存続できなくなるところもでてくるであろう。

今のまま何もしなければ、この2~30年の内に、東京も地方も衰退に向かうことが予測される。

◇地方の課題

地方の労働生産性は全般的に低い。経済状況には地方によって大きな差があるが、いかにしてコストを下げ、付加価値を上げるかは、各地方における重要な課題である。

しかし、そこには大きな可能性と希望がある。

例えば、日本のGDPにおける観光GDPの割合は、世界の中でもまだまだ低い。

この原因は色々あるが、やはり営業努力が足りていないことが大きい。

四季の変化に富み、食べ物がおいしく、誇り高い伝統文化をもつ日本の観光業には、伸びる余地が相当にある。

◇『産官学金労言』が連携するPDCAサイクル

地方には、東京にない良さも多くあるが、その一つが行政と住民との距離が近いことである。

これから地方には、『産(民間企業)・官(市役所、町村役場)・学(高校、大学)・金(地方銀行)・労(労働組合)・言(地方のメディア)』が連携して参画する総合戦略を策定してもらい、そこにPDCAサイクルをしっかり組みこんでもらう。大切なのは、目標をはっきり定め、責任をもって多くの住民が参画することである。

政治と住民との距離が近いだけに、地方には大きな可能性があるはずである。それを信じてチャレンジすべきではないか。

◇質疑応答より

・少子化対策について

→いかにして可処分時間、可処分所得を多く得るかを、総動員して考えなくてはならない。

・人材が不足している地方に、どのようにして人材を集めるのか

→その地方出身の東京で活躍している50代、60代の人たちに、Uターンを促して、活躍してもらうことが考えられる。

・自衛隊の地方創生への関わりについて

→陸上自衛隊が、町と一緒になって、町の安全・平和にどれだけ貢献しているかによって、評価される。

■石破茂氏のプロフィール

石破 茂(いしば しげる)

昭和32年生まれ 鳥取県出身

慶應義塾大学法学部法律学科卒業

昭和54年4月三井銀行(三井住友銀行)入行

昭和61年7月、旧鳥取県全県区より全国最年少議員として衆議院議員初当選、以来10期連続当選。

農林水産政務次官(宮澤内閣)、農林水産総括政務次官・防衛庁副長官(森内閣)、防衛庁長官(小泉内閣)を経て、

防衛大臣(福田内閣)、農林水産大臣(麻生内閣)、地方創生担当大臣(現職)。国会では、規制緩和特別委員長、

運輸常任委員長、自民党では過疎対策特別委員長、安全保障調査会長、政務調査会長、幹事長等を歴任。

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